コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- *家出神さんと、男子美術部。
- 日時: 2016/11/06 14:07
- 名前: miru (ID: .pUthb6u)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=41224
*家出神さんと、男子美術部。
この度は、閲覧いただきありがとう存じます
〜巴志さんの手記〜
こんにちは。はじめまして。
皆様、ご機嫌はいかがでしょうか。
本日、こちら、巴志樹より……この小説を少し解説していく次第です。
え? なぜ丁寧な言葉遣いなのか?
僕は外づらがいいんだよ。
*小説+作者についての注意事項*
・見ての通り、作者はすごくテキトー。小説も駄文だよね。
・ストーリーは蛇行運転。酔わないでね?
・更新については、スピード違反はしないよ。寧ろ亀。
・荒らし、又は中傷はご遠慮ください。わかってるよね?
・コメントを与えたげると、作者は犬のように喜ぶらしいよ。単純だよねぇ、ほんと。
・これ重要。僕たちは基本的にいい人だよ? ねぇ? 水城。
作者が 嘘だっ! とか叫んでるけど、僕に小説紹介丸投げしたテメェは黙ってな。
*あらすじ*
前髪はどよ〜んと長く、人と関わることは好きじゃない、
地味〜な主人公、竜胆和泉は、今年から晴れて高校生になりました。
なのに、なぜか男装で高校デビュー。
しかも、サラッと入った学校は、全国屈指のお金持ち私立学校なのでした。
周りに頓着しない和泉は、そんなの聞いてない! と驚く周囲の人々にも、は? と首をかしげます。
そんな心配され性の残念ヒロインを巻き込まんとするのは、それこそお金持ち学園一の残念な部活。
部員ふたりの、学園内唯一の男子文化部、秋桜院学園男子美術部。
その部長に、なぜか気に入られた和泉。
だけど、その部長には(本人曰く)ささやかなヒミツがあって……。
あなたが変な狐の面を被ってる時点で胡散臭いですよ、部長。
あれ、しかも和泉は女の子じゃなかった?
そんな、たくさんの人に囲まれた小さな存在たちが、一歩を踏み出す決意をするまでの話。
*作者から一言*
( ´ ▽ ` )ノ<それでも読んでくださる皆様、大好きです!
*目次*
episode1
『木陰のいつもの日々』
#1 >>03 雲のない空
#2 >>04 ソックリさん
#3 >>07 ターゲット
#4 >>12 ニガテナモノ
#5 >>16 前髪だとか、
#6 >>17 男だとか。
『懐中時計を持った兎ではなく、しっぽのない狐を追いかける』
#1 >>20 フレームの入学式
#2 >>25 そっち系の人(?)
#3 >>26 アリスの夢の一片
#4 >>27 猫化イヌ科
#5 >>30 夕焼けと面影
#6 >>32 四月××日 木曜 晴れ の午後
#7 >>38 あ。外に変な人が見える。
#8 >>44 キャンパス
#9 >>47 え、ちょっ、ウソッ
#10 >>50 あれ、綾小路って、ヤバいんじゃね?
#11 >>52 ぼっち同盟
#12 >>57 へ〜んそうっ!
#13 >>64-65 可愛いは正義。
*お客様&勝手に作品紹介*(載っけて欲しい、または載っけて欲しくない事がございましたら、お叱りください。)
~* のれり 様 *~【Amnesia】【かつて魔法少女と悪は敵対していた】【最初で最後の涙はきっと】【リスキーゲーム】
( ´ ▽ ` )ノ<私の体調までいつも気にかけてくれる守護者様です泣 いつもお世話になってます! 繊細な文才の持ち主で、幾つもの掲示板に浮上し、全ての掲示板全クリをも目論んでいらっしゃる方です笑
~* まかろん 様 *~【初恋? 何それおいしいの?】
( ´ ▽ ` )ノ<更新をすると、直ぐにすっ飛んできてくれます泣 いつもお世話になってます! ちょっと変な人ですが←。プロットから書いていらっしゃる真面目な方です!
