コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Sweet×Sweet ( No.6 )
- 日時: 2014/11/16 17:40
- 名前: ヒナ (ID: 03lnt/I/)
- 参照: 青春の喜び
- クロッカス 3 
 「ねえ、田中さんってさー……」
 どきり、と胸が弾む。
 けれどそれは、緊張から。
 男子と2人。
 そのことが、私に緊張と、不安を募らせていた。
 今、私と鈴木蓮は大看板の作成をしていた。
 大きな紙に『南川祭』の文字を貼り、その周りを装飾していく。
 簡単そう、と思ったけど、これがなかなかに大変。
 私は蓮が作った飾りをただ糊で張り付けていくだけ。
 ちら、と前を見ると蓮が器用に花を作っている。
 「鈴木君って、器用なんだね」
 何気なく、つぶやいた。
 「あ、うん。作ったりするの得意」
 蓮は私の方をみながらそう言った。
 手は動かしているから、本当に得意なんだな、と感心してしまう。
 「そっか、いいね。私……こういうのほんと苦手だから……」
 「簡単だよ……一緒にやる?」
 「えっ! いいよっ、だって紙とか無駄になっちゃうし!」
 私は顔を上げてそう言った。
 そこで、はた、と気づく。
 ——私……男子と、普通にしゃべってる……?
 いつもなら、かちんこちんになって言葉がつまるのに。
 今はすらすらと言葉が出ている。
 私は蓮を見つめていた。
 ——不思議だ。こんなに近いのに、全然怖くない。
 すると蓮が私の視線に気が付いたのか、こちらをみて不思議そうな顔をする。
 「どうしたの?」
 私は、見てたことが見つかってしまってわたわたしてしまう。
 「な、何でもないよ!」
 私は慌てて花を紙に貼ろうとする。
 しかし、そこで私のどんくささが出てしまった。
 「痛っ……」
 手にピリッとした痛みを感じて、手を見ると人差し指に赤い血がにじんでいた。
 「ん? どうしたの、田中さん。って、血ぃ出てんじゃん!」
 私の一言を聞き逃さなかった蓮は、私の手を見ると慌てて言った。
 「え、あ……いや。大丈夫……なはず」
 本当は結構痛かったけど、こんなかっこ悪いとこ見られたくない。
 けれど、蓮は私の手をつかむと、かして、と言って引っ張り———。
 「ひゃっ!?」
 人差し指に暖かく柔らかい感触がして、傷がちょっぴり痛む。
 「な、何して……!」
 蓮が人差し指をなめたのだった。
 私は頭が混乱してしまって、ようやく問うた。
 しかし、蓮は私を見て、
 「消毒」
 と舌をちろっとだして、イタズラっぽく笑った。
 「〜〜〜っ!」
 私はドキドキして、はずかしくて、何も言えなかった。
 さっと手を引っ込めて、ちら、と蓮をみる。
 蓮は耳を紅くして、口を手で覆っていた。
 「ね、ねぇ鈴木君……ってさ……」
 どきどき、体全体が心臓になったかのように激しく波打つ。
 「………………好き」
 私が問うよりも早く、蓮がそう口にした。
 「え……?」
 私はというと、さっきよりもドキドキしていた。
 蓮は、私がそういうと、自棄になったように——
 「田中さんの事……いや、優奈の事、すっげー好きだ!」
 と、言った。
 顔も、耳も、真っ赤にして、全然男子らしくない。
 でも————私にとって他に居ない男子。
 「いつも、言わないだけで可愛いと思ってる」
 蓮は私がただでさえ、これ以上ないくらいドキドキしてるのに、まだことばをつむぐ。
 蓮も私も窓からさしこむ、夕日のように顔を紅くした。
 「へ、返事は……いつでもいいから…………」
 私が蓮の顔から視線を逸らすと同時に、蓮は言う。
 これは、蓮なりの気遣いなのだろうが、それは杞憂だ、と私は笑う。
 「私も…………好き」
 *
 不器用同士の、不器用な恋愛。
 それは——きらきらと輝く青春のよう。
 2人だからこそわかる、青春の喜び————。
