コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 雨のち晴れの恋愛模様。 ( No.14 )
- 日時: 2016/06/27 17:48
- 名前: ももたん ◆hjAE94JkIU (ID: Sb2xHYDn)
- 曇りの章 1『はじまりはひょんなことから』 
 「じゃあこれ、お願いね」
 「わかりました。失礼します」
 先生から、クラスメイト全員分のノートを預かって職員室を出る。
 大丈夫かな、と思って一人で来たけれど、ノートは結構重い。
 やっぱり誰か呼んでくるべきだった…。
 でも後悔してもしょうがない。一度引き受けたからには、流石に後戻りできないし。
 なんて前向きに考えていたけれど、やっぱり
 『ズッサァァァァァァァ…』
 ノートは落ちた。
 「…やっちゃった」
 やっぱり無理するんじゃなかった、と思いながらノートを拾う。一か所に集めて、持っていこう…としたら、上から腕が伸びて来て、ノートをもっていった。
 「えっ」
 驚いて上を見ると、ノートをもって立っていたのは、クラスメイトの井上正也君。
 「あっ、ゴメン、ありがとう。でも、大丈夫だよ。持てるから」
 「大丈夫じゃないでしょ、さっき落としてたし。いいよ、持っていく」
 「でも」
 「…じゃあ、これ、よろしく」
 差し出されたのは一冊のノート。井上君の。
 「い、一冊?そんな、10冊くらいは」
 「俺のもってってよ。それに、普通女子は無理しないよ?」
 「…ありがとう」
 流石にここまでされると何も言えなくなる。
 しょうがないから、折れて井上君のだけは持っていくことにした。
 *
 「ん、任務完了」
 「ありがとう、手伝ってもらっちゃって」
 「いーのいーのこれくらい。っていうか、美月さんもっと人のこと頼っていいと思ううよ?」
 「でも、そんなの悪いし」
 「だったら俺のこと頼っていいから。俺そういうの嫌って思わない」
 「…わかった。じゃあ今度から頼りにさせてもらうね」
 「おう。待ってる」
 じゃあねー、と言って、井上君は友達のところに行ってしまった。
 お礼の一つくらいしたかったんだけど。
 それにしても、井上君はいい人だ。
 人のことを気遣う心がある。それだけでも十分いい人だというのに、さらに相手に気を使わせない。なかなかできることじゃない。
 …でも、掛けてくれる言葉の一つ一つが、どうしてもタラシに感じてしまう…。
 い、いやいや、そんなことないわよ私。
 というか、一人一人を平等に、がモットーの私がそんなことを思っていいの?駄目じゃない。
 …タラシみたいでも、カッコいいなぁ。
 「あっ、ヤバ」
 あと5分で休み時間が終わってしまう。水筒水筒…。
 …え、カッコイイ?
 カッコイイって…井上君が、よね。
 え、そんなそんな。そんなの『好き』みたいじゃない。
 好きだなんてそんな、ないから。
 ≪おまけ≫
 「乃愛〜?おーい、もどってこーい」
 「休み時間終わっちゃうよ〜。お茶飲むんじゃないの〜?」
 思考回路がショートしそうになった乃愛ちゃんは、友達が声をかけても、目の前で手を振っても気づかなかったそうです。
 『キーンコーンカーンコーン』
 「うわっ、休み時間、終わった!?」
 そして、意識が戻ってきた頃には、休み時間は終わっていました。
