コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 甘美な果実〜微かな吐息〜【短編集】 ( No.1 )
- 日時: 2014/03/08 19:39
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
- 「漆黒の蝶に酔いしれて」 
 私の好きな人は、自由人だ。
 
 島崎景。彼は高校生ながら老若男女魅了してしまう才能を持っている——しかし、私から見れば誰かれ構わず愛してしまう才能を持った最低な男だ。
 そんな男に惚れている私も私でおかしいとは思ってる。結局、景も私もそんな大した人間ではないということか。彼は一向に振り向いてくれないし、私は振り回されてばかりなのだが。
 「——ひかり」
 廊下で女の子と話す景を見て、「見たくない」と思い、窓の外の景色を見ていて、名前を呼ばれたことに気付かなかった。呼ばれた方へ顔を向けると、すぐそこに景の顔があった。
 「俺に惚れてる柴田ひかりさん? 何考えてるの?」
 「うるさい黙って。自惚れないで」
 からかうようにそういう彼に一括する。こんなやり取りを毎日繰り返しているわけだが、展開はしない。もう一生このままかと思うほどに。
 「今日一緒に帰る?」
 「……うん」
 結局、景のこの言葉に負けて頷いてしまう。ああ、好きな人に勝てる人間なんて存在するのだろうか。
 「歩いて帰ろうぜ」
 「は? この寒い中歩いて帰るの!?」
 「うん」
 彼は、自由人だ。自由とよりもバカと言える。いつも自分の都合ばかりで周りのことは何一つ考えていない。
 「効率悪すぎる。歩いて帰ったっていいこと何一つないのに」
 私が文句を言いながらさくさくと白い雪を踏みながら歩く。ふと気付くと、隣に景の姿はなかった。振り向くと、俯いた景が立ち止まっていた。
 「景? 何でそんな所で止まってるの」
 不思議に思って来た道を戻る。景の前で立ち止まると、景は急に私を抱き寄せ、強引にくちづけをする。
 貪るように、欲するように、求めるように。そんな言葉が似合うようなキスをされる。思考が止まったようになり、私は無意識のうちにすべてを景に任せていた。
 唇が離れると、彼は黒い笑みを浮かべながら不敵そうに言った。
 「いいことあるじゃん。バスの中でこんなこと、ひかりはしたくないだろ?」
 「……バスじゃなくても、人が見てたらどうするの!」
 「見せつけてやればいい」
 
 私の好きな人は、自由人だ。
 黒い笑みを浮かべながら、自由に飛び回る。
 こんな男に振り回されるなんて私もおかしい。
 ——だが、この関係のままでいいと思っている自分でいる。
 一生、この男に酔いしれてしまう女も、相当バカだ。
 
 **********
 *柴田ひかり Hikari Shibata
 *島崎景 Kei Shimazaaki
 皆さんはこんな男には惚れないようにして下さいね!
 一応言いますが、景は最低野郎です。
 ひかりは可哀想な女です……
 
