コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: SANDAI ( No.55 )
- 日時: 2014/11/23 21:02
- 名前: いろはうた (ID: 5obRN13V)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
- いろはうたは、どうやら最近、禁断モノがマイブームのようです…… 
 ちなみに、この話の登場人物の名前の由来は、トルコ語で
 ラハナ→キャベツ
 ムスル→トウモロコシ
 オレン:イェリ→遺跡
 メルヴェ→フルーツ
 ……きっと名付けた時のいろはうた、おなかがすいていたんですね……(遠い目
 ごめんね墓書……
 知ってると思うけど、いろはうた、ネーミングセンスないのよ……
 次のお題は、「羽衣」「花弁」「香」
 〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
 転
 *あの時から早くも一月がたった。
 ラハナにわかったのは、イェリが変な人であるということだ。
 イェリは毎日ラハナに会いに来る。
 皇子としての執務や軍隊長としても隊務で忙しいだろうに、
 欠かさずラハナの部屋を訪れる。
 最初は警戒していたラハナだったが、いつしかそれも消えていった。
 花瓶にささっている一輪の花を引き抜くとそっと髪にさして飾ってみた。
 先程イェリが部屋を訪れた際に、手土産として持ってきた可憐な白い花。
 庭で腐るほど咲いていたからおまえにやる、と言う台詞と共に。
 この花は、ラハナの国ではめったに見られない珍しい品種だ。
 この国では違うのだろうか、と棘や虫が綺麗に落とされた花瓶にさる残りの花々を見る。
 どう見てもよく手入れされたものにしか見えない。
 本当に変な人だ。
 敵国の王女に毎日会いに来て、花まであげて、でも手は出さない。
 何がしたいんだろう。
 コン、カンカン、コン
 この独特の扉のたたき方。
 メルヴェ王国流のものだ。
 「お茶をお持ちしました」
 扉の向こうから静かな低い声が聞こえた。
 ああ。
 ほら。
 期待などしなければよかった。
 「どうぞ入ってください」
 失望を隠し、自ら立ち上がって扉を開ける。
 茶と菓子を載せたお盆を持って召使が入ってくる。
 珍しい。
 いつもお茶を持ってくるのは侍女なのに、今日は男の人だ。
 不思議に思いながら扉を閉める。
 「ラハナ!!」
 背後から抱きしめられ、身体が硬直する。
 ……この声。
 この高木の焚き染められた香り。
 「む、ムスル兄様……?」
 おそるおそる背後を見やると、すぐ近くにムスルの顔が見えた。
 一月ぶりに見たムスルの顔は少し痩せたように思える。
 そのしなやかな体はオレン帝国の召使の服が包んでいる。
 変装をしているようだ。
 ただただ状況が信じられなくて目を丸くしかない。
 「ぐずぐずしてはいられない。
 早急にここをでよう」
 「え!?」
 短い時間の間たくさんのことが起こりすぎて頭がついていかない。
 ここを出る……?
 「何を驚く。
 メルヴェ王国に帰るんだ」
 「し、しかし、イェリは、私がここに残ることがみんなの命の保証になると……!!」
 「名を呼びあうほどの仲なのか……?」
 急に平坦になったムスルの声に驚いて彼の顔を見上げる。
 その目。
 何と言い表したらいいのだろう。
 「……どこまで手を出された」
 兄が何を危ぶんでいるのかがわかり、瞬時に顔が熱くなる。
 「な、何もされておりません!!」
 「……間に合ったということか。
 よかった」
 ムスルの心からの安堵のため息が額をくすぐる。
 この人は昔から少し過保護なところがある。
 そう思っていたら瞳を覗き込まれた。
 真剣なまなざしに言葉を封じられる。
 「ラハナ。
 こんな時に伝えるのも野暮というものだが、今、伝えよう。
 ……おれは、おまえを好いている。
 妹としてではなく、一人の女性として」
 頭を重いもので殴られたかのような衝撃。
 ムスル兄様が……私を……?
 ムスルの手がラハナの手をそっと掴んで包み込んだ。
 大きなて。
 剣ダコが目立つその手はいつだってラハナを守ってくれていた。
 「メルヴェ王国に帰ったら、おれと婚儀を挙げてほしい。
 異母兄妹の結婚は許されている。
 ……ふたりで、メルヴェ王国を再建していこう」
 真面目なムスル兄様。
 この人が冗談でこのような口にするような人じゃないことぐらいラハナにはわかる。
 「返事は後でかまわない。
 ……とりあえず、ここを出よう」
 呆然としているラハナを抱き上げるとムスルは部屋を出て走り出した。
