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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.13 )
- 日時: 2016/07/09 19:23
- 名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: eLuLNElF)
- □Episode 7.5 
 ■変色
 まともな人間は、一晩眠る度に命を削り、朝を迎えた時には、毎日少しずつ死んでいく。
 それは、平等に訪れるものだ、と人間はそれぞれ認識しているから、一度は不老不死などという下らない幻想に憧れるのだ。
 だから私は、私自身の不死を毎朝、確認する。
 ベッドの脇に転がっているカッターに手を伸ばし、左手に突き刺す。
 普通の人間には存在する、死の象徴とも言える『傷み』、死の色彩である『鮮血の赤』。
 それらを感じる事の出来ない私は、毎朝思うのだ。
 今日も、死ねなかった、と。
 カッターを突き刺した左手は、鮮やかな血を滴る事も許されずに、瞬時に治ってしまう。
 いつもなら、何も思わず、何も感じず、何も考える事なんてなかったのに、今は言葉では言い表せない程の不安が、私の心を侵食する。
 不死をやっと、受け入れられて来たと思ったのに、アイツに会って、生き続ける事が怖くなった。
 そう、アイツのせいで、私の世界は変わってしまった。
 今まで平気だったものが、恐ろしくみえるように。
 だって、アイツが死んだ後、私だけが生き続ける事を考えただけで、自分を何回殺しても殺し足りない位に、心が痛い。
 蜂須 瑞貴。
 私が持つべきでないものが、一つ増えてしまった。
 『友人』という、非常に厄介で、大切なものが。
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