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- 路地裏の少年
- 日時: 2016/02/11 23:59
- 名前: 青月カオリ (ID: 4PGcxOg1)
第一章 雨の中
なんで生まれて来たのだろう。
僕は3歳の頃、親に捨てられた。
この路地裏に捨てられた。
体中アカだらけで、服はボロボロだ。
足の裏には小石のせいで出来た無数の切り傷。
ボロボロなのは体だけではなく、心もだ。
朝起きると、家に帰ると、温かいご飯が食べられる。
優しいお父さんとお母さんの間に入って、両手を繋ぐ。
周りには良い友達がいて、毎日が幸せで……
僕はそんな家庭が欲しかった。
欲しいというより、取り戻したかった。
親子が仲良くじゃれているのを見るのが、何よりも辛かった。
僕は生きていて良いの?
僕は人を不快にさせる存在なのだろう。
早く死にたい。
誰も来やしない、この路地裏。
今日も孤独に生きていくのか……
このまま大人になったらどうしよう。
この事、皆が知ったら、僕はまた、今のようにボロボロになるんだろうな。
雨だ。
雨が降ってきた。
寒い……
また風邪を引かなければならないのか。
僕は雨が大嫌いだ。
降りだしてからだいぶと時間が経った。
さっきより激しくなっていた。
ザーザーザーザー振り続けるこの雨達は、ボロボロの僕をもっとボロボロにしていった。
三角ずわりでうつ向いていると、誰かが僕の側に近寄って来た。
僕はわざと気付かない振りをした。
時々、こんな僕を笑う男達が来るからだ。
が、この日は違った。
その人は優しそうな若い女性だった。
女性は僕に傘を差し出した。
僕は受け取らなかった。
だって、この女性が濡れてしまうからだ。
「傘、受け取って。」
「僕は大丈夫ですので……」
それでも女性はずっと傘を差し出していた。
「こら、風邪引いちゃうよ?私の家に来て。」
一瞬、時が止まった。
今、何て行った?
『私の家に来て。』
思い出すと、涙が溢れてきた。
この世の中には、こんな僕に手を差し伸べてくれる人もいるんだなと思った。
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