~* 朔良 様 *~ 【甘美な果実〜微かな吐息〜【短編集】】【狼どもと同居中。〜狼さんちの赤ずきん〜】
( ´ ▽ ` )ノ<とても丁寧で、自分でも気づいていなかったところまで評価しているコメントをくださいます泣 いつもお世話になってます! 発狂するほどドキドキするお話を書いていらっしゃる、女子の心を鷲掴みにするタラシさんです笑
~* えこくん 様 *~【トリップしたらハーレム状態になった件について。】
( ´ ▽ ` )ノ<私の拙い文章を、素晴らしい読解力で補い読み解いてくださいます泣 いつもお世話になってます! 独特な文章の、面白すぎる爆弾小説をボソッと投下していく、罪な人です。のれり's hamster。←
~* てるてる522 様 *~【ハツコイ】【僕と君との2年間。】【大切なもの】【温かい食卓】
( ´ ▽ ` )ノ<このスレッド内でのはじめましてのお客様、記念すべき第一号様です! いつもお世話になってます! この方の更新速度と、コミュニケーション能力、そしてお話の友情・恋愛は脱帽ものです!
~* 杏莉 様 *~【スイーツは、恋の嵐!】【Ilove ando この恋は?〜どこまで続くかな〜】【部活生活】
( ´ ▽ ` )ノ<このお名前やコメント等々から漂う雰囲気そのものの、可愛らしいお方です!(可愛らしいとか気持ち悪いな、作者。by樹) いつもお世話になってます! 小学生とは思えない、生き生きとした文体で素敵な恋愛小説を書いていらっしゃいます!
~* 成宮 理斗 様 *~ 【小説を執筆されていると聞き及び、作者、探し回りましたが見つからず……すみません(´・_・`)】
( ´ ▽ ` )ノ<全然関係ないですが、お名前がとても作者のタイプです! いつもお世話になってます! 和泉くんを一番と言っていただけました、まじありがとうございます!
~* いろはうた 様 *~【ベスティア・ラッコント】
( ´ ▽ ` )ノ<作者がめちゃめちゃ尊敬している方です! いつもお世話になってます! ぎゅっとくる恋愛小説を執筆されていて、作者はずっと前からこの方のファンです!
~* 湯呑ゆざめ 様 *~【観覧車。【短編集】】
( ´ ▽ ` )ノ<肺活量の素晴らしい方です! 温かいお言葉をいただきました! いつもお世話になってます! 執筆されている短編はどれも作者の好みで、爽やかな感じがします♪
*記念日*
ご愛読感謝です!
2015.
07/23 執筆リスタート>>00
08/04 参照100突破!>>15
08/18 参照200突破!>>22
08/30 参照300突破!>>29
09/09 参照400突破!>>37
10/01 参照500突破!>>50
10/13 参照600突破!>>50
10/26 参照700突破!
10/31 参照800突破!
11/06 参照900突破!
11/10 参照1,000突破! >>71
12/23 休載&必ず戻って来ます宣言 >>71
2016.
03/05 更新再開いたします宣言 >>72
03/05 参照1,300突破!>>72
03/07 参照1,400突破!
03/12 参照1,500突破!
03/23 参照1,600突破!
03/23 和泉くんがボクっ娘になりました。(変更)
03/24 暴露ぉおおおおって言うほどでもない暴露 >>86
03/24 トリップつけたよ。
( ´ ▽ ` )ノ<とってもabout!←
※URLはもう一つの執筆作品『ブランカ・ボニート・メニーナ〜交わした約束〜』
巴志樹.3月23日 巴志さんの手記より
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- Re: *家出神さんと、男子美術部。 ( No.44 )
- 日時: 2015/09/30 23:35
- 名前: miru (ID: .pUthb6u)
- 参照: 久しぶりの更新です(すみません)
#8
あげはがそわそわしているのがわかる。
それもそうか。さっき、すごいもの見たからだよね。
城野は飛びまわるように塔を紹介してまわる狐を、部活を紹介するんじゃなかったの? と呆れつつ、見守りながらそう思った。
先ほど塔の玄関前で、例の如く少し天然の入ったあげはが失敗をした。面白いことに、扉の開ける向きを間違えたのだ。
