コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- umbrella
- 日時: 2015/10/15 21:50
- 名前: 小林 (ID: 5Iu.5lPh)
- 目を覚ましてカーテンの隙間から見える澄んだ青い空。 
 希望に満ちたようにも見える美しい青色。
 しかし実際は希望に満ちていることもないし、憂鬱というわけでもない。いわゆる『普通』。
 いつものようにトーストを食べ、歯を磨いてさっさと中学校へ行く準備をする。私は少し田舎に住んでいるのでバスで登校しなければならない。
 食べるのが遅いので家を出ると小走りで小さな住宅街の坂を下だり、なだらかな短い坂を越え池のそばのバス停へ着く。
 バス停につけば1、2分で一般のバスが来るのでそれに乗る。
 サラリーマンの隣に立って吊り輪をしっかり握る。
 高校生はいつも音楽を聴いていたりスマートフォンをしている。
 後輩の1年生は女子トークで盛り上がり、先輩の3年生はテストによく出そうな問題を出し合って笑っている。
 10分もたたないうちに学校のバス停に到着する。
 校門に先生が立っている。
 「おはようございます。」
 目を合わすか合わさないかくらいの気持ちで軽く通りすぎる。
 そうして私、高橋美緒(たかはしみお)の一日が始まる。
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- Re: umbrella ( No.1 )
- 日時: 2015/10/15 22:38
- 名前: 小林 (ID: 5Iu.5lPh)
- 「おはよう。」 
 少しきれいな声で言ってみる。
 「おはよう!!」
 小学校からの友達が返してくれる。
 何気ないこの挨拶も、暖かい。
 教科書を机に入れ、そばにある窓の外を見ると
 テニス部が運動場を走っている。
 「美緒」
 「きゃっ!!」
 急に声をかけられて驚いた。
 「ご、ごめん美緒」
 「あ、ごめん!!びっくりした〜」
 2人で顔を見合わせて笑った。
 この子は本田和香(ほんだのどか)。
 去年から同じクラスだった。始業式から何気ない会話で盛り上がり、
 いまどきで言う『いつメン』な存在の彼女。
 ほかの女子とは違ってほんわかしているし、笑顔がても少女らしくて可愛らしいと思う。
 でもだからと言って中心にいるタイプというわけでもない。
 いつも中立という立場でクラスの中にいる。私もその中立の中の一人だ。
 「今日は体育があるね。」
 「今はいいけど、そのうち持久走が始まるんだろうな〜」
 なにげない話、なにげない雰囲気、なにげない『普通』・・・
 私にとってはとても暖かく、失いたくない空間だ。
 なにをそこまで私が感謝して、失うことを恐れているのか。
 人には、知られたくない過去がある。
 知らないほうがいいこともある。
 知る必要のないこともある。
 私はいじめられていたわけではない。
 生まれ持って持病があるわけでもない。
 けれど私には、
 普通の子には理解しがたい過去があるのだ。
- Re: umbrella ( No.2 )
- 日時: 2015/10/18 21:00
- 名前: 小林 (ID: 5Iu.5lPh)
- ある晴れたいつもとは変わらない朝。 
 トーストを食べ、少しはねている毛先を撫でた。
 そのときだった。
 「はるかぁーーー!!」
 母のありえないような叫び声を聞いた。
 「どうしたの?」
 まだ小学校3年生だった私は2階の『はるか』、私の姉の部屋のほうへと向かった。
 そこには信じがたい異様な光景が広がっていた。
 ここまでは覚えているのだが、いつもここからは
 体が拒否して思い出すことができない。
 結論を言えば、私のたった1人の姉は死んでいた。
 いわゆる、自殺だった。
 子供の私にはまったく理解できなかった。
 昨日まで普通にしゃべっていた姉が、もう起きることはないし話すこともないことを。
 お葬式が終わった1週間後、私は小学校にまた登校するようになった。
 幸い陰で噂にはなってはいたが、直接私に聞かれることはなかった。
 噂も七五日と言われるがその通りだった。
 半年もたてば姉がいたことなどなかったことになり、
 私は1人っ子という設定になっていた。
 中学になれば新しい友達ができる。
 でも姉がいたことは言わない。
 私は1人っ子としてここ数年生きてきたのだから。
 和香は、1人っ子だった。
 兄弟の愚痴を話したりする友達といるよりもずいぶん気楽だった。
 そして何より、そばにいてくれることが本当にうれしかった。
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