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Re: 偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜 ( No.2 )
日時: 2016/02/04 19:56
名前: リリディム (ID: vJF2azik)

子供達が笑いながら追いかけっこをし、道行く人々がすれ違う様を見続けながら、僕は街を歩き続けた。
【能力】がなかった時代と大差ない光景であろう。 しかし、【能力】の存在が全てを台無しにしていると思うと非常に残念で仕方なかった。
「……この世界が壊れてしまえば良いのに」
ふと、そんな事を呟いていた。 何とも不謹慎な言葉であったと頬を掻きながら、僕はふと空を見上げた。

瞬間。

ヒュゥゥーン……
「……え?」
突如飛来してきた火球。
僕は其れを呆然と眺め、人々はその火球に気付くと一目散に逃げ出した。

だが、遅かった。

炸裂する閃光。 舐め回す熱。 僕は【能力】の恩恵によって耐えたが、【能力】を使わなかった哀れな逃亡者達は一瞬で炭へと変わった。

黒炭となった人々、燃やされ崩れ落ちる高層ビル群。 先程迄聞こえた子供達の元気な声も、人々が行き交う騒音も、たった一撃の火球で無と成り果てた。
「……何が……起こった……?」
僕は頭の中が真っ白になり、近づく人影に気付けなかった。
「へえ? オレの【火焔】(プロミネンス)を受けて五体満足だなんて、余程良い【能力】持ってんだな?」
「ふむ……上手く調教すれば、素晴らしい戦力になると思いますね」
片やチンピラ、片や紳士風の男達が何か言っているが、そんな事は如何でも良い。
「……何故……?」
「うん?」
「何故……街を、人をこんな風にした!?」
最早街とは言えない、荒廃した地にて、チンピラは鼻で笑うと、何やら高慢的に話し始めた。
「オレ達はこの世界を牛耳る為に、戦力になる奴を探してるんだよ。 そんで、折角【能力】を持ってるし、多少手加減したオレの技で試験してやっただけよ」
「更に言うならば、私達は人も探しているのですよ、態々一人一人探すよりも、敢えて一掃してからの方が楽に探せますからねえ」
「ッ!」
紳士の言葉を聞き、僕は思わず紳士の胸倉を掴んで地面に叩きつけていた。
「そんな事で、此処の人達は殺されたのか!?」
「少し落ち着きなさい……」
「落ち着けるか! お前達の所為で、街は何も残っていないんだぞ!?」
怒り任せに揺さ振ると、今度はチンピラが不愉快そうな顔になり、胸倉を掴んでいた手を蹴り払った。
「お前ウゼェよ? 全員が同じ考えじゃねえのに、勝手な事を押し付けんじゃねえよ!」
「ゴホッ!?」
思いっきり腹を蹴られ、僕は飛んだ。
そして、紳士が立ち上がりながら服の埃を払うと、何処からか鞭を取り出した。
「これは痛みつけないと、言う事を聞きそうにないですねえ?」
「おーおー、鞭でしばくとか怖え怖え……オイガキ、今の内に大人しく謝ったほうが良いぞー?」
「誰が……お前達なんかに謝るか……ッ!」
鋭く睨みつけると、紳士は無表情で鞭を振るい、嘆息した。
「やれやれ……私達の恐ろしさを、その身に刻み込まねばいけませんねえ!」
「ッ!」
やられる。 そう思って咄嗟に守る態勢に入った。

……しかし、何時まで経っても鞭が来ない。 不審に思い、態勢を解くと……

「ふむ……一人相手に、二人ががりで襲うとは卑怯な奴等だな?」
「「「なっ!?」」」
何処から現れたか分からない、謎の老人が右手一つで受け止めていた。