その時だった。
あの特待生が、声をあげて笑ったのだ。
コロコロという笑い声に、体が震えるような衝撃。
花が咲いたようだった。
そうあげはは思ったのか、塔に入ってから隣で一言「かわいかった……」と漏らしていた。
城野は、あははと笑顔で一歩引いた。
やっぱり、今まで愛想笑いを浮かべていたんだな、とあげはは寂しそうに言った。気づいてなかったの。
愛想笑いはどう頑張っても、愛想笑いなんだよ。
にこにことふたりを見つめる城野は、自分はいっか、とふたりから離れることにした。
階段を使って、塔のリビング的なスペースへ勝手に移動する。
階段へ城野が消える前、和泉と一瞬目が合う。恨みがましそうなその視線にわざとらしくウインクを返す。それじゃあね。
大丈夫。君が入ってくれなくても、別に困らない。
でも君は、あげはの期待には応えてあげてよ。
「……あの、狐さん。じゃなかった、あげは先輩。あの、部活の見学じゃなかったんですか」
和泉はおそるおそる切り出す。
つらつらと紹介する狐さん。しかし、その内容は塔の内部の構造ばかり。確かにすごいアートがところどころにあって面白いのだが。
あっ、と言うように狐さんは顔をあげた。
今は廊下の端にある、謎の小さな扉についての説明をしているところだった。顔も描かれていて、某アニメ映画のおとぎ話に出てくる扉によく似ている。
先ほど城野にも置いていかれ、狐さんの話を遮ってくれる人はいなくなったと悟った和泉は、ついに切り出したのだった。
「悪い、そうだったな! 忘れてい、たわけではなかったが、部室へ行こうか……!」
忘れてたのか……。
そして、先ほど城野が消えていった階段を登り、そして下った(ここはどういう作りなんだ)。すると、今までとは打って変わって広い部屋に通される。
「ここがリビングだ」
どうだ、というように階段を駆け下りて、嬉しそうに狐が言う。
わぁ……すごい……!
残りの数段を降りながら、和泉は驚いて口を開け、手すりを握ったまま部屋を見渡す。
一気に開け放たれたその空間は明るい光に包まれていた。
真四角ではない、蓋をしたような斜めの天井の部屋。部屋の空間に突き出るように設置された、先ほど降りてきた階段。
その高低差がよくて、部屋の中もカウンター的な台があるところで一つ段になっていた。
二階分くらいありそうな天井は、間隔で木の板が打ち付けられている。明るい緑の壁と、その木の色はよく似合っていて、すてきだと思った。
窓は大きくとられていて、狐の身長より高い。窓は二つ並んでいて、どちらも十字架のように黒い枠がはまっていた。しかも二重構造のようで……。
ただ無造作に造られているわけでは無さそうな辺りに鳥肌が立つ。すごい。
……ん?
部屋を見渡し、早くもその部屋が気に入りそうになっていた和泉は、ソファに座る城野とばっちり目が合って、ようやく気がついた。
「……先輩。美術道具がないのですが」
そう。この部屋の中央には座り心地の良さそうなソファはあれども、さらに豆型のかわいいテーブルはあろうとも、美術道具の一切合切がなかった。
「あ、それはだな……」
そうひそひそと狐さんは言うと、和泉に手招きをして一つの部屋へと向かわせた。
城野はソファに座って本を片手で読んでいる。持て余すように組まれた長い足が、その格好が似合っているだけあって、和泉をイラッとさせた。
城野の横を通り過ぎて、空色のドアの前へ行く。
何となく隣の狐さんがウキウキしているような気がする。
「ここは城野の部屋だぞ」
え、それぞれ個室を持ってるの?
思わず城野の方を見ると、城野も緩慢な動作でこちらを見た。どうぞ、というように微笑む。そしてまた手元へと視線を戻した。
城野の手を見てみると、詩集を手にしていた。うわ、ドイツ語……。
「あぁ、それパウル・ツェランの詩集だぞ。城野はあまり選ばずに読むからな、好きなものとかないのか? 城野」
和泉の視線を追うように、狐さんが言った。
選ばずに手に取っても読めてしまうというのか、すごい。何ヶ国語習得しているんだ……。
「うーん……。そうだね」
返事はするが、聞いていなさそうな返事。集中しているのかな。
行こう、と狐さんが視線で促す。
はい、と静かに頷くと、彼は扉へそっと手をかけた。
……あれ、なぜ自分たちはコソコソと? なんで城野の邪魔をしないようにしてるの?
