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- Re: EUREKA ( No.18 )
- 日時: 2014/12/23 23:02
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
 「……なんだか申し訳ないな」
 「sense of sin(罪悪感)がないと言ったら大嘘になるけどね」
 「本当に良いのかい……? 悪いねぇ」
 木製の荷車の後ろで豪雷と鈴芽の間で風蘭がお昼寝タイムに入っており、その少し離れた所から年配の女性が前の方を見ていた。そしてその前の方では、————詩音が馬の手綱を引いていた。
 この状況になるまでの経緯を話すと、数分前に逆戻る————。
 4人は詩音の言った通りに歩いてゼウスへ向かう。
 「むぅ……」
 「おや、そろそろ風蘭はお昼寝の時間ですか……」
 「風蘭って何歳?」
 「1歳ぃ……すぴー……」
 豪雷は「1歳って何だ」と思ったが、そのままドリームワールドへ飛び込んだ風蘭を支え、そのことは忘れることにした。
 その直後、前方からドンガラガッシャンと眠気も吹っ飛ぶような音がした。ただし風蘭は起きなかった。
 「大丈夫ですか?」
 「おやおや、見られちまったかい」
 「はい。何があったのですか?」
 「馬がそろそろ飯の時間なのに、もう食い物がなくてねぇ……。ここからゼウス国までまだまだだってのに」
 「風蘭はお昼寝タイムで馬は飯タイムですね。良いですよ、ドングリ程度なら持っています。なのでゼウスまで乗せて行って下さいませんか?」
 「助かるねぇ……。あと、あたしゃまだ馬の操縦が苦手でねぇ……」
 そして詩音は眉間ピクピクの冒頭である。
 詩音は家の事情やらなんやらで乗馬などに心得があるため、馬を容易に操る。
 「そこを右。そしてそこを左に——」
 「わかりました。……速度を上げても?」
 「別にかまわないさ。馬の恩人だからねぇ」
 「ありがとうございます。では——」
 浮遊感と共に鈴芽と風蘭が横倒しで転倒し、豪雷がおもむろにキャッチすると言う「わあ、これってもしかして青春?」みたいな状態に陥る。案の定、年配女性には面白そうな目で見られていたが。
 だが本人たちはそれどころではない……。
 「すずめ……っ、早くどけ。重い……っ!」
 「おも……失礼な! これでもあたしは……!? 何言わせてるのよ馬鹿!」
 「俺は無実だ!!」
 2人は風蘭を挟んだまま口げんかを始めるが、それでもなお起きない風蘭のしぶとさ。そして声は聞こえているのにスピードを文字通り緩めないと言う詩音の鬼畜さ。
 だが、一応その詩音にも考えはあった。
 「みなさん! 声を出さないで下さい!!」
 直後、強い衝撃音と共に、荷車が激しく揺れる。
 少ししてから、詩音が
 「では、行きましょうか」
 と声を出す。
 ——その時、声の主の手の平で消えた漆黒の空間を見た者はいなかった。
