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  「———雨だ、」  
日時: 2016/04/29 20:29
名前:   なつめ。   (ID: 0a987INq)





   みなさま、こんにちは。*
   なつめ。と申すものでありますっ(`・ω・´)
   諸事情で新しく、スレッドを建てなおしました!




   *。シリアス要素があります、ご理解ください。
   *。更新スピード遅めです…。



   ちょこっと、あらすじ。*



   貴方は振り向いてくれない、絶対に。
   少しも可能性はない、分かってる。
   それでもまだ、今でも、想い続けたいんです。


   ああ、神様。
   どうして私を、彼の「妹」にしたのですか——?


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Re:   「———雨だ、」   ( No.4 )
日時: 2016/05/03 11:31
名前:   なつめ。   (ID: 0a987INq)



   「曇り空と、紫陽花。」





   薄い水色の傘を手に持ち歩いていると、路地裏に出た。
   雨はまだ本降りにはなっていなくて、少し頬が緩む。
   足を止めていると、遠くから声が聞こえた。



   「澪ーっ、ごめんっ、遅れたあ、」

   「ううん、大丈夫だよ、紫衣(しい)」



   彼女は、鳳 紫衣(おおとり しい)、私の幼馴染。
   小学校、中学校、そして高校も同じになることができた。
   焦げ茶色の髪をボブにしていて、すごく可愛いと人気。


   両わきの花壇に紫陽花が植えられている道を、進む。
   雨粒が花びらに吸い込まれ、滑り落ちていく。


   軽やかに耳奥に染み込んでいく、雨音。
   白いイヤホンを取り出した紫衣が、此方を向いた。



   「これ、聴く? 最近ハマってるんだよねえーっ」

   「この曲……、知ってるかも」



   確か、土曜日のドラマの主題歌だったような。
   あの曲は確かに、いい曲だよね、と相槌を打った。
   雨音と重なって聴こえるメロディーが、とても心地いい。


   そんな、いつもと変わらない普通の朝。
   紫衣は目を閉じて曲を聴いていて、私もつられて目を閉じた。









 




   ————……「澪、」
















   確かに、そう、言ったのだ。
   曲と雨音にもかき消せない、その声で、呼ばれた。


   目を開けると、そこにいるのは登校する生徒たちだけ。
   あの声が誰か分かってる、絶対に、彼しかいない。
   耳からイヤホンを引き抜き、いきなり、ぐん、と走り出す。




   「……ちょっ、澪っ!?」

   「紫衣ごめんねっ、あの、先行くっ!」




   追いついてどうするの——どうしよう、考えてない。
   でも、足が止まらない、会いたいのかも分からないけど。
   本当に彼なのか、確かめたい。


   そこまで考えたところで、体が急停止した。


   急に止まったからか、身体がふわりと浮いた気がした。
   雨音が、やけに頭に響いてくる。
   傘に当たる雨粒の音が強くなってきて、傘が揺れた。


   ああ、大事なことを忘れてた。
   危ないじゃないか、大切なことなのに。






   私、「あの人」のこと、大嫌いだった。








   「澪っ、どうしたの、急に!」

   「——ああ、ごめん、行こ」





   首を傾げる紫衣よりも少し早歩きで、進む。
   横目で見た深い青の紫陽花に、雨粒がひらり、落ちた。


   心を見透かされているような気分になり、顔を背ける。
   なのに、顔を向け直した先が——、
   お兄ちゃんを取り囲む女子達が、何人も。


   ぎりぎり、と胸が軋んでくるのを感じ取る。
   紫衣の腕を引っ張って、急いで校門を通り抜ける。





   廊下では何度も紫衣が「大丈夫?」と聞いてきた。
   こんなとき、私はいつも最低なことを思ってしまう。


   ———分からないよね、こんな気持ち。
   大丈夫じゃないよ、好きになってしまったときから。
   一生、「大丈夫」にはなれない。


   私も雨粒みたいになれたらいいのに。
   紫陽花の大きな花に包み込まれて、吸い込まれてしまいたい。
   そして雨の匂いに、優しく撫でられたい。


Re:   「———雨だ、」   ( No.5 )
日時: 2016/04/30 18:42
名前: miya (ID: 5G1Y6ug9)

私、兄弟愛って大好きです。どうやって結ばれるんでしょう?
すごく楽しみです!!!

