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- Re: *再恋華*(実話) ( No.15 )
- 日時: 2016/07/29 22:47
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: u5JYbeHw)
- 参照: 今は当たり前なんて思わない
- 第十話『二年ぶりの気持ち』 
 昨日から少しだけ、壱を気になっている私。
 でも、なんだか色々怖い。
 私はもう中学の頃の私じゃないし、壱のことが好きだった頃の私じゃない。
 壱も中学の頃の壱じゃない。
 私も壱も、変わった。
 壱への想いはもう、二年前に終わったのだ。
 それに私は、壱に振られてから誠と付き合ったし……。
 今更、だよね。
 あの『実は両想いだった』という噂が本当ならば——。
 今の私は、本当に今更だ。
 **
 そうして色々悩んでる間に、あっという間に放課後。
 廊下に出て階段の方へ向かうと、壱の姿を見かけた。
 ……やはり、壱の背中を目で追ってしまう自分がいる。
 すると、壱が振り返った。
 慌てて目を伏せて横を通り過ぎようとしたとき、
 「みずえま、ばいばーい」
 壱のすぐ横に居た牧葉にそう言われ、私は再び顔を上げた。
 「……あ、ばいばい」
 私は小さく手を振り返し、壱と目が合いかけたので慌てて階段を駆け下りた。
 「……はぁ」
 玄関に着き、靴箱の前で顔を押さえた。
 今更過ぎる、二年前のことなんか——。
 自分にそう言い聞かせ、靴を履いて振り返った瞬間。
 「!」
 壱がいた。
 壱はこちらに背中を向けていて、奥に居る美々ちゃんの方をじーっと見つめていた。
 ……あぁ、やっぱり壱も美々ちゃんが好きなのかな。
 美々ちゃん、可愛いしそりゃあ壱も気になるよね……。
 二年間の空白を埋めるのは、やはり難しい。
 うん、簡単にいくもんじゃないよな。
 小さく溜息をつき、学年主任がいないか辺りを見回した。
 今年から更に校則が厳しくなり、すぐスカートを注意されるようになったし、すぐ反省文を書かされることになる。
 それが面倒な私は、見つからないように学年主任がどこにいるか毎回確認して外に出てるんだけど——……。
 私は靴箱の近くのドアに寄り掛かり、身を乗り出した。
 しかし、
 「……あらららららら?」
 ドアがスライド式だったことを忘れ、思い切り体が傾く。
 「うぉ!?」
 ドアに寄り掛かっていた私は、ドアと一緒に思い切りスライドした。
 壱が近くに居るっていうのに——……っ!!
 や ら か し た
 見事にスライドした自分の情けなさに笑いながら、振り返って壱を見ると——……。
 笑 い を 堪 え て い る
 やっぱ見られてたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
 私は顔から火が出そうになる勢いで、壱に向き直った。
 「や、あ、あはは、ど、うほほ」
 「……」
 奇声を漏らしながら笑う私。
 壱と目が合うがすぐ逸らされ、壱は無言で私の隣を横切った。
 その横顔は、相変わらずの笑いを堪えた顔で——。
 「おほ、おほほほほほ」
 相変わらず奇声をあげて立ち尽くしていると、壱は振り返った。
 もう一度目が合った後、壱は前を向いて歩いて行った。
 そこで私は我に返り、口を押さえる。
 今の私——絶対顔赤い。
 恥ずかしかったけれど——。
 壱は、笑ってくれた。
 正しくは今にも吹き出しそうなその表情、だけど。
 不覚にも、ドキッとしてしまった。
