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手をつないで、空を見上げて【短編集】
日時: 2016/04/30 15:45
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: IxtPF2j4)

ひよこと申します。

初の短編集です。シリアスコメディごっちゃ混ぜ、なんでもありの色々詰め短編集なのでお気をつけください。


のんびり更新です。




*目次

1.『××の言葉』>>1

2.『天体観測』>>5

3.『私たちはそれを愛と呼ぶ』>>8-9

Page:1 2 3 4 5



Re: 手をつないで、空を見上げて【短編集】 ( No.4 )
日時: 2016/04/07 01:22
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: BbFmo06P)

スミレさん


ありがとうございます〜!!
初の短編ということで、書き終わった時も投稿する時もめちゃくちゃ緊張してました......
いつも長編ばかり書いていたので、適度な長さにまとめるのがすごく難しかったです。
色んなものが書けるっていうのが短編のいいところですよね〜!! 長編じゃ使えなかったネタとかも書きたいな、なんて思ってます。

スミレさんの短編読んでみたいです......!!
のんびりお待ちしてます(*´ω`*)


コメントありがとうございました!!








あんずちゃん


こちらこそ素敵なお題をありがとう。
これが書けたのはあんずちゃんのおかげだよ〜!! 感謝してます。

呪いの言葉をなんとかして生かしたくて......あんまり自分の思うようには書けなかったんですが、形にはなったかなぁ、と......
お互いがお互いを想いすぎて縛られてしまう。そんな関係が切なくて仄暗くて好きなんです......現実じゃ可哀想すぎるのでノーサンキューだけど!!

コメントありがとう!!

Re: 手をつないで、空を見上げて【短編集】 ( No.5 )
日時: 2016/06/27 21:04
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: 8F879P3u)

2.『天体観測』







「あれが、春の大三角」

雲一つない青空、君は指を指す。

「よくわかるね、みえないのに」

「みえなくても、ちゃーんとそこにあるんだよ」

放課後の屋上。心地よい風が優しく頬を掠める。フェンスに背を預けて、君と二人で空を見上げる。

「ねえ、明日も来るの?」

「君が来るなら」

「そう」

そっけない返事をして、君は立ち上がった。くるんっと軽く回って、けらけらと笑う。
屈託のない笑みを浮かべながらも、どこか泣きそうな声で言った。

「バカな人だね」

さして気にせず、僕もそっけなく返事をした。

「そうかもね」

「今日はもう帰るよ」

「そっか」

ドアの開く音、遠ざかっていく足音を聞きながら、僕は再び彼女が指差した空を見上げた。

三角形になって青空に輝く星が、みえた気がした。





彼女とこうして屋上で会うようになったのは、最近のこと。彼女が、屋上のフェンスを乗り越えようとしていた時だった。
また来たの、と少し困ったような笑みを浮べる彼女そっちのけで、僕は隣に座る。最初の頃、無言に耐えかねた僕が夜にみえた星のことを話したのが、彼女の心の扉を開いたきっかけになったらしい。星に詳しいようで、いまみえる星の名前だとか、どこにみえるだとか、まるで玩具を目の前にした子供のように目を輝かせながら僕に話す。そんな彼女をみて、それから空をみて、悪くないなとひとりごちた。なんか言った? と首をかしげる彼女に、なんでもないと言いながら。

星以外のことを話してくれるようになったのも、つい最近のこと。

「なんてことないの。ただ、運が悪かっただけ」

「お母さんが機嫌の悪い時に、話しかけちゃったの」

「いつもみたいに我慢すればいいだけ、それだけなんだけど」

「なんでだか、無性に嫌になっちゃって」

夜中に星をみただけなのにね、なんて彼女は笑う。無意識なのか、自分の体を護るように抱きしめて。

「星は変わらずそこにあるのに、私はいつか消えちゃう。いつか必ず。だったらいま消えちゃったほうが......なーんてね」

今日は帰るよ、そう言った彼女の背中を、僕はただ見つめていた。







今日は少し遅くなってしまった。慌てて屋上のドアを開ける。

「......遅かったね」

初めて会った時とは、違かった。
君はもう、フェンスを乗り越えていた。

「もう、私なんかいらないんだって」

君はそう、独り言のように呟く。

「あなたと話すの、楽しかったよ。でももうダメみたい」

泣きそうに笑った君の顔をみて、咄嗟に駆け出した。

「ばいばい」

空に、君が消えそうになる。

澄み渡った青に吸い込まれる前に、君の腕を掴んで強く抱き寄せた。
その勢いで、君を抱いたままアスファルトに仰向けになる。背中が少し痛い。

「......どうして」

「今日はまだ、星をみてないから」

「......昼間じゃみえないよ」

「でもあるんでしょ、ちゃんと」

「......うん」

「君の隣で、君と二人で、星がみたい。春も、夏も、秋も、冬も。一人でみたって、僕は星の名前なんてわからないから、君が教えてよ」

「......あなたは、本当に、バカだね」

「そうだね」

君の声が、弱々しく震える。灰色のセーターが温かいもので濡れている気がするが、そんなことはどうだっていい。
ぐりぐりと僕の胸にこすりつけてくる君の頭を、できるだけ優しく撫でる。

