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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕等が終わる、教室で。 ( No.5 )
- 日時: 2015/07/21 16:53
- 名前: 澪 ◆o.VVmdjEUY (ID: SiiKM6TV)
第一章【 絶望的な希望 】
僕がそれを知ったのは、高校二年生の冬のことだった。
いつもは授業終了とともに教室を真っ先に出る僕だけど、その日だけは帰る気になれなかった。
多分僕はその時、寂しくて寂しくて仕方がなかったんだろう。
声をかけてくれる人なんていないとわかっていても、最後の希望は捨てきれなかった。
まるでバレンタインの日に未練がましく教室に残る男子みたいだ。
放課後の教室で、僕は徐々に心地よいまどろみに誘われていった。
暖房が切れた後の緩やかな熱の残滓が身体を巡り、冷めてきた空気が頬を掠める。
寝不足だった僕にとって、暖かくも少し肌寒い、みたいな空間はぐっすりと眠るのに最適だった。
「……——千晃、君」
控えめで、囁きに近いような音量だが、その声は不思議と僕の耳に澄んだ音として届いた。
俯いていた僕の目には、紺の靴下と細い脚、プリーツスカートの裾が映る。
僕は何気ないふりをして視線を上げ、そして——
————その灰色の瞳と、出逢った。
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