コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ☆星の子☆ 作者は戦闘シーンを練習中でございます。 ( No.452 )
- 日時: 2011/11/03 18:14
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: qRt8qnz/)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
- 13章 88話「亀裂」 
 西軍 洞窟——
 俺は鼻歌交じりに横を歩く男を睨みつけた。
 図体が大きく肉付きも良い、しかし体に比べて脳みそがあまりにも小さい、力ばかりの男、セル。
 俺はこいつがどうも苦手だ。
 理由は分からない。しかし見ていると何故だか癪に障る。
 残忍で、同じ人種なのに民を平気で殺す、そんな男。
 こいつが何故反乱軍に入ったのか、よく分からない。しかし、趣旨が食い違っているのは確かだ。
 俺はこう思う。こいつは政府を倒すんじゃなく、ただ人を殺めるために反乱軍に入ったのだと。……勿論、俺の想像だが。
 冷酷な視線に気づき、セルは俺を見下ろした。癇に障るが、こいつは俺よりも少しばかり背が高い。俺が見上げなければならないのが何とも癪だ。
 「何だ、リン。文句でもあるのか?」
 「いや。……しいて言うなら、斧を振り回すのはやめろ。」
 セルはいつの間にか上機嫌で下手な鼻歌に合わせ、背負っていた斧を振り回していた。俺の頭上を何回か掠めたように思えたのは気のせいか?
 俺に言われやっと気付いたかのように、セルは手に握られた斧を見る。そして少し声を荒げて言った。
 「何だ、悪いのか? 俺様は早く戦いたくてうずうずしてんだ。お前は黙ってろ。」
 「……」
 溜息しか出てこない。
 だからこいつと組むのは嫌だったんだ。しかし、そうとは言え他の奴らにこいつは任せられないしな。ある意味賢明な判断だったのかもしれない。
 俺は他の連中を思い出し、再度溜息をつく。
 そして力を確かめるように手を握ったり開いたりしているセルに、前々から言えずにいた質問をぶつけた。
 「お前……人を殺すことに何の違和感も感じないのか?」
 「はぁ?」
 セルは少し考えるように宙を見上げた後、軽く言う。
 「誰もんなもん感じてねぇだろ。」
 俺は歩みを止めた。足を止め、信じられない表情でセルを見上げる。
 薄暗い洞窟にセルの言葉が木霊した。
 お前……本気でそんなこと言ったのか?
 瞬間、体中が熱くなった。目の前が真っ白になる。
 後ろで西軍Aのリーダーが何かを言っていたが、今の俺はたとえ今地動説が嘘だと発表されても動じないだろう。
 怒れる己の感情に身を任せ、何食わぬ顔で前を歩くセルの胸ぐらを震える拳で引っ掴んだ。
 つっかえる喉の奥から声を絞り出す。
 「っ、お前……!」
 しかしセルは俺の剣幕で怖気づくような小心者ではなかった。かえってそれが彼の闘争心に油を塗ってしまったようでもあった。
 セルは狡猾な瞳で俺を見据え、残忍な笑みを作る。
 「何だ、やるか?」
 俺は今度ばかりは我慢できないと、胸ぐらを掴んでいない右手を振り上げた。
 しかし、その手は彼の頬に届かなかった。
 大きな爆発音と共に、地面が揺れたのだ。
 「っ!?」
 洞窟の中だから辺りの様子が窺えない。
 やっと我に返った俺の耳に、ようやく軍のリーダーの言葉が届いた。
 「隊長! 北軍から報告が入りました! 政府が攻撃を始めたとのことです!」
 
 俺は苦虫を潰した様な顔になった。
 今日攻めることを知っていたのか。
 どうやら不意打ち作戦は失敗したらしい。それどころか、敵の方が先に攻撃を仕掛けてきた。
 「ちっ」
 俺は舌打ち一つして、手を放した。
 解放されたセルは嬉しそうに笑った。早く戦いたくて堪らないのが一目でわかる。
 いよいよだな、とさっきの事をもう忘れたかのように俺の肩を叩いた。
 しかし、俺は肩に置かれた手を振り解かなかった。
 見覚えのある人物が、音もなく俺たちの前に現れたからである。
 ひょろりとした長身の、メガネ科学者。政府軍の『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』研究室担当者。
 そいつは嫌味なくらいの気持ち悪い笑みを浮かべ、話しかけた。
 
 「久しぶりですねぇ、リン殿?
 ——いや、今はリンとお呼びしたほうが良いのでしょうね?」
 「あぁ、久しぶりだな、トル。」