和泉は抜き足差し足の自分たちに気づいて、可笑しくなった。
また笑いそうな和泉を、何故か顔を上げていた城野と狐さんが変な目で見る。
……えー、こほん。
「ほら、どうぞ」
狐さんが扉を開けると、キィと小さな音がした。
「わぁ……」
窓から光のすじが踊る部屋。落ち着いた空色とオレンジが目に優しい。
とても綺麗な部屋だった。
ずかずかと入っていくのが躊躇われた。
そっと覗くようにして中を見る。
描きかけのキャンパスが目に入った。斜めに置いてあるので、少ししか見れない。
キャンパスの隣に小さな机が置いてあって、パレットが置いてあった。
それだけで一枚の絵になる不思議な空間。
でもパレットの上に絵の具がない。乾いた筆が乗っているだけだった。
今は描いていないのかな……。
「お、入らないのか?」
和泉は部屋に見入っていて、話しかけられたことにすぐに気がつかなかった。
弾かれるようにドアから離れて、首をそろりとあげる。
「あ! はい……いいです」
「そうか、では僕の部屋も見せてあげよう!」
るんるんで奥へと向かっていく狐さん。
本当に、芸術とか、好きなんだろうな。
素敵なことだ、と思った。
でも入ることはない。
なぜなら……。自分は美術部に入るためにここに来たわけじゃないし、部活なんて興味ないし……。入るなら演劇部だし、でもそんなのないし……。
のに、狐さんに案内をさせている自分。
なんだかさっきの扉の先は、入ってはいけない、ような気がした。
ぶんぶんと頭を振った和泉は、それより理事長の息子である狐さんの意思が大事だから、と思い直した。
ひとりで大はしゃぎに、自分の部屋へ向かう狐さんを追いかける。
城野は笑って、そんな和泉の背中を見ていた。
- Re: *家出神さんと、男子美術部。 ( No.45 )
- 日時: 2015/10/01 21:00
- 名前: のれり (ID: R4l9RSpR)
おはこんばんは、のれりです!
城野さんと狐さんの間に、和泉ちゃんとのフラグがビンビンですね!←
そして、城野さんが一歩引いたのは、一線を引いた、という事なのでしょうか。それとも、急につぶやいた狐さんにどん引きして、物理的に距離をとったのでしょうか?←
そしてやはり、お金持ち臭漂う素敵な部室!
一度行ってみたいですわー(*´∇`*)
そして、色んなとこに伏線が!!
これはッ……
楽しみでしかないっ!
ということで!
更新頑張ってください!!
- Re: *家出神さんと、男子美術部。 ( No.46 )
- 日時: 2015/10/01 22:04
- 名前: miru* (ID: .pUthb6u)
>>のれり様!>>
度々の訪問、およびコメントありがとうございます!
嬉しくて感涙。うぅ……。
はい。いつの間に。驚愕です(*゜ロ゜)
大丈夫です。作者の私が全力で折りにゆきます!←
え、お前そういう趣味だったの(ホモなの)?という意味で、城野さんは狐さんと物理的に距離をとりました。←
私も行ってみたいです!
理想のお部屋ですねぇ、塔の中の部屋はひとつひとつ。
あぁ、二次元へダイブした(
伏線?何それおい((
はいっ!頑張ります!
……え?更新頻度が低い? 聞こえません!
コメントありがとうございました!
- Re: *家出神さんと、男子美術部。 ( No.47 )
- 日時: 2015/10/07 23:51
- 名前: miru* (ID: .pUthb6u)
#9
「それでだなぁ……」
はい、はい、と頷く和泉。
狐さんはそんな和泉をじっと見下ろした。
結局、狐さんの部屋に辿り着けないまま、途中『あっこれ! これはだな……』と始まった狐さんは燭台についてご熱弁中。
さっきの部屋から廊下を進んで、小さな螺旋階段の途中だった。
その階段の途中のくぼみにある、燭台を指差したまま、じっと見下ろす狐さん。その燭台は真鍮だそうです。
「……やっぱり、イヤか?」
「え? 何がですか?」
イヤ?
急に狐さんが言い出したことの意味がわからず、和泉は首をカクンと傾けた。
あ、この階段薄暗いのに、燭台にロウソクがないことですか?