雲一つない青空、僕は指を指す。


「あれが、春の大三角」





さあ、天体観測を始めよう。

Re: 手をつないで、空を見上げて【短編集】 ( No.6 )
日時: 2016/04/08 06:50
名前: スミレ (ID: Id9gihKa)

天体観測、良かったです!
名前も出ていない2人の屋上の会話が…
節々から女の子の事情や、男の子の気持ちが伝わってきて…切なくなりましたT^T

設定が思い付いても、ついついメモしっぱなしで…なかなか形になら無いんですよね(^_^;)
いつかちゃんと書こう、止まりなんですよ呆れた事に(−_−;)
でも、ひよこさんの短編集が読んでいると、自然と私も書きたくなります!

いつか、話がまとまったら書こうと思います!
今書いてるのもまだ先があるし、いつ出来るか…出来ても不定期かもしれ無いけど…書きたいです!

なんかいつもコメントで、私個人の話をしてしまってすいません(>人<;)
続き、楽しみにしています!!

Re: 手をつないで、空を見上げて【短編集】 ( No.7 )
日時: 2016/04/30 13:38
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: IxtPF2j4)

スミレさん


読んでくださってありがとうございます〜
短いけどわりと気に入っています、この話。

めっちゃわかりますそれ。眠っているネタが何個もあります......消化したい。
やった!! スミレさんの短編楽しみです!!

いえいえ!! スミレさんのことが知れて嬉しいです。もっと話してくれていいんですよ!!


コメントありがとうございました!!

Re: 手をつないで、空を見上げて【短編集】 ( No.8 )
日時: 2016/04/30 13:43
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: IxtPF2j4)

3.『私たちはそれを愛と呼ぶ』


「一緒に死のうか」

様々な感情が混じりあった深い茶色の瞳が見開かれ、私の姿を映す。

瞳の中の私は、とても無邪気に笑っていた。


***


氷のように冷たい空気が私の頬を撫で、思わずぶるりと身を震わせた。
重い瞼をゆっくりと開く。

「ん......?」

ここは、どこだろう。
眠ってしまったのだろうが、こんなところで寝た記憶はない。
真っ白な世界。ところどころに霧が立ち込め、視界はあまりよくない。後ろには透明なガラスのような壁があり、これまた真っ白な床に座り込みながら私はそれに寄りかかって寝ていたようだ。
ふと、目の前にゆらりと影が落された。

「起きたか」

霧が少し晴れ、影の正体が人だと知った。降ってきたのは聞き過ぎて耳に染み込んだ、よく知っている声だった。

「......ここ、どこ?」

幼馴染みの彼は、私の目の前でしゃがみこんだ。

「俺にもわかんねえ」

確か。奥底にある記憶を引っ張り出して、働かない頭で必死に考える。
そう、確か。私は彼の委員会が終わるのを教室で待っていた。暇だった私は恐らく寝てしまったのだろう。だとしたら、目が覚めてまず見るのは、目の前にあるはずの黒板だ。
夢、という可能性も考えた。だがあまりにも意識がはっきりしすぎている。そして、目の前の人物。彼がこんなにもはっきりと見えている。夢だとしたら、輪郭がぼやけていたり、色がついていなかったり、ところどころ現実と異なる箇所がでてくるはずだ。あと頬をつねったがちゃんと痛かった。

「夢じゃないことは確認できたか?」

「とても不本意だけど、どうやらそうみたい」

ところで、と私は目の前の彼に尋ねる。

「これ、なに?」

私の首筋にあてられている、鋭く尖ったナイフを指さした。薄皮ぐらいはもう切れてるんじゃないか。全身冷たいが、それがあてられているところは一等冷たかった。それが妙に現実味を帯びている。

