コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 初恋?何それおいしいの? ( No.11 )
- 日時: 2015/07/13 19:32
- 名前: まかろん (ID: syFyy808)
- 扉を開けてみると、そこは掛け声とシューズの音が鳴り響くオレンジ色の世界。 
 「でかい、広い・・・。」
 バレーのコート6面は張れそうな体育館、左側に女子がバレーボールを持って集まっているのが見えた。
 よく見てみると1人ジャージ姿の男子も交じっているのがわかる。
 あいつか、先生の言っていたやつは。
 高揚が抑えきれず、走り出した。
 「あのっ。」
 一斉に女子の視線が刺さる。 怖い。
 「え、えっと、ここバレー部ですか・・・?」
 「そうだが、何だお前も入部希望者か!?」
 おそらく部長と思わしき人物が笑顔で答えてくれた。
 「は、はい。」
 「そうかそうか!いいぞ〜どんどん来い!」
 豪快に笑いながら俺の背中をたたいた。 痛い。
 「お前のほかにもな、入部希望者がいるんだよ。ホレ!」
 手を差し伸べたその先には、先程の男子生徒がいた。
 遠くから見たときは、表情までわからなかったのだが、随分と仏頂面をしている。
 「俺は男子バレー部です。」
 更に目つきを悪くさせ・・っつーか睨まれた。小さくだが舌うちも聞こえた気がする。
 第一印象最悪だな、こいつ。
 「なはは!お前はまだ『男子バレー部同好会』だろ!同好会は体育館使用できません!」
 「えっそうなんですか!?」
 「おうよっだから、この心やさしい北竜部長が練習に混ぜてやろうというのに!」
 あ、やっぱり部長か。外れてなかった。
 「・・・女子の中に入るとか・・・。無理。」
 ぼそっと男子生徒が言った。
 「ん?なんだって?ちょっと聞こえなかったな〜?」
 「だからっ」
 「あぁぁあや、やります!やらせてください!」
 やばいと思った瞬間に口が動いていた。
 「な!?お前も!!」
 男子生徒の頭を強引につかみ、無理やり下げさせた。
 「は?!なんなんだよお前。」
 「いいから!」
 この際文句はまとめて後で聞く。こいつだって、バレーやりたいはずだ。
 その証拠に、まだ見学期間だというのにジャージに着替えて、シューズまではいてる。
 というか、貴重な人員を失うわけにはいかん。
 「お願いします!」
 隣からは睨まれまくったが、やっぱりバレーやりたいらしい。頭を下げることに抵抗しなかった。
 「うん。よろしい!」
 「「ええっ!」」
 部長が許可してくれると、周りの女子達が動揺した。
 顔を上げると女子達が部長に抗議している。
 「本当にいいんですか部長、ただでさえうちは人数が多いのに、」
 「そうですよ、練習場所無くなっちゃうじゃないですか。」
 「てかまず男子はちょっと・・・。」
 と口々に言っている。
 「まぁまぁ!こんなにやりたいって言ってんだし!こまごました問題は大丈夫っしょ!」
 部長が笑って答えると、周りの女子達はため息をつき始めた。
 「これだから部長は・・」
 「去年も入部希望者全員入れてたし・・・。」
 それは卑下しているわけでも、馬鹿にしているわけでもなく、良い意味で諦めているように聞こえた。
 「ホラ、男子だからさパワーとかありそうだし、うちらの良い練習相手になるかもよ?」
 「ふむ、それは一理ありますね。」
 「ねぇ!君ら経験者?」
 1人、ポニーテールの先輩が聞いてきた。
 「小4。」
 「俺は小3からです。」
 女子達から感歎の声が上がった。
 だが隣からまた睨まれた。一体何なんだこいつ、ヘビか。
 「ホラ!ね、みんないいかな?」
 部長が少し上目づかいをした。すると、女子達はいつものことのように、
 「いいんじゃないですか?」
 「てか決定権は部長にあるんだし、」
 「そうそう!うちらが反論して通ることないもんね〜。」
 「え、そうだっけ?」
 今度は笑い声が広がった。
 良かった。一時はどうなることかと思ったが、大丈夫そうだ。
 しかし、こういう女子の集まりには暗黙のルールとかありそうだが、今の雰囲気だとそれもなさそう。
 今の部長の性格のおかげなのか、少なからず信頼関係というのは見てわかるほど、仲がいい。
 すごいな、これだけの人数を1人でまとめて。ざっと40人くらいいそうだ。
 「つーか君らホントにバレー部でいいの?」
 肩につかないくらいの髪を伸ばした女子が話しかけてきた。
 その言葉の意味を考えていると、
 「だって、こんなにいる女子の中に入るって、恥ずくない?」
 「ちょ、みっちゃんそういうこと言わない!」
 あわてて部長が止めたが、それを言ったら終わりでしょう、センパイ。
 こっちはそれ承知でお願いしたのに・・。
 はっ、やばいプライド高い隣のやつがどなり散らしすか・・?そ、そこまでしないよな・・?
 おそるおそる隣を見たが、案外すっとした表情だった。
 相変わらず目つきは悪いが。
 「もう腹括ったんで。」
 その一言だけ言った。 良かった。思い過ごしだったか。
 「おお〜かっこいいね〜。」
 先輩が茶化すと隣のやつが少し下を向いた。照れてんのか。 本当に何なんだこいつ。
 「腹を括ってくれたところ申し訳ないんだが・・・。」
 「はい?」
 「見学時間終了です!」
 部長が指差したその先には時計があった。4時50分を指している。
 「1年生は5時下校です!」
 「なっ!」
 ああ、そういやそうだったな、と思ったら隣がめっさ驚いていた。
 「練習、できないんすか?」
 「うん、残念だけど。」
 どうやら知らなかったらしい。あからさまに落ち込んでいる。 随分バレーが好きなんだな。
 「それと、君らはまだ『見学』だから、練習に参加できるのは2日後、かな?」
 今度は口をあけて絶句している。 どんだけバレーしたいんだ。
 「それじゃ気をつけて帰ってね〜。」
 たくさんの先輩方に見送られ、そのまま体育館を後にした。
 目つきの悪い男子生徒とは通学路が違うらしく、特に話すことも無いまま帰宅した。
