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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.26 )
日時: 2015/04/16 20:08
名前: 逢逶 (ID: rqG2u1s0)

episode7
title 革命

「ね、なんで受け入れてるの…?」

「さぁ?」

「彼氏いるんでしょ?」

「さぁ?」

私は鼻で笑って、運転席に移動した。

「トイレはいいんですね」

「うん」


車を走らせる。

それから十分程で次のスタジオに着いた。

車を降りて、スタジオに入る。
山田さんは気まずい感じで近寄っては来ない。

挨拶をしてから、楽屋に向かう。
廊下が長い割に会話はなくて、思わずため息をついた。

「…今ため息ついたっしょ」

山田さんに気付かれて、どう答えたらいいのかわからなかった。
聞こえないフリをするわけにもいかず苦い顔で黙り込む。
早く楽屋につけ、と思うけどまだまだ遠い。

「…ため息とかつかないでもらえる?嫌な気分になるから」

ため息にも理由はあるのに有無を言わさない山田さんの冷めた目。
呆れて何も言えない。
無視をすることにした。

「…無視かよ」

山田さんの声はか細く消えた。

楽屋に到着し、山田さんの着替えを外で待つ。
大物芸能人が集う今回の収録は、大人気長寿番組の五時間をこえる大特番。
今日はその内の二時間の撮影。
KISSTILL所属事務所もかなり期待している。

「…着替え終わったよー」

山田さんが楽屋から出てきて、大物への挨拶回りが始まった。
一人一人丁寧に挨拶して、少し雑談をする。
必ず山田さんへ聞かれるのは、忙しいんでしょ?ということ。
売れっ子は凄い。

「よろしくお願いします」

最後の挨拶が終わり、楽屋へ戻る山田さん。
私は、トイレに向かった。

…メールをしよう。


あの優しい男性に。

あの優しいコックさんに。

あの人は無理矢理キスなんてしない。

〝強引にキスされました。朔くんに慰めて欲しいです。
今日お店に行ってもいいですか?〟

気を引くためのメールを朔くんに送った。

返信はすぐに来て、その文面に涙が出そうになった。

〝もちろん
辛くなったらいつでも来て〟

…気を引こうとしたことが恥ずかしくなった。
朔くんは良い人。

朔くんと正面から向き合って恋をしたい。

私は一人にやけながら、収録を眺めた。


収録終了後、急遽会議があると連絡が入った。
ツアーの構成の意見が事務所側と食い違っているようだ。

山田さんを車に乗せ、急いで言われた場所に向かった。
十分ほどで到着。
他のメンバーとマネージャーさんはすでに到着していて、上着を脱ぐ間も無いまま会議は始まった。

「事務所は、将来三十代に突入した時を考えてひたすらかっこいい…例えば、ダンスナンバーでミステリアスな楽曲を中心に構成するべきだと言っているんだ」

でも…前回の会議では、KISSTILLは若さを活かしたポップで元気な楽曲を多く歌いたいと言っていた。
事務所の将来を考えた意見は良く分かるけど、これはKISSTILLのライブで…、ファンとKISSTILLが楽しまなければ意味がない。

「…俺は、かっこいいだけじゃ嫌だ。俺たちらしいツアーにしたい」

…考えろ。

どうすれば成功する?


案が通るかどうかも分からない状況で私は口を開いた。


世界を変えてみたいと思った。