コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 謎嫌い探偵の事件簿 ( No.4 )
- 日時: 2016/02/02 20:47
- 名前: 相楽 (ID: g1CGXsHm)
「三橋加奈子さんは、おいででしょうか?お聞きしたい事があるのですがーーー」
「あー三橋さんね、ちょっと待ってて下さい。」
土曜の午前中10時。一般的には休日と言われる朝に、悠は電話をしてみた。ライターの三橋加奈子という人物がいなければ、平日の日に学校が終わった後に電話をかけ直そうと考えていた。が、最初に出た男性の口調からすると、出社してるみたいで、悠はホッとした。
間も無く、声の低めな女性が電話に出た。
「お電話代わりました。三橋加奈子です。」
名前を聞いて、少しばかり悠は緊張して空いてる左手をギュッと握りしめた。
「あの、今月号のシャランで三橋さんが書かれた瀬名葵って人のことで伺いたい事があるのですが、少々宜しいでしょうか?」
「あっ、はい、いいですけど……。本人のプライバシーに関わる事以外なら、出来る範囲でお答えしますね。」
まさにそのプライバシーを聞こうとしてるところだった悠は、はっと気付かされた。
そりゃあそうだろう。個人情報をいとも簡単に他人に漏らすなんて、あってはならない話だ。
そーですか……と、少々考え込むようにして悠は答えた。
すぐに事情を説明しようと決め、悠は恐る恐る切り出した。
「えーと……ですね、実は私叔父を探していまして。私は両親を亡くしていまして、親戚とも色々あって疎遠な状態なんですが……最近、叔父の名前を思い出したんです。瀬名葵、という名前は恐らく頻繁にいる名前ではないと思うので、もしかしたらと思ったんですけど……。なので、もし出来ればその方の情報とか詳しく教えていただけないでしょうか?」
もちろん、これだけですんなりと相手が教えてくれるはずはないと悠は承知していた。
案の定、電話のむこうで女性ライターはうーんと唸っていた。
「電話ではなかなか判断しづらいものがありますねぇ……。」
独り言のように三橋は答え、悠も軽くそうですよね、と賛同した。
「ですが、初めて……唯一会いたいと思える親戚なんです。どうしたらいいでしょうか?」
「どうしたらいいでしょうかって言われても。」
困ったように苦笑する声が伝わる。
「んー……あなた、お名前は?」
「瀬名悠です。悠々自適の悠とかいて、はる、です。」
「年齢は?」
「月島高校2年の16です。」
「なるほどねぇ。ってことは、市内に住んでるのね?」
「はい。青葉区のアパートに住んでます。」
自分の個人情報をちゃんと言えば教えてくれるかも、と考えた悠ははっきりとわかりやすいようにして伝えた。
それを感じられたのか、三橋の声は幾分信用するような感情を持ってこう言った。
「じゃあ、今から会える?それから判断したいわ。」
「了解しました。どこに行けばいいでしょうか?」
的確な指示のもと、街のとあるカフェで昼過ぎに会うことに決めた。
「もし、出来れば葵さんと親戚関係にあるっていう証拠があらば持ってきてくれるかしら?」
「わ、かりしました……。はい、それでは、失礼いたします。」
電話を切ったあと、悠は頭を抱えた。
「証拠なんて、持ってたかなぁ……?」