コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.17 )
- 日時: 2015/10/04 18:42
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: KLpo2fZJ)
- 9day —— in the moring —— 
 「わぁっ、素敵なドレス!」
 ふふっとうっとりとした目で彼女はメイドによって着さしてもらったドレスを微笑みながらいった。
 ブリリアント様が今夜のために用意してくれたというドレスは淡い水色のレースがふわっと腰から付いており、それより濃いめな水色を基調とした肩だしドレス。
 手袋も付いており、婚約者候補は嬉しそうにはめていた。
 今日の麗様は少し高めな横ポニーテールでくるくるっとカールしている。薄化粧もしていて黙っていれば美しいお嬢様であった。
 「……お似合いですよ、麗様」
 等身大の鏡を先ほどから見ている彼女の両肩に手を置き、耳元で囁く。
 「ひゃぁ……タク」
 ぎゅっと変な感じに目を思わず閉じてしまう。
 褒めてくれるのなら普通に正面から言えばいいのにと思いながらありがとうとお礼を言う。
 「……」
 本当、他の方々に見せるのが勿体ないくらい……って俺はなんと言うことを。
 これ以上、変な考えが浮かばぬよう、麗様から離れる。
 「タク……?」
 そんなタクの様子に少し不思議がる私だが、まぁ、タクの事だから大丈夫だろうと思ってしまう。
 「なんでもありません、今日はパーティーでしょう?早くご準備を終えてブリリアント第一皇子に合わなければ」
 苦笑しながらそういう彼はなんだか何かを隠しているように見えた。
 だけど、そんな少しの変化に私は何も疑わず、うんとあいまいに返事をしていた。
 いろいろな準備を終えて、大理石の床を歩いていると、後ろから皮肉な声が上がった。
 「うわぁ、馬子にも衣裳。……これじゃあ、騙される奴は馬鹿みたいにだまされるよなぁ」
 はははっと短い嘲笑う声が聞こえてその姿を現す。
 「チッ……サイトか」
 小声でそう私はつぶやくと、サイトの方を向く。
 「これはこれは、サイト様。ご機嫌麗しゅう」
 ほほっと短くこちらも高く笑い声を上げながらそういう。
 「……兄様がどうせ選んでやって、着させたんだろ?兄様のセンスでどうにかなっているけど、元の素材がこれだから……、あまり引き立てられてないなぁー」
 くるりと私の周りを歩いて眺めるように言った。
 背の低い彼はどこかの小学生のようで可愛らしく思えるが、出てくる言葉がこんなじゃ、可愛くない。
 「どーも。どうせ私ですよ、どーせ」
 ふんっと鼻をならして、タクに行きましょう?ととことこと、先を急ぐ。
 すると、なぜか後ろからサイトがついてきて、
 「……あ、待てよ、麗」
 「……まだ、何か!?もう、皮肉を言うのもやめてくださいよ」
 涙目になりながらそう振り向いて言った。
 そう、ホントは、辛かったのだ。悪口を言われて嬉しいはずがない。
 うたれ弱い私は、心の奥でそれを我慢していたのだ。
 「……ごめん。……その……、お前がきれいすぎて」
 ぼそっと何かを言ったが、うまく聞き取ることができずに私は先を急ぐように
 「……すいません、私、サイト様にかまっているほどの時間はないので。
 これで失礼しますね」
 ぷいっと背中を向けると、サイトはまた何かを言いかけたが、私は気にも留めず、ショウ様の部屋へと急いだ——
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.18 )
- 日時: 2015/10/04 18:49
- 名前: ・ス・ス・ス{ ◆93nWkRSozk (ID: KLpo2fZJ)
- 9day —— in the afternoon —— 
 「すごい。似合ってますよ、麗さん」
 頬を軽く染めて、ソファーにくつろいでいた彼は私を見ると、すぐに立ち上がって私を抱きしめる。
 「ぁ……」
 その瞬間、ふわっと彼の甘い金木犀のような香りが漂って、思わずうっとりしてしまった。
 「僕の見立てはあっていて本当に良かったです」
 ショウ様は、そういうと私を自分の隣に座らせて、愛おしそうに眺めた。
 うう……、なんかこれ……恋人みたいッ。そんなふわふわと甘い空気に酔わされ、私は赤面して彼の顔を見つめていた。
 「……顔が赤いですよ。……熱ですかね?」
 彼はそんな私を心配して、おでこに手を当てて自分との熱を測った。
 だめ、だめっ、そんな……。私の頭が黄色い信号を出している。
 恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだし、このままじゃ、キュン死してしまう。
 「だ、大丈夫ですッ、ほら、こんなに元気元気!」
 ショウ様の手を掴み、自分のおでこから遠ざけると、ガッツポーズをして元気な証拠を見せた。