Re:   「———雨だ、」   ( No.6 )
日時: 2016/05/01 09:55
名前:   なつめ。   (ID: 0a987INq)




   miya さま *。





   初めまして、なつめ。と申しますっ!
   おおー、兄弟愛大好きですか嬉しいです(´`*)
   なかなかお好きな方いらっしゃらないですからねえ(


   応援、よろしくお願いします!
   コメントありがとうございましたっ。


Re:   「———雨だ、」   ( No.7 )
日時: 2016/05/02 17:52
名前:   なつめ。   (ID: 0a987INq)



   「愛することの、境界線。」





   教室の扉を開け、窓際の自分の席についた。
   閉められた窓には、水滴がびっしりと張り付いている。
   空気の籠った教室には、話し声が充満する。


   時折、また教室の扉が開く。
   適当な挨拶が耳をすり抜けて、雨音が一瞬強くなる。




   「ねーっ、知ってる? 今日、転校生来るんだよ」

   「え、まじでーっ、イケメンならいいなっ」




   甲高い笑い声がすっと、頭に入ってくる。
   もしかしたら——、そんな考えがふと浮かんでしまった。
   先生が来る前、転校生の話はもうクラス中に広まっていた。


   前の方の席を見ると、紫衣も瞳を輝かせていた。
   勘弁してよ、と思いながら、窓の方へ意識を向ける。
   がら、と音を立てて、また教室の扉が開く。













   「————……霧ヶ瀬 仁(きりがせ じん)です」

















   窓に張り付いていた雨粒が、綺麗に洗い流される。
   きらきらした水滴は宙に舞い、堕ちてゆく。
   顔の筋肉がこわばり、体が規則正しく震える。


   煩く響いていた雨音が止まり、彼の声だけが耳に届いた。
   いつ振りに聞いたかも忘れてしまった、低いその声。


   不意に、視線が絡み合った。
   向こうも驚いた顔をしたけど、すぐに微笑んだ。
   何故だ、ああ、頭が痛い。





   やっぱり、目が覚めなければ良かった。
   また雨音が聞こえだして、窓ガラスにも雨粒が戻ってきた。
   座っている筈なのに、足ががくがく、と揺れる。


   此方に向かって歩いてくる彼は、「思い出」そのもので。
   でも甘いものじゃなくて、消したい、要らない過去。




   「会いたくなかった——、仁、くん」

   「……澪だ、やっぱ、澪だ……っ、はは、」




   泣きそうな顔の「彼」の言葉が、力なく震えて歪んだ。
   久しぶりに感じられた、私の名前。


   赤茶色っぽい、染めてるようなさらさらの髪。
   目尻が少し上がっている、吸い込まれそうなその瞳。
   高い鼻筋に、たった今私の名前を呼んだ、唇。


   泣きそうになった、やっぱりこのひとだ。
   大嫌い、憎んでいたのに、会うと、駄目になる。


   思い出したくなかったことが、「思い出」になってしまったときから。


   貴方のことが、大嫌いです。
   なのに、何故涙が溢れそうになっているんだろう。
   視線が合うのが痛い、胸の奥を突かれているようだ。




   「……大っ嫌い、」

   「うん、知ってる、っ……けど、」




   愛というものには、境界線がない。
   そんな線を造っていられるほど、簡単ではないから。


   ああ、でも、神様。
   このひととの境界線は、どこに消えてしまいましたか。


Re:   「———雨だ、」   ( No.8 )
日時: 2016/05/01 17:38
名前:   なつめ。   (ID: 0a987INq)




   「*。お知らせ」





   こんばんは、なつめ。です(`・ω・´)
   今日は、皆様にお知らせすることがあります!


   この作品、「———雨だ、」が参照50を突破しました!
   いつも読んで下さる方々に、感謝でいっぱいです。
   これからも、お付き合いの程よろしくお願いします。*



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