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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『5000突破ありがとう!!』更新!】 ( No.395 )
- 日時: 2013/06/01 17:03
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
 僕と違って、妹はとても優秀でした。
 というか、全てにおいて、妹は優秀でした。
 情けないことに僕は、父に対して畏怖しか抱いていなかったのですが、妹は気が強く、しょっちゅう父と喧嘩していました。
 『おい!! その格好は、傍から見ればはしたないと何故わからないのだ!! お前は烏間の女人としての自覚が無いのか!!』
 『何よ!! そういうお父さんこそ、その鬱陶しいヒゲ止めれば!?』
 『う、鬱陶しい!?』
 『っていうか、気持ち悪い!!』
 『!?』
 ……そして、いつも勝っていました。
 それでも父は、妹を溺愛していました。そして妹は、父を思いっきり嫌悪していました。
 父は妹に家督を譲るつもりみたいでしたが、妹はそれを思いっきり拒否しました。
 『あたしは忍者みたいな古臭い仕事じゃなくて、料理人になりたいの!!』
 それが、妹の口癖でした。母がいない我が家では、お手伝いさんや妹が作ってくれたのです。
 それで父が、十六になった妹にお見合いさせようとした矢先に、妹は家を出て行きました。
 しかも出て行く際、家を半壊し、庭の所々に落書きするだけならまだしも、なんと我が家の家宝すら盗んでしまったのです。
 家は大騒動。おまけに、謎の女性に襲われて(何か鎌持って襲っていた)、全員死なないぐらいの袈裟切りにされて大怪我を負ってしまいました。この首の傷も、その時のモノです。
 父は、その傷によって亡くなり、頭がなくなった鳥間家は、前から傘下に入るように迫ってきたヤクザ一家に取り込まれてしまいました。
 ヤクザたちが狙っているのは、烏間の家宝。
 その家宝は対になっている紅白の勾玉で、二つ揃えると、願いが叶うといわれます。……いやうさんくさいけどマジなんです。だから焼き鳥食べないでぇぇぇぇ!!
 ゼイゼぇ……で、ある情報から、あそこの図書室の委員さんが持っていると聞いたので、図書室にもぐりこんだんです。
 図書委員さんの顔ぶれは判ったのですが、どなたかはよく判らなかったので、とりあえず貴方たちの後を追っていたんです……。
 「……嘘でしょう?」
 「嘘じゃないんですってば!! 全て真実なんですだから食べないでお願いですからぁぁぁぁぁ!!」
 泣き喚く烏間の忍者(年上)に、五月蝿いので焼き鳥を返してあげた。
 「でもあたし、この人が嘘ついているようには見えないよ?」
 「まあこんな嘘で、上手く騙せた気になっていたら、そいつはタダのバカですよね」
 「酷い!」
 「ていうか、まだ忍者っていたんだなー」
 日比谷さんもあっさり信じちゃったようだ。まあこの人、人が良い上に好奇心旺盛だから仕方が無いけど。
 ……まあ、僕も、この人が嘘をついているようには見えない。
 というか。
 「ここで僕が信じなきゃ話が何時までたっても進まないんですよね」
 「だからメタ発言ダメでしょ!?」
 「いいんですよ今回は。トコトンギャグ日和でいくつもりなんですからメタ発言ぐらい」
 「メタ発言して作者が調子に乗ったお陰でどれだけの作品が未完か……!」
 「ミカンが?」
 「みっかんない」
 「しょうもないですよ」
 などという、訳のわからない会話があったのですが、それはとりあえずおいといて。
 「……ねえ、その勾玉って、どんなの?」
 「へっ? 普通に、胎児のような形をしている勾玉ですけど?」
 余談ですが、勾玉の形は、胎児の姿を元にしているという説があります。
 「……盗まれたのって、二つとも?」
 「いえ。白の勾玉のみです」
 「んでもって、親指サイズ?」
 「あ、はい」
 彼の返事に、彼女は少し考えて、こういった。
 「……確か、雪先輩が持ってきてなかった?」
 「……あ」
 そういえばお盆休みに入る前、雪先輩が持ってきた絵画用カバンにつけていた。
 そして、図書室のあの部屋に置いていった。カバンごと。
 「……図書委員って、静雄君と雪先輩だけだから、ひょっとしたらアレかも!」
 「となれば、さっさと学校へ戻りますか」
 「え、まだ僕食べた……スイマセンいきましょうだからその竹刀下ろして」
 ご馳走様でした、といって、日比谷さんにお代を渡す。本当は弁当をパアにした彼に払わせたかったのですが、「そこまでお金持ってない」ということで、割り勘にしたのでした。ふざけんな。
 「毎度—」という声が後ろにかかる。店を出ようと扉に手をつけた、その時。
 透明な扉の向こうに、知っている顔と、そうでない綺麗な女の人がいた。
 「ん?」
 「あれ?」
 森永先輩だ。……何だか少し、様子がおかしいが、間違いなく、元剣道部の森永先輩。
 そして——様子がおかしいのは、彼も、そして森永先輩の少し後ろに立っている見知らぬ女の人も、そうだった。