- Re: A quirk of fate〜運命の悪戯、君に届けたい〜 ( No.19 )
- 日時: 2015/10/18 18:06
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: KLpo2fZJ)
- 「そう?ならよかったけど」 
 不思議そうにショウ様は首をかしげて、私から離れた。
 離れたって言ってもまだ、密着したままだけど。
 でもどうして急にこんな態度を……と気になっていたことを頭の中に思い浮かべる。
 「ショウ様はどうして私に……こんなことするんですか……?」
 思い切って聞いてみることにしてみた。
 ショウ様は少し目を見開いて驚いたようにする。
 「どうしてって……麗さんが好きだから?それにこういうこと、しないと貴女は僕を意識しないだろう?」
 少し瞼を伏せて悲しそうにする。
 そうなのだ。彼女は決して僕を恋愛対象として見なかった。僕を目の保養みたいな憧れの対象として見ることはあっても、彼女は僕を恋愛対象としては絶対に見てくれない。だから僕は……こういう甘い雰囲気を醸し出すしかなかった。それに、先ほどまでいたタクに対しての牽制でもあった。
 「なんであったばかりなのに……恋愛感情が湧くのですか……」
 今度は彼女の瞳が揺らいでうるんだ。
 遊ばれているとでも思っているのだろうか。そんなこと、ない。僕はいつだって真剣なのに。
 「……あの森で君と出会ったから。あの時の君は美しい天使のようでかわいかったし、幼い時に聞かされていた話と重なってね」
 今思うと、とっても不思議に思える。
 昔から伝わっている話がこうも本当になってしまったなんて。
 僕は、あの時……彼女と会った時を思い出した——
 『皇子様、今日はどこにいかれるのです?』
 「今日は、運命の森のほうへ行ってみるよ。あそこに小人がこの間、いたんだ」
 いつも軽装である僕は、公で着る衣装を纏わり、出かける用意をしていた。
 「小人ですか……」
 よくあの森では小人が現れる。小人が現れる理由は、何かの知らせ、どこかの国の使いの可能性が高い。だから僕は急いであの森に行った。
 「……このへんだったはずなんだけど……」
 森を散策していると、どこからかなき声が聞こえた。
 これは……、女性の声か……と思いながら声に近づくと、小さな背中が見えて、彼女とであった。
 少しずつ僕は、横顔をみる。気づかれないようにそっと近づくと、彼女は黒髪で、毛先のほうがくるんと巻き髪になっている。そうしてうるんだ瞳からは大粒の涙がこぼれていた。その白い肌は紅潮していてなんとも色気が漂っている。
 でもその色気は、次の声で破られた。
 「ぎゅるるうう……」
 それは、おなかの鳴き声で先ほど昼食を済ませてきた僕は違う。
 必然的にだから彼女のものと捉えることができた。
 「おなか、すいているんですか」
 僕は思わず、それにくすっと笑ってしまったので、思い切って声をかけてみる。はいと返事が返ってくるのを予想していた僕はまた次の返事で驚いてしまった。
 「て、天使…」
 天使って僕は人間なのに。この人は……ふふっ。
 面白い人なのにどうしてこんなにも魅力的に見えてしまうのだろうか。
 きっと、彼女が思いもよらないことをしてくるからに違いない。
 そして、この人が幼いころに聞かされた話に出てくる女性とぴったりと重なって運命だと感じてしまったからだ——
 「昔に聞かされていた話?」
 彼女は不思議そうに僕に問う。
 でも僕は答えなかった。だってそれは僕がどんなに愛しているかがわかってしまうから。
 どこかこの思いの程度を知られたくなかった。もう自分から言ってしまっているのに、おかしな僕だと思いながら薄く笑って彼女の髪をなでていた。
 きっと、僕の思いに少ししか答えてくれない、気づかないようにしている彼女に嫉妬してしまったに違いない——
 俺は、先ほど見せられたショウ様の牽制に戸惑っていた。
 思わず飛び出してきた自分にも驚いてしまっている。
 「たいちょー!!」
 大理石で作られている渡り廊下をずんずんと歩いていると、部下が何人かひきつれて話しかけてきた。
 「おお、マルセルか」
 久しぶりにみる部下のマルセルに思わず笑みをこぼす。
 マルセルは俺の一番部下で気に入っているものでもある。
 「……隊長、どうしたんですか?そんな荒い歩き方をされて」
 俺に近づいてくると、心配そうにうるんだ瞳で俺の顔をのぞきこむ。
 マルセルは俺より10センチほど身長が低く、比較的華奢な体つきをしている女顔である。必然的に上目遣いになったそれは、壮大な効果を俺にもたらす。
 「……心配無用だ。少し自分に戸惑っていただけで」
 顔が少し熱くなるのを感じながら答える。
 「そうですか?……俺たち、隊長の味方なんで、もしよければ相談されていただいてもいいんですよ!?」
 ぎゅっと俺の手を握ってしてほしい、いえ、ぜひと言っているかのように瞳をきらきらさせていうものだから、俺はそれに負けて相談に乗ってもらうことにした。
