コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋する乙女。 【短編集】 ( No.61 )
- 日時: 2016/10/07 15:11
- 名前: ももたん ◆hjAE94JkIU (ID: u6EedID4)
*絶世の美少女vs和風地味子*
廊下ですれ違えば、男女問わず全員が振り向く絶世の美女。
それは私である。
ただ、それができないものが二名。
和風地味子こと田村花子と、イケメン優等生海崎陽太。
正直言って和風地味子はどうでもいい。
けれど海崎は…!
なんで、なんで好きな相手に限ってオトせないのよ!!
…なんて、和風地味子を甘く見ていたのが悪かった。
***
「え…和風地味子が、海崎を、好き?」
「そーなのよ。そう聞いたわ。ほとんどの女子は知ってる噂だし、男子にも知ってるやつがちらほらいるから、信ぴょう性は高いはずよ?」
「マジかよ…」
おっと、最後の言葉は口が滑った。私はマジ、なんて下品な言葉使わないんだから。
まあとにかく!和風地味子に海崎は渡さないんだから!
***
「ちょっといーい?わふ…田村さん」
「…いいけど」
休み時間、私は田村を校舎裏に呼び出した。なんか古臭いとか思ったそこのアンタ。覚悟しなさい。
「…で、貴方が海崎…君を好きって、本当?」
「はい」
なんって正直なのかしら。ちょっとイラつくけど、まあ話が早く進みそうだからこの際許す。
「…そう。私もそうなの」
「そうなんですか」
チッ。まだ続きがあるのに返事しやがって。しかも余裕そうに!
「ええっと、それでね、私たちライバルでしょう?」
「理論的にそうなりますね」
「でも私、じれったく勝敗を待つことが嫌いなタイプなの」
「平和主義ではないということですね」
「そういうわけじゃないんだけど…」
平和主義じゃないとか何よ、喧嘩売ってんの!?といういらだちはこの際隠す。
「ま、まあ。だから、手っ取り早く勝負しましょうよ」
「どのような?」
「そうねぇ。まずは、手作り弁当にしましょうか」
「はあ」
「中身を見て、どちらがいいか選んでもらうのいいでしょう?」
「わかりました。では授業が始まるので」
そういって和風地味子はくるりと背を向け歩いて教室へ向かった。
クソ、アイツ動きと言動の一つ一つを余裕ぶって。意味わかんない。
まあとにかく、明日は弁当で海崎をオトすわよ!
***
「じゃあはい、こっちもらうからこれいいや」
なんで。
「お弁当箱は食べ終わったらそのままでいいですから」
なんで。
「わかった。じゃ」
なんで、カラフル弁当より地味な典型的弁当が勝つのよぉぉぉぉぉ!
意味わかんない、バカでしょ海崎、見る目なさ過ぎよ!
っていうかなんで私が負けたの?この絶世の美少女様が!
くそう、このまま引き下がれないわ、二戦目よ!
「なんですか今日は」
「まあ聞いて? 今日は第一戦目優勝おめでとう」
「優勝といっても負けるか勝つかですから」
「そんなこと言わないで。…で、今日は第二戦目をしようと思うの」
「まあいいですよ」
ふ、その余裕な顔も、今で終わりよ!
「イメチェン勝負よ!明日イメチェンをしてきて、海崎君からより良い反応をもらえた方が勝ち。これではっきり勝敗つけましょ」
「まあ、いいですよ。あ、次移動教室なので」
…な、何よ。まだ余裕ぶれるっていうの!!?
***
「おはよー皆!」
…あれ、いつもの返事がない。
「ちょっと…何で誰も返事してくんないのよ…」
ブツクサ言いながら教室に入る。よくみると、皆教室の一番奥に目線を向けている。
私より上のやつがいるの?
そんなわけないわよね、まあしょうがないから見に行ってあげるわ。
「なっ…田村、さん!?」
私の声に、和風地味子が振り向く。
「おはようございます。言われた通りしてきましたよ、イメチェン」
「な…変わりすぎでしょ…」
「そうですか?コンタクトにして髪を上で纏めただけですが」
うっそ、それだけで印象ってこんなに変わるの?
っていうか、海崎。海崎はどんな反応してるの!?
「ふぅん、意外とかわいー顔してんじゃん」
そう呟き、私の視線に気付きこちらを向く。
地味子以上のコメントをしてくれるかと待っていると、何も言わずにそっぽを向いてしまった。
ってことは…つまり…。
二対○で、私の負け?
「そんな…」
「第三戦目はありますか?」
地味子がそう問いかけてきた。
「いい…勝てる気、しない…」
友達が言うには、田村は海崎と付き合い始めたらしい。
ちなみに休み時間にふと見ると、もういつもの地味子に戻っていた。
「はぁ…がんばろ」
この勝負でのこと、次に生かすんだから。負けたから悔しいなんて思わないんだからね!!
End