「なにって、ナイフだろ」

「うん、なんでそれを私に向けてるかって聞いてるんだけど」

彼は一瞬きょとんとした顔を向けたが、すぐに破顔した。はは、と空気が混ざった笑い声をもらす。

「そうか、言ってなかったか」

「なにを?」

「俺に殺されてくれねえか」

「嫌だよ」

「即答かよ」

あんたに殺される道理がない、と言うと彼はどこか悲しそうに、そしてほっとしたようにナイフを私の首から離した。
手を当てて確認してみるが、痛くはない。

「で、あんた誰?」

「お前が一番よく知ってるだろ」

「......ああ、うん、言い方が悪かった。あんたは『いつ』のあんた?」

いまだ私の目の前でしゃがんでいる彼に問いかける。

「......さあなぁ」

「私が知ってる今のあんたは、そんな笑い方しないよ」

少なくとも、すべてを諦めたような、そんな笑い方は。

「どんな笑い方してたんだ俺は」

「バカみたいな笑い方」

「なんだそれ」

「ねえ」

答えを促しても、彼はうつむいて口を開かない。どうしたものかと逡巡していると、蚊の鳴くような声でぽつりと言った。

「......お前が、死んだ」

それからなにかが切れたように、またぽつり、ぽつりと次々に言葉が降ってくる。

「一回目は、事故で」

「二回目は、誰かに殺されて」

「三回目は、電車にひかれて」

四回目、五回目、と、私が死んだ理由を彼は表情の無くした顔で語った。

「どれも酷い姿だった」

頭がないときもあった、と彼は吐き捨てるように言う。
そう、そっか。私は彼が捨てた言葉を一つ一つ拾い集め、心の中にしまい込んだ。

「最初にお前が死んだとき、嫌だって心の中で叫んだんだ。そしたらその日の朝に戻っていて」

夢だったら、どんなによかったか。彼の目が、そう訴えてきた。

「それからは繰り返し。何度も、何度も。巡りすぎて、俺は自分が何者なのかもわからなくなった。お前がいつのお前なのかもわからない。ただ、生きてるお前に会いたかった」

「じゃあ、何者?」

「さあ、怪物とかじゃないか?」

ごめん、と彼は言う。

「どうして謝るの」

「お前を一度だって助けられなかった」

「仕方ないよ。それはもう、決められたことだったんだ、きっと」

「はは、随分落ち着いてるんだな」

彼の骨ばった、ナイフを捨てた手が、私の両頬を包み込んだ。
落ち着いているわけじゃないが、この手が、温もりが、私を安心させているのかもしれない。

「なあ、俺に殺されてくれねえか。辛くないようにする、苦しくなんてない、痛みなんて一瞬だ。すぐに俺もいくから」

だから。

「もう、あんな姿で死なないでくれ」

手が震えてるくせに、なにを言っているんだろう。
どうして、彼はこんなにも優しいんだろう。
彼の手に自分の手をそっと添える。一緒に育ってきた、こんなにも大きくなった手。

「ごめん、殺さないで」

「どうして」

「私の世界にはまだ、あんたがいる。彼を置いて先にはいけないよ」

「......それなら、俺はどうすればいい?」

そんな顔をして、本当に私を殺せるのかと思うと、どこかおかしくなった。
彼も怖かったんだ。私を殺すなんて。殺したくなかった、でもどうしようもない。

だったら、

「私があんたを殺すよ」

彼と同じように、彼の頬に両手を添えた。深い茶色い瞳がゆらゆらと揺れ、不安げに私を映した。安心させるように、優しく微笑む。

「私が死ぬ時、あんたも一緒に連れていく。約束。それじゃだめ?」

そっと顔を引き寄せて、額を合わせる。鼻の頭がくっつきそうな距離で、囁く。

「あんたを怪物になんかさせない。私が知ってる幼馴染みのあんたのまま、私が、殺すから」

だから、そんな顔しないで。

「......ほんとか? 本当に、俺を殺してくれるのか?」

「うん」

「そう、そうか......俺は、もう、お前がいない世界で生きなくていいんだな......」

細めた茶色い瞳から、透き通った雫が溢れて零れる。こんなに綺麗な涙を流せる人が、本当に怪物なのだろうか。

「......まだ、泣けたんだな......とっくに枯れたかと思ってた」

嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑う。その笑顔をみて、心臓がきゅうと掴まれたように痛くなる。
怖い。怖い。こんな彼を、私は殺せるだろうか。殺して、いいのだろうか。

ああ、きっと、彼も同じだったんだ。

「でも、少し羨ましいな。そっちの俺はお前と一緒にいけるんだな」

「......いずれ、あんたも通ることになる未来だよ」

「それでも、ここにいる俺じゃないだろ。ああ、いいな」

羨ましい、なんて言いながら彼は笑う。その笑い方は、私がよく知っている彼だった。

「愛してる、愛してるんだ、もうずっと」

「......うん、知ってる」

「相変わらず可愛くねえな」

ふはっ、と、屈託なく笑うその顔には、もう諦めの色はなかった。

「......ありがとう」

そう言って、彼は消えた。
音もなく、静かに。

「......私も、愛してたよ。これからも愛してる」

未来の彼も、過去の彼も。全部全部、私が愛した彼。

「......さよなら」


私を愛してくれた、優しい怪物。


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