コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.6 )
- 日時: 2015/12/22 11:48
- 名前: 逢逶 (ID: XnbZDj7O)
- episode5 
 title 秘密
 「織さんと誠さんの馴れ初めは?」
 「…職場恋愛です」
 若干照れ臭くて、俯く。
 「ほうほう。織さんモテたでしょ?」
 山田さんの容赦のない質問に影山さんが割って入る。
 「セクハラですよ、先輩」
 「すいません。よくメンバーからも言われるんですよ」
 山田さんが笑って言う。
 メンバー同士仲良いんだね。
 あ、そういえば山田さんって…。
 「山田さんは…奥さんとの馴れ初めは?」
 私が質問すると山田さんは顔を真っ赤にして慌てている。
 その様子がどうも面白くてつい吹き出してしまった。
 「あ、笑われた。ま、いっか笑 …うーん、馴れ初めねぇ。…俺が担当マネに失恋してそれで落ち込んでる時に行ったバーで働いてて。超いい子で。結構長い間通って色々話してたら好きになっててね。告白したらokもらえて、って感じかなぁ。…ちなみに担当マネってのはメンバーの伊藤の奥さん」
 みんな幸せを手に入れている。
 私はどうだろうか。
 幸せなのだろうか。
 山田さんも辛い失恋を乗り越えて、幸せを掴んでいる。
 結婚してしまえば離婚するまで失恋などない。
 私は逃げ出せずに、もがくこともできずに、ただ苦しんでいる。
 「泣きそう…?」
 あ、いけない。
 ついしんみりしちゃった。
 「全然、泣きそうじゃないですよ」
 必死に笑顔を作った。
 成瀬さんはさっきのことを気にしているようで私とは話そうとしない。
 「織さんはお子さん欲しいって思ってますか?」
 影山さんの質問があまりにも辛くて。
 私は笑顔を向けることができなかった。
 「…どうしました?」
 「あ…、子供は欲しいです」
 「やっぱりそうですか。誠さんと織さんのお子さんならきっと可愛いでしょうね」
 「ふふ。ありがとうございます」
 私がやっと笑えた時、成瀬さんの黒髪が風に揺れて…
 いい香りが漂って来た。
 私が視線を移すと、成瀬さんのすっと整った顔がこちらへ向いた。
 澄んだ瞳に吸い込まれてしまいそうで思わず目を背けた。
 あまり高くはない背丈で、だけどスタイルは良くて。
 全てが魅力的に映るのは、私の弱いところを見た人だから。
 「織!」
 誠に呼ばた瞬間に
 また暗闇に引き戻される。
 「では行きましょうか」
 山田さんと影山さんが前を行く。
 嫌だ、行きたくない。
 咄嗟に、影山さんの服の袖を掴んでいた。
 戸惑う瞳が私を高ぶらせる。
 成瀬さんは誰にも見られないように私の手をぎゅっと握ると、何かを私の手に忍ばせた。
 誠の方に向かって行く途中、ポケットの中にそれを隠した。
 私と彼の秘密が始まった。
