コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Sweet×Sweet ( No.5 )
- 日時: 2014/11/14 16:55
- 名前: ヒナ (ID: SK5u95ln)
- 参照: 青春の喜び
- クロッカス 2 
 「はよーっ!」
 そして、最初に戻る。
 「おはよ……」
 蓮は私を追い抜くことなく、私に歩幅を合わせて歩く。
 私は歩幅が狭いから蓮はなんだか歩き方がぎこちない。
 でも、私に合わせてくれているのが、なんだかうれしかった。
 「ん……?」
 「ん、どうしたの田中さん?」
 頭の中の疑問符が口に出てしまった。
 蓮は心配そうにこちらを見ていて、私は誤魔化すように、何でもない、と言った。
 ——全然何でもなくない!
 “うれしかった”
 ——なんで、そうなる!? 男子が隣に並んでるのに。なんで?
 私はその答えを出す前に、思考を振り払うように、歩幅をわざと広げて速足で歩いた。
 *
 「あ、優奈おっはよー!」
 「おはよ」
 教室に入ると、葵が笑顔であいさつ。
 私も思わず笑顔になる。
 葵の笑顔はなんだか、こちらまで笑顔になる効果がある。
 とっても、不思議。
 でももっと不思議なのは、葵がにやにやしてること。
 「どうしたの? ニヤニヤして。気持ち悪いよ?」
 葵の後ろの席にカバンを置きながら、そう問う。
 「ええ〜? いやぁ、一日でなにがあったのかなーって思っただけだよ〜?」
 それと、さらりと酷いこと言ってるよ、と付け加えた。
 「何のこと?」
 私は葵の指摘を無視した。
 ちょっぴり昨日の仕返し。
 でもやっぱりいじわるしてるみたいで、罪悪感。
 だが、葵は待ってました、とばかりに目を輝かせる。
 「またまた〜。だって朝から二人で仲良く登校でしょ? 絶対昨日何かあったでしょ?」
 「ええ!? ち、ちがうよ」
 私は教室の端の席で本を読んでる蓮をちらちらと見ながら反論する。
 「怪しいなぁ〜」
 「何にもなかったってば!」
 *
 その日の放課後。
 文化祭実行委員の仕事をしていた。
 私がなったのは、大看板作りだった。
 校門に飾る、大きな看板だ。
 去年の物は何者かに壊され、今年どうせだから新しく作っちゃおう、ってことなった。
 修復を最初に考えない今年の実行委員長はなんだか心配だ。
 でもそれよりも心配なのは、一緒に作る相手が、女子じゃないってこと。
 「よし! じゃ、頑張ろうね、田中さん!」
 シャツの袖をまくって寒さを感じさせない、元気な鈴木蓮。
 ああ、もう。実行委員すらいやなのに、なんで男子と一緒に……?
 蓮は、発砲スチロールを電動のこぎりで【南川祭】の文字に切っていく。
 私の学校、南川高校の文化祭と言えば、質の高い模擬店に、毎年大盛況の舞台が有名だ。
 そんな南川祭の大事な看板。
 それを下書きもなしにすいすいと切っていく蓮。
 ——間違えちゃわないかな……?
 と心配そうに見ていると、電動のこぎりを止めて発砲スチロールを持ち上げる。
 「ほら」
 といって私に投げる。
 私は慌ててそれをキャッチ。
 軽く、頼りない感触のそれは『南』の文字になっていた。
 角もはねも綺麗に切られている。
 「うわぁ……こういうの上手なんだね、鈴木君って」
 そういって、蓮をみると真剣な表情で切っていて……。
 なんだかそんな初めて見る表情に、ドキドキしてしまっていた。
 ——なななっ! 私なんでこんなにドキドキしてるの!?
 「どうしたの? 田中さん」
 「うえああっ!?」
 突然話しかけられて、びっくりしてしまい変な言葉が出てしまう。
 蓮は私のそんな返事に吹き出して、笑っている。
 さっきの顔はなんだか嘘みたい。
 「あははっ。じゃ、はじめちゃおう」
 私は若干笑われたことに恥ずかしがりながら、頷いた。
