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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.58 )
- 日時: 2015/10/18 18:44
- 名前: 逢逶 (ID: 9yNBfouf)
episode5
title ありがとう
昨日のことがまだ信じられない。
脱走した景都は、すぐに捕らえられた。
抵抗もしなかったようだから私に会いに来るためだけの脱走だった。
死刑はほぼ確定だった。
酒の席ではなく、喧嘩をしたわけでもない。
凶器を最初に手にしたのは景都。
本人も認めていて、景都自身も死刑を望んでいるようだ。
これでいい。
だって、変えられない。
今日は、KISSTILLが全員で面会に来る。
やっと、再開されたのだ。
声が出ない私のために、紙とペンが用意された。
午前十時。吉橋先生が最初に入ってきて、後から挙動不審なKISSTILLが入ってきた。
この様子からして景都のことは知っているんだな。
「じゃあ、私はこれで。三十分後にまた来ます」
吉橋先生はにこっと笑って病室を出て行った。
「聞いたよ、あいつのこと。よかったじゃん」
山田さんは少し怒ったような口調で言う。
〝もう景都のことは責めたくないんです〟
と、書いた紙を見せると山田さんはもっと怒った顔になった。
すると、山田さんを遮って中島さんが話し出した。
「人を責めるのって辛いよね。解決できたんだね」
解決、なんて出来てない。
私は静かに涙を流した。
そんな私の頭をぽんぽんと撫でながら山田さんはゆっくりと穏やかなトーンで話し出した。
「俺たちさぁ…、持ってかれてるんだ、蓮ちゃんに。強がってるけど本当は弱いとことか、周りに気遣いすぎていつも迷ってるとことか、仕事できるのに恋愛は下手くそなとことか、俺たちにとっちゃ可愛いと思うだけなんだけどね。甘えてよ、一緒にいるから」
私は声をあげて泣いた。
バカみたいに子供みたいに。
山田さんは私をしっかり包んでくれた。
声が戻った。
久しぶりの自分の声はとても新鮮でだけど懐かしい。
ありがとう。
もう、何も怖くない。
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