コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.2 )
- 日時: 2015/09/21 12:48
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
- #1 出会いの日 
 今思えば、出会いはおたがい良くはなかったな、と思う。
 あれは、いつの頃だったか。
 暑くもなく、寒くもない、穏やかな天候だった。
 晴れやかな空の下、シュガーの心の中は地獄にでも落ちたみたいに、どんよりとしていた。
 シュガーは、花を売りに町へ出かけていた。
 黒いローブで体を隠していたのが悪かったのか、三人組のチンピラに目をつけられてしまった。
 「お前、ちょっと待ちなァ?」
 三人のうちの一人が、低くドスのきいた声で話しかけてきた。
 シュガーは客かと思い、笑顔をつくり顔をあげてみる。
 その笑顔も、現実を見れば一瞬で剥がれ落ちてしまうのだが。
 それもそうだ。
 やったー。お客さんだぁ。と顔をあげればこわいお兄さん三人組だったのだから。
 「ぇ…っと、あの、わたし、お金…持ってませんよ??持ってるのは純粋な心と夢くらいで……」
 わたわたとして、変過ぎる言い訳が口からこぼれる。チンピラはそんなシュガーに
 あきらかにイラついた反応をみせる。
 「う、うるせぇ!花でもお前の髪でも、金になるもんなら何でもいいんだよ!!」
 「お花、好きなの…?見た目によらず、かっ、可愛いんですね……?」
 本人は褒め言葉のつもりで言ったつもりだが、はたから見れば挑発しているようにしか聞こえない。当然その言葉が彼らの堪忍袋をキレさせる引き金となったのだから。
 もともと、あまり人とのふれあいをする経験がなかったのだ。
 学校にも行ってなかったから、人の気持ちを考えることが苦手だ。許してほしい。
 「よぉーし!よーく、わかった!おまえは、オレらにぶん殴られてぇらしいなぁ、オイ!?」
 思ってもみなかった衝撃発言に目尻が熱くなるのを感じる。
 「ええっ!?な、止めてよ!お花ならあげるからっっ」
 ***
 1、明日に続きます。
 感想とかくれると嬉しいかもです。
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.3 )
- 日時: 2015/09/16 20:32
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
- #1 出会いの日 
 チンピラの目がギロリと光る。手を大きくふりあげ、その手でシュガーに渾身の右ストレートを放つーー
 「うん、やめよーか?」
 あたりに響いた美声。
 その声の持ち主が、チンピラの手をつかんで、シュガーの前に立ちはだかっていた。
 いきなりのことで、シュガーには目を白黒させることしかできない。
 「赤茶色の髪に、琥珀の瞳ーー!!おまえ、悪人狩りのウルフか!?」
 えらくあせったような声をはりあげる。この人は、そんなにすごい人なのか。
 「そ。お前らさ?女の子を三人でイジめるって、どーかと思うけど?そんな暴れたいなら、オレが相手してやってもいいぜ?」
 「ばっ、バカいえ!!王国一の剣士にしてオオカミのおまえに、誰が勝つんだよ!」
 「ーーならとっとと消えろよ」
 そう、ウルフと呼ばれた青年は、一瞬で目を鋭くさせる。
 シュガー自身にむけられたわけでもないのに、その目の冷たさに言葉を失ってしまう。
 空気が変わるのが誰の目にも分かった。それは、チンピラも同じ。
 「す、すんませんしたアァーー!!!」
 青白い顔をして、チンピラ三人はその場をものすごい勢いで去っていった。
 ***
 「ーーぁ」
 ふ、と正気に戻り、お礼を言わなければ、とあたりを見回す。
 誰も、いなかった。
 「え、あの人はーー?夢だったの…?」
 あの人の姿は見えない。
 どこかに行ってしまったのだろうか。
 「…そうだとしても、早すぎじゃない!?」
 「うーん。でも、まぁ、彼なら可能だよ」
 服のポケットから、唯一の家族、子猫のラユが顔をのぞかせた。
 「そうなの?あの人、すごい人?」
 「うん、そうだね。王国一の剣士で、オオカミへの変化が可能な男の子だよ。その力を有効活用するために、国が兵士にひきいれたとか。で、兵士の中でもダントツで悪人らを捕まえてくるから、『悪人狩りのウルフ』って呼ばれてるんだ」
 「へぇ。ラユ、くわしいね」
 「まあね」と頭をかくラユを横目に、人の流れをみつめる。
 相変わらずあの人は見つからなかった。
 助けてくれたのに、お礼も言わせてくれないなんて、損をする性格だなぁと思った。
 明日また町にきたら会えるかな?なんて思いを膨らませながら、すかすがしいほどの笑顔をつくり、人混みにむける。
 「ーーお花はいりませんか?」
