コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ぶりっこ男子
- 日時: 2015/10/29 14:36
- 名前: あんずa-me (ID: 0K0i.3Zc)
- アタシ、ほのか! 可愛い女の子 
 ..ってわけじゃないけど、一応女子..
 そんな私が、アイツと出会ったのは、
 私がある高校に転校した日からだった。
 上目遣い に 甘え上手
 顔だけはクールなのに〜〜
 そんな男子ってありなの!?
 「ぶりっこ男子 」
 宜しくお願いします♪
 初めての投稿です。
 作者 あんずa-me
 アレンジ 村島モモ
- 転校生 真田春樹 ( No.14 )
- 日時: 2015/10/29 15:10
- 名前: あんずa-me (ID: 0K0i.3Zc)
 そして、肝試し当日。
 「選ばれるのは自分だ!」と女の子たちは、
 ひっそりと髪を梳かしたりリップを塗ったりしていた。
 私は……というと、興味ない。
 かなちゃんと行こうかな、とかなちゃんを探していると、
 突然、真田くんに手を握られた。
 「真田くんがペアになりたかった人ってまさか、
 ほのかだったの!??」
 彼の行動に、女の子たちの悲鳴が聞こえる。
 ようやく見つけたかなちゃんは……、
 「待って!」とお見合い番組のような行動をするわけでもなく、
 寂しそうに私を見つめるでもなく、……私から視線をそらした。
 「いいよね?」と微笑みかけてくる真田くんに、私は
 「あ、よろしく……」と微笑みかけた。
 うまく笑えていたかは……、ちょっと自信がない。
 遊園地のお化け屋敷とかは、あまり得意じゃない。
 私だって女の子だ。それなりに怖い。
 まだ出発してから2、3分しか経っていないのに、
 立ち止まってしまいそうな私に対して、
 真田くんは手を差し伸べてくれた。
 「俺と手つなぐ?」
 「え……」
 「もちろん嫌じゃなければ、だけどね」
 正直、誰でもいいからすがりつきたいと思っていた私は、
 そんな真田くんの振る舞いを、自然に受け入れていた。
 それに……、普段頼られてばかりだから
 ——主にかなちゃんに——
 人を頼る経験というのもしてみたかった。
 「じゃあ、俺が先に行くから、ついてきて。大丈夫、怖くないよ」
 (た、頼もしすぎる……っ!!)
 さっきまでの恐怖心が嘘のように消え、私の足取りは軽かった。
 その後も、お化け役の子や何かの仕掛けが現れると、
 私のことを気遣って後ろを振り向いてくれる真田くん。
 「ほら、もう、みんなの姿が見えてきたよ」
 彼がそう言って振り返ったときには、ほんの少しだけ
 この時間が終わってしまうことを寂しく感じる気持ちもあった。
 こんな風に
 ——女の子として——接してもらえたのは初めてだったから。
 新鮮で、ちょっぴり照れくさくて、すっごく嬉しかった。
 「ありがとね、真田くん」
 それは、こんな経験をさせてくれた彼への本心からの言葉だった。
 「いいよ。俺だって役得だし?」
 その視線がつながれた手に向けられている。
 「さて、もう怖くないでしょ? 離そう」
 「うん、ありがとう」
- 転校生 真田春樹 ( No.15 )
- 日時: 2015/10/29 15:15
- 名前: あんずa-me (ID: 0K0i.3Zc)
 翌日。
 「ほのかちゃん」と声をかけてきてくれる人物がいた。
 ——真田くんである。
 「昨日は楽しかった。あのさ、今日、昼、近くでカフェしない?」
 「あ……うん」
 お昼ご飯は、毎日、かなちゃんと食べていた。
 約束したわけじゃないけど、それは私たちの習慣。
 だから、かなちゃんを気にしたんだけど……、
 かなちゃんは何も言わずに教室から出て行ってしまった。
 お昼。 真田くんと一緒にいると、
 なんだか周りの女の子たちの視線が痛い気がする。
 こんなに強い視線、