違うか。
「あ、真鍮ってなんでメッキをしているんでしょうね、ってやつですか? あれは、自分の知識不足で錆止めだって……」
「そ、そうじゃなくてだな……」
そして狐さんは少し躊躇って言った。
「君がこの部活に入ることだ。……やっぱりイヤか?」
和泉は目を見開いた。
「あ……はい……そのことですか」
見抜かれていたか、と思った。
自分が中途半端にここにいること。
自分と話してみて、違う、と感じたのか。……やっぱり部活に入れたくなくなったのか。
確か、自分を引き込もうとした理由も、『おもしろそう』だからだったっけ。
おもしろくなんかないし。
もしかしたら、自分なんか、ここにいるべきじゃないって思われてるかも。
狐さんは、多分、美術に真剣だもの。
「別に無理に僕に付き合わなくてもいいんだ。君には君の生活があるし。僕に負い目を感じなくても……」
そう言いながら狐さんは顔を背けた。
和泉の特待生という縛りも、全て解いてから、狐さんは和泉を優しく押し返す。
もう十分だった。
「……そうですね。部活には、入りたくないです。特待生ですし」
いいな、って思ってた。
部活が、この人が。
でも、自分はここにいるべきじゃない人間だったから。
「そっか」
狐さんは、少しホッとしたようだった。
そんな小さなことに、少し傷つく。
「でも、また気が向いたら遊びに来て」
なのに、なんで少し残念そうなの。
「はい。すみません、ありがとうございました。
……もう少しだけ、塔の中を見せてもらってもいいですか」
「…………」
狐さんが去ってしまってから、結構な間、和泉は薄暗い階段に立っていた。
「今度こそ、もう二度と関わりたくない……!」
ちょうど、もう一段登ろうとやっと足を出したとき、後ろから声をかけられた。
「ねぇ」
「えっはいっ」
びびって、パッと後ろに振り返ろうとしてコケる。
そして城野に受け止められた。
「……すみません」
「あはは、何。狐さんにフラれたの?」
「いや、違いますけど……」
でも、やっぱりこの部には入らないことになりました、と体制を立て直しながら報告する。ご迷惑をおかけしてすみません、と。
「別にいいよ。でもなんでまだいるの?
この部、入るのイヤなんでしょ?」
クスクスと笑って、階段を登りながら城野が言う。
だんだんと高くなっていく目線を追いかけて睨む。なんだか事情わかってますよー的な態度に腹がたつ。
別にぃ。関係ないことですよぉだ。
「しょうがない。そんなに塔だけ気に入ったなら、もう少し僕が案内してあげるよ」
だけ、に力を込める城野さん。
「べ、別に……」
「当部、自慢の書庫にご案内します」
その言葉は、城野に背を向け階段を降りようとする和泉の足をぴたっと止めた。
「おぉ……!」
これはすごい。なんだこの本の量。
星下荘のマイルームの書斎も顔負けだ。
濃い、茶色の本棚に、囲まれた本。
壁一面、ぐるっと本、本、本、本……。
全て、本。
和泉は城野に連れられて、螺旋階段を登り、そしてあーだこーだ行ってまた下り、その先の廊下を歩いていた。
急に開けた空間に出ると、そこが書庫だった。
書庫にはドアがなく、通路から直通なのだ。
「どう?」
地震きても大丈夫かしら、とか考えてます。
本があるだけで生きていけると思っている和泉は、あまりの本の量の多さに脳がヒートダウンした。
「……これだけの本って、見たことないです」
「でしょ。狐さんのお父様のものだよ。よく集めたよね、これだけ」
な、なるほど……。
もう一度、和泉は部屋を見渡す。
「え? あれ? ぅえ、ってちょっと待って……!」
和泉はあるものを発見し、本棚の一角に駆け寄った。
ふぉぉお、こ、これは……!
「なにか、気に入ったものでもあった?」
にやにやしながら城野がこちらを見る。
今はそんなのどうだっていい!
