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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨の社 ( No.2 )
- 日時: 2015/03/18 21:28
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: De6Mh.A2)
 「いいねえ、雨ってのは」
 縁側で、
 そんな事を呟く、夕方、雲量多し。
 威勢の良い雨が、神社に叩きつけられていた。
 よっ、と下駄を履き、深呼吸をすると、懐かしいような雨の匂いがする。
 「まぁ、こんな雨ん中散歩するのも悪くはない……ってか」
 歌うようにしながら、境内を見て回る。
 歩くたびに、ばしゃ、と水が跳ねた。
 鳥居、参道、手水舎——
 後、燈籠————お?
 ……立ち止まり、自分以外の足音が聞こえることに気づいた。
 青みがかった黒色の眼を、凝らした。
 何かがいる。何か——
 「……そこか」
 少しの笑みさえ浮かべて、
 呟くやいなや、気配のする方向へ歩き出す。
 「それ」の正体が、分かった。あどけない少女であった。
 しかし、今は固まったように、目を大きく開けたまま、突っ立っていた。
 「……珍しい来客だな、迷子か?」
 少女と目線の合う様に屈んで、話しかけてみる。
 あ、と少女が声をあげた————瞬間。
 ああ、どういうことだ。踵を返して——思い切り走り出した。
 「こら待ちなさい、怪しい人じゃないから!!!」
 怪我でもさせたらことだ。俺も全力で追い駆けさせていただく。
 ——ご、ごめんなさいぃ!!
 その子はそういい終わるか終わらないかの内に——思い切り、すてんと、こけた。
 うぐぅ、という呻き声をあげて、立ち上がろうとするので、慌てて止めた。少女の黒い髪が、はらりと水に浸かる。
 「大丈夫か、あんた……」
 着ているブラウスも、えらく長いスカートも、悲惨なことになっていた。水で。
 苦笑しながらとりあえず声をかけ、どうするかな、雨に濡れない所まで連れて行くか?
 考え込んでいると、少女は、ぐったりしたようすで、俺の甚平の裾をぎゅっと掴んだ。
 あ、つい、あつい…………あ、
 「あつい?」
 「……うわ、これ本物だわ」
 少女の額に手を当てると、確かに熱っぽい感じがした。
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