 かなちゃんと一緒にいたときには、一度も感じたことなかった……。
 (きっと周りの子たちは、真田くんが好きなんだ……)
 かなちゃんだって外見だけでいえばかっこいい。
 真田くんにも負けてない。
 でも、かなちゃんを恋愛対象には見れない。
 だから、この視線は、真田くんを好きだという気持ちなのだと思った。
 そんなことを考えていると、唐突に真田くんが尋ねてきた。
 「ほのかちゃんはさぁ、好きな奴とかいるの?」
 「え……」
 「いきなり過ぎだよね。ごめん。俺、会計、済ませてくるわ」
 答える間もなく、真田くんはレシートを手に立ち去ってしまった。
 (私が、好きなのは——誰なんだろう)
 真田くんと別れて、教室に戻る途中。
 私は顧問の先生につかまった。私って頼みやすいのだろうか。
 先生もまた備品を倉庫へ持って行ってほしい、という。
 とりあえず今は時間がないので放課後持っていくことにした私は、
 その備品を教室まで持っていき、廊下に置いた。
 割と重い……。誰かに手伝ってほしいけど、
 私たちのクラス、陸上部いないんだよね。……さすがに、
 部活違うのにかなちゃんに頼むわけにはいかないし……。
 そうは思ったものの、
 さすがにこれを抱えたまま階段を下りる気にはなれず、
 ダメ元でかなちゃんに頼んでみることにした。
 「ねぇ、かなちゃん。お願いがあるんだけど〜?」
 いつもかなちゃんがやっているように、甘えた声を出してみる。
 「なに?」
 「これ、運ぶの手伝ってくれない?」
 「いーやーだ! これ、クラスのものでもないじゃん!」、
 そんな感じの言葉が返ってくると思っていた。
 けれど、かなちゃんが口にしたのは———。
 「わかった、いいよ」 たったそれだけ。
 (え、私のリアクションに問題あった……?)
 急に恥ずかしくなってきたけれど、
 早くもそれを抱えているかなちゃんに尋ねるのは
 なんだか余計に恥ずかしく思えて、私は、
 「ありがとう」とだけ返すことにした。
 「ご、ごめんね。重いでしょ?」
 「別に、このくらい」
 明らかにこれまでのかなちゃんと違う態度に私は戸惑いを隠せない。
 「あはは、私って頼みやすいんだろうね。
 ほら、男みたいで、腕力ありそうだし?」
 「優しそうだからじゃないの?」
 きっとかなちゃんの言葉は私にとって嬉しいもののはず——。
 男みたいだ、という言葉を否定してくれているんだから。
 なのに、私が感じていたのは、嬉しさではなく……寂しさだった。
- 転校生 真田春樹 ( No.16 )
- 日時: 2015/10/29 15:18
- 名前: あんずa-me (ID: 0K0i.3Zc)
 それから私は、かなちゃんとではなく、
 真田くんと過ごす日が増えていった。
 夏休みに入ってもそれは変わらない。
 部活で登校する日が重なると、
 真田くんは私の練習が終わるのを待っていてくれたりした。
 それで、一緒に帰る日々。
 話してみると、真田くんは、素直でとてもいい人だった。
 帰り道、彼が自身の第一印象について尋ねてきたことがあった。
 「俺のこと、最初、どう思った?」
 「……正直に言っていいの?」
 「え、なに、その言い方。期待できなさそ〜!」
 引っ越しが多かったという彼は、人との距離感をつめるのがうまくて、
 私は2学期が始まる頃にはもうすっかり打ち解けていた。
 「ナルシストだと思ったよ!」
 「あはは、やっぱり〜?」
 怒るでもなく、私の返事を笑って受け入れてくる。
 「まぁ、仕方ない面はあったと思うんだけどね。
 俺自身、そう振る舞ってた部分はあるし。けどね……」
 その時。
 私はお母さんから夕ご飯に使う予定の大根を買ってきてくれ、
 と言われていたのを思い出す。
 前回忘れてしまったから、今回忘れるわけにはいかない。
 私は、真田くんに「ごめんっ!」とだけ告げて、走り出した。
 戸惑う真田くんは私に何かを言おうとしていたようだけど、