……じゃなかった、こほん。
「い、いえ、特に……」
「お、残念。気に入ったものがあれば、読みに来ていいよーって言おうとしたんだけど」
「ほ、ほぉ」
瞳をクリンと動かして、悪戯にこちらを横目で見てくる。
「まぁ、君が入ってくれたらの話だけどねぇ」
「……あっそう、ですか。入りませんよ、自分」
「狐さんが誘ってるのに?」
「はい。……さっきちゃんと断りましたよ?」
「さいですか」
なら、しょうがないかー、と言うように城野は書庫の椅子から立ち上がった。
「……そろそろ帰ります」
「どうぞ。送るよ」
「ありがとうございます」
書庫に入って来たときとは違う入り口から出ると、今度は本を読む専用の小さなスペースがあった。
古そうな部屋の造りだけれど、アームが付いている照明が壁にかかっている。自分のところまで引き延ばして使うのだろう。ハイテクだ。
……いいなぁ。
はっ。
和泉はぶんぶんと首を振って邪念を払った。
そのスペースの一面はガラス張りで、一番端がドアになっていた。
ドアを開けて、リビングに戻って来る。
少し先に、最初に降りてきた突き出ている階段が見える。
ここはその裏側のようだ。
リビングに、狐さんはいない。
「ここまでくれば、大丈夫かな。
初めて来たらガイドなしじゃ探検できない、美術部ならではの迷宮はいかがでしたか?」
「はい……素敵でした」
少し素直になって和泉は答えた。
それはよかった、と言って城野はきれいに笑った。
「だいぶ、狐さんに毒気を抜かれたみたいじゃない?」
悪戯にかけられた言葉に、驚いて和泉は顔をあげる。
「そんなことないですよ。ここまで、ありがとうございました」
「そう。じゃあ、またね」
ひらひらと手を振る城野に背を向けて、和泉は最初の階段に足をかけた。
はた、と思い至って和泉は振り返った。
「城野先輩、狐先輩にも、ありがとうとお伝えください」
狐先輩って……と笑いながら城野は頷いた。
「それと」
もうひとつ、と和泉は付け足した。
怒られるかもしれないけれど。
にっこりと微笑む。
「人を追いかけまわすのはストーカーと同じ行為です、ともお伝えください。それじゃっ」
城野はあっけにとられて数秒固まった。
そして今度こそ城野は吹き出した。
階段を駆け上っていく和泉の影を目で追いかけて、声をかけようとしてやめた。
「面白い子だなぁ……」
「……だろう?」
いつの間にか、そばに来ていた狐さんが言った。
「なんで狐さんはあの子をフったの?」
「な、なんだその人聞きの悪い言い方! 違うぞ! あの子は遊ぶことより勉強を取る、模範的、優秀な特待生君だっただけだ!」
「そっかぁ、じゃあ、狐さんは特待生のあの子の中で、勉強より下の存在だった訳だね?」
「そうなる」
しぶしぶと狐さんは頷いた。
「まぁいいじゃない、部員がふたりだけでも」
「少し前までは四人だったじゃないか……! 寂しいっ」
「あはは、それは僕だけじゃ不満、ってこと?」
「もう少し、増えてもいいものだが……捻くれていないヤツが……」
「狐さんが選り好みしなければいいんじゃないかな」
「うむ、気に入ったヤツがいい」
「じゃあ僕は狐さんに気に入られたヤツ、ということで満足するよ」
少し噛み合っていなかった会話は、一瞬不穏な空気に包まれたが、最後はにこやかに終了した。
「ところで城野、ストーカーとはなんだ」
「人を追いかけまわす変態のことだよ」
「そ、そうか……」
- Re: *家出神さんと、男子美術部。 ( No.48 )
- 日時: 2015/10/08 20:50
- 名前: まかろん (ID: mwz5SFMT)
こーんばーんは! まかろんが来ましたよ〜!
やっと全部読めたよ…泣
結局和泉ちゃんは美術部に入らないんだね…泣
大丈夫!これからもあげはサマと城野サマがストーカーし続けるでしょう。
あっストーカーキャッツ入部後希望ですか?!
どうぞどうぞ!いつでも入部可ですので!
お待ちしておりまーす(っ´∀`)っ))
ところで、あげはサマの台詞に…「前までは四人だった」って…
いけめえんですね!いけめえんずが揃っていたのですね!わかります!
できることなら美女も…(殴
それから、城野サマは和泉ちゃんが女の子だと気づいていないのですね!
これは…フラグですね!
ふふふ どんなシチュかはここでは書きませんが…
ふふふふふふふふ ふう笑
ああ次の更新が本当に楽しみです!
体調も考えつつ、がんばってくだっさい!ヾ(*^▽^*)o
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