コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.239 )
- 日時: 2016/08/06 14:50
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
 今回の任務は町の壊滅。そんな事を出来る訳がない。
 この組織の目的はそのようなつまらない事ではなかった筈だ。無論断った。私は組織を抜けるだろう。
 詩音に迷惑を掛ける訳には。
 時々、玩具を破壊して笑みを浮かべる詩音を見る。こころなしかエーテルに異常を感じる。
 命を狙われる。想定内ではあったがここまでとは。下手をすれば詩音の命も危険だ。否、既に危険そのものだ。
 出来る限り外出は控えて欲しい。雷獣の友人が出来たらしい。笑顔が増えたことは嬉しく思うが、始末しなければ。
 これ以降日記を書くことはないだろう。
 私はゼノの元幹部。危害のない組織と思われがちだが真実は違う。ゼノという神を信仰するそれは、魔王と月黄泉。
 これを手に取った者は我が息子へ伝えて欲しい。
 愛している、と。
 「……」
 「……」
 「? 血反吐を吐けば良いの? ですか?」
 「やめろ頼む」
 粗方読み終えた実の息子の感想に色々と恐怖するもう1人の人格。だが主人格様も語彙力が微妙に足りていない。
 「はああそういう感じでしたか……、ふむ。へえ、ゼノの狙いは魔王と蓮ですか……、困りましたね」
 「お前なぁ……」
 読んでいる間もBGMのようにピーピー鳴いていたシアンは軽く音を立てて窓から飛び出した。
 部屋が妙な静けさに包まれる。
 「もう、いないんです。この世には。今ここで生きていることが大切なのです。今の私にとって」
 「……あっそ」
 閉じた本を一瞥し、シルアは詩音に向かって笑みを浮かべる。
 「そんなお前に悲報だが、祭りメンバーがピンチだぜ」
 「は? 抉り出すぞ貴様」
 「俺お前に教えてやった身!?」
 「関係ないでしょう」
 「理不尽ッ」
 本当に理不尽なマジギレである。
 *
 「……おい、起きてくれ」
 目の前で揺れている薄緑の髪の毛。少年は深緑の目を薄く開く。
 「起きた」
 「見たらわかる」
 埃が溜まっている。薄暗く、上にある窓から橙色の光が差し込んでいる。背後にはすやすやと眠りこけている少女。腕と足が縄で縛られていた。
 「ここは?」
 「どこでしょーか☆」
 「……」
 地面を叩く。薄い。声が聞こえる。物音も。
 「建物の、少なくとも一階ではない……か」
 「真面目に解析しないで……?」
 「えっ? すみません」
 デジェルは小首を傾げる。魔王ことアステルは半ば諦めの表情で溜め息を吐いた。