 私はそれに「ごめ〜〜ん!」とだけ言って返した。
 次の日も、私は真田くんと一緒に昼ご飯を食べた。
 周りの女の子たちの視線は相変わらず痛いけれど……、
 それ以上に真田くんと一緒に過ごす時間が楽しくて、
 それほど気にならなくなっていた。
- 転校生 花田春樹 ( No.17 )
- 日時: 2015/10/29 15:21
- 名前: あんずa-me (ID: 0K0i.3Zc)
 いつもどおりの雑談を交わし——、カフェを後にする。
 真田くんが時計台を見上げるので、私もつられて視線を送ると、
 まだお昼休みが終わるまで、あと15分近く残っていた——。
 (今日はなんだか急いでるみたいだったんだよね、
 予定でもあるのかな)
 「またあとで!」
 という言葉を切り出されるのかと彼の言葉を待っていると、
 伝えられたのは、「中庭で話したいんだ」という言葉。
 しかも、普段とどこか違う真剣な口調に、私は、言葉もなく、頷いた。
 私の手を引いて、中庭まで進んでいく彼を、
 私はどこかボーっとした頭で眺めていた。
 「この前、言いかけたこと。俺、ほのかちゃんが好きなんだ。
 ほのかちゃんのそばにいれたら、
 俺、変わることができると思うんだ。だから、俺と——」
 早口で伝えられた言葉に、私は何も言えず、ただ瞬きを繰り返す——。
 「え、私のことを真田くんが……?」
 状況を飲み込もうと口にした言葉に返事を得ることはできなかった。
 私は、誰かに手を掴まれ再び歩き出していたから。
 私の手を引く人物、それは、——かなちゃんだった。
 でも、かなちゃんの顔はどこか冷たくて、
 ぎゅっと掴む、かなちゃんの手が痛い。
 ずっと前なら、こんなクールなかなちゃんを思っていたのに。
 けど、今は……、こんなかなちゃんイヤ。
 彼が私を連れて行ったのは——屋上。
 グランドを眺めている彼の表情はどこか寂しげな顔をしていた。
 やっぱりこんなのかなちゃんじゃない。
 後ろ髪引かれる思いで私は去ろうとした。
 「行かないで……。こんな僕……イヤ?」
 「……。嫌じゃないよ……。
 ただ、ちょっと寂しいっていうか……驚いているだけだよ」
 「僕も不思議なんだ。こんな自分。
 いつもは、ナヨなのに……今は……」
 「……今は?」
 「君が好きだから」
 かなちゃんの言葉を理解するのに数秒、必要だった。
 「ほのか……僕はキミが好きだ」
 私と彼は今までたくさん思い出が詰まった屋上で
 しばらく抱きしめあった。
- 彼として ( No.18 )
- 日時: 2015/10/29 15:24
- 名前: あんずa-me (ID: 0K0i.3Zc)
 あれから春になり私たちは3年生に進級した。
 私は彼とまた同じクラス。
 これからも彼の傍にいられそうだ。
 「あぶなーーい」
 見上げると、
 サッカーボールが私の顔面目掛けて向かってくる——っ!!
 あまりの怖さに私は、立ちすくんでいた。
 その時、誰かに手を掴まれボールは地面に落ちる。
 「怪我はない? あんな所に突っ立ってるから。……ほのか?」
 (夢見たい……。これ夢?)
 「ったく聞いてないし。今度から気を付けて歩けよ」
 奏多くんはちょっと笑って歩き出した。
 いきなり逞しくなって。
 そして昨日から今日からこんなに男子っぽいかなちゃん。
 奏多くんのスラッとした長い脚は、いつ見ても、
 いや、今日は特に輝いている。
 「………っ!!!」
 突然、奏多くんは、振り返り物凄い勢いでこちらに走り出して
 私をぎゅっと抱きしめた。
 「かなちゃん、毛虫、マ・ジ・で苦手なの——っ!!」
 「………。かなちゃんっ! 毛虫なんか飛び越して私と走ろう!!!」
 「絶対無理、出来るわけないじゃん、って僕たち走ってるじゃんー」
 ——守らないといけない時は私が守る。
 でも……守ってほしい時は、私を守ってね。
 END

