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- Re: 〜Dolce〜 Tarantella【コメント募集!!】 ( No.77 )
- 日時: 2017/01/14 16:27
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
- 〜Page13〜 
 「あとどのくらいで、Baked Cheesecake無くなりそう?」
 お客さんが増えて列が出来始めた頃、店長は俺にそう尋ねてきた。
 「あと4つです」
 「OK! ありがとう」
 手を止めずに店長は素早く箱にケーキを入れる。
 けれど雑ではなく、水平さを保ちつつケーキを箱に入れる技……これは出来るようになるにはなかなかの時間が必要になってくる。
 「さっちん、こっちのお客様はBaked CheesecakeとSouffle cheesecakeを2つずつだって!」
 浦和さんが、店長に向かって指示をする。
 2つということは──あとBaked Classescakeも残り2つになった。
 「了解! にこちゃんはどんどんお客様の注文を取っちゃって!」
 店長は笑顔で、そうにこちゃんに指示をすると箱に詰めたケーキを袋に入れて保冷剤を一緒にしてお客さんに渡し「またお待ちしております」と明るくて、周りに星でも飛び交いそうな声でそう言った。
 「……いずと、どうかした?」
 潮川さんの声に、自分の動きが停止していたことを感じさせられて驚く。
 「いえ、多分なにも」
 「多分って、どういうことだよっ」
 潮川さんは俺の言葉に吹き出した。
 「すみません」
 「いやいや。店長見てたんでしょ? すごいよね……あぁやって俺らのことちゃんと引っ張ってくれるんだもん」
 ──そこまで見られていたのか。
 「そうですよね。──あの」
 俺はずっと聞きたかったことを潮川さんに質問した。
 「なんでこうやって俺みたいなのにも、気さくに話しかけてくれるんですか?」
 潮川さんは目を丸くして、……再び笑った。
 「なんでって、そりゃあ同じTarantellaで働く仲間だし、普通だろ」
 普通か。
 いいなぁこういうの……──憧れるけど俺には絶対出来ない。
 「そんな深く考えないで、今まで通りで平気だから」
 潮川さんはそう言うと、「じゃあ今日はお先に」と言って更衣室へと向かっていった。
 その背中を見つめる俺に、
 「ねぇねぇ、いずとくん! Baked Cheesecake売り切れたよ!……ってあれ?
 みなかわくんもいなかった?」
 「潮川さんならさっき帰りました」
 「あぁ!! そっか、今日早く帰るって言ってたなぁ……ありがとう! 今日はお疲れ様って言いたいとこだけどまだお客様いるからもうちょっとよろしくね!」
 「はい」
 俺の返事を聞くと、うんうんと店長は頷いて戻っていった。
 TarantellaのBaked Cheesecakeがこれからもっとたくさんの人に食べてもらえますように。
 今の俺の心には、そのことが強く刻まれたのだった。
 【続く】
 次回からは新章に入ります。
 無理やりになってしまってすみません!
 byてるてる522
