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Re:   雨漏り傘。【短編集】 ( No.6 )
日時: 2016/01/07 14:27
名前: 洸。  ◆qiPqkmYC.c (ID: ZSw8dY6l)





  「涙雨はやむことがない」.君の声は世界を照らして.



豪雨、と言っても過言ではないくらいの雨が街に襲い掛かる。
普段は人通りの多い道も人数はめっきり減り、道路は洪水状態。
木々は身体を大きく揺らし、風は歩く人たちに体当たりする。

そんな街の下、とある小さな公園のブランコにて。

1人の少女が、茫然と座り込んでいた。
全身は余すと来なく濡れ、カバンは足元の水溜りに倒れ込む。

灰色の雲に向かって、少女は口を開けた。


「“——”……っ」


誰かの名前を小さな声で呼ぶ。
瞳(メ)から流れ落ちた涙は、雨と同化していた。


「“——”……っ!」


少女の顔は痛々しく変わり、声量がどんどん大きくなっていく。
心の内が言葉に現れ出ていて、痛切な願いと感じ取れもした。


「“——”……っ!!」


そして、少女は誰かの名前を呼び、地面に崩れ落ちる。
盛大に響き渡る泣き声、もはや普段の少女とは比べものにならない風貌。
ただただ哀しくて、泣くことでしか出来ない。
後悔、という言葉がどれほど強く残るのか、少女は身を持って知った。


「大丈夫?」


しばらくその状態が続いていた、そのとき。
少女の頭上に降っていた雨はぴたりと止み、暖かな声が代わりに降ってきたのだった。


「泣かないで」

 × ×