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Re:   雨漏り傘。【短編集】 ( No.12 )
日時: 2016/06/26 19:30
名前: 洸。  ◆qiPqkmYC.c (ID: ZSw8dY6l)





  「夏の向こう側 1/2」.雨が降らなきゃ虹は出ぬ.



7月に入り、夏だと感じることがより一層増えた気がする。

蝉(セミ)の鳴き声、真っ青な空に入道雲、ぎらぎらとした太陽。
昼間のむわっとした暑い空気に、自然と流れ出る大粒の汗。
ばあちゃん家で、俺は縁側で足を広げ、うちわをパタパタと仰いだ。


「あっつー……」


微力な風が顔に当たる。ちりん、と頭の上にある風鈴が揺れた。
額から頬にかけ、また一筋の汗。乱暴に腕でごしごしと拭く。
この時期になると、嫌でも思い出す。———2年前の、出来事を。


「てゆーか! ばあちゃん遅くねえ!? スイカ買うのにどんだけ時間かかっとるんじゃあ!」


ぐわあっ、と何かを吹き飛ばすようにいきなり大声を上げた。
掛ける相手なんて、いやしない。傍から見たら、きっと変人だろう。
まあ、俺は昔から天才だったし? 天才イコール変人って決まってるし?

あー困ったなあー。天才って……つらたん!(プラス星が3つほど)


 ×


スイカを食べ終わった後、ばあちゃん家から近くにある海に行った。
ここには、思い出があった。一生忘れることのない、思い出が。
鼻につく海の匂い。砂浜の熱さ。時折現れる、波の音。
——全てが、あの頃と重なっていた。


手を伸ばせば、視線の先にいる1人の——少女。
柔らかな手の感触は、今でも覚えている。言葉だって。
耳をくすぐるソプラノの声。ひまわりのような、あの笑顔。


住んでいる場所は、遠かったけれど。
一緒にいた時間はとてつもなく長くて。
もしも、神様がいるなら——俺は、尋ねたい。


(なんで———……)



 × ×