コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.108 )
- 日時: 2016/03/27 18:15
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
- 一通りの人たちと挨拶して、ユリがやっと一息ついたときに、ある女性が声を掛けてきた。 
 「お、ユリちゃん、ほとんどの人と挨拶できた?」
 「あ、甘那さん。あっちに行ってしまうなんてひどかったですよ。というか、ここの人たち一癖二癖凄くないですか・・・・・・。玲が昨日ここを動物園呼ばわりしていたのが分かった気がします。結構凄かった」
 甘那は左手に持っていたお茶が入った紙コップをユリに差し出す。それをユリは、ありがとうございますと言って素直に受け取った。
 「まあ、しょうがないよ。うん。まあ、愁哉さんが作ったごちそうでも食べようよ。ほら、こっちにソファーがあるから腰かけて。玲、あんたは男のくせに何のフォローもできてなかったね、ダメじゃん」
 「は!? あれをどうやってフォローしろと!?」
 「根性だよ」
 「根性か・・・・・・。あれが根性で何とかなるとは思えないが。まあ、ユリ、こんな感じのところだぞ、ここのアジトは。どうだ? 今の率直な意見として」
 「慣れるまで毎日結構なカロリーを消費しそう」
 ユリの顔は周りの空気がよどんで見えるほど、とても暗かった。
 「・・・・・・。あ、うん、まあ、頑張れ」
 「あ! れえええええええええええええええええええええええええい! お疲れ様! 抱き着いていい? というか、臭いかいでいい? ああ、いい匂い・・・・・・」
 「お前、やめろ! 俺の許可をもらう前に抱き着くな! 匂いを嗅ぐな! 気持ち悪い!」
 「だって、絶対玲は許可くれないし。だったらその前に匂いを嗅ぐ。ふはあ、いい匂い・・・・・・ぎゃ!」
 いきなりそんな奇声を上げ、レオの体は玲から離れる。
 玲が何事かと思い、レオの後ろを見ると、ユリが何か納得いかないような、いじけたような顔で、立っていた。そんなユリの左手は、レオの肩に置いてあった。ユリはその手を放す。
 「何、ユリちゃん。痛いよ!」
 ユリが目をはぐらかしながら答える。
 「別に、ちょっと見てて気分がよくなかっただけです」
 その反応を見て、甘那がユリをにやにやと、面白いものを見るようにする。
 「お、嫉妬か? 嫉妬なの、ユリちゃん」
 「ちっち、違いますよ」
 「あれ、ユリちゃんどうしたの、顔赤ーい! かわいい!」
 「うわ! イアさん! 別に何もありませんよ!」
 「そうなの、甘那さん?」
 「どうだろうねー」
 「あっ、うう・・・・・・」
 こうして、ユリはいじると面白い人認定させられたのだった。
 ***
 そのあとユリたちは甘那に案内されたソファーに移り、他愛のない話をした。
 「あ、そうだ、ユリちゃんご飯食べなよ。さっき愁哉があげたものしかまだ食べてないでしょ? 私のあげたお餅は後でもいいから、今はできたての物を食べな! 本当においしいから、愁哉の作ったご飯は!!」
 話がひと段落した時、イアがそんなことを言ってきた。考えてみれば、ユリはイアの言った通り、せっかく用意されていた御馳走を口に運ぶことをあまりやっていなかった。
 「あ、確かに・・・・・・。ありがとうございます。いただきます。えっと・・・・・・」
 すると、ユリの言いたいことを察したらしく、甘那が口を挟んできた。
 「あ、お皿はご飯の隣らへんにテキトーに置いてあるよ。バイキング形式にしてあるし、好きなように取ってって」
 「ありがとうございます。甘那さん」
 「いえいえ」
 そして、ユリはやっと本格的にご飯にありつけたのだった。
 ***
 
 ユリが食べ物を取り行ったことを確認すると、玲が口を開いた。
 「どうだった? ユリの第一印象は」
 それにイアが嬉しそうに食べ物を皿にのせてっていくユリを眺めながら答える。
 「うーん。一言でいうのだったら、なんか明るいけれど、明るいんだけれど、その中に何か黒い塊がある感じで、かまってあげたくなる子だと思った」
 「そうか。甘那は?」
 「騒がしい子。あとかわいい」
 玲はそのたった二言で黙った甘那に向け、曖昧な返事を差し出した。
 「あ、うん」
 そのあとに、甘那がまた口を開く。
 「それと、イアと同意見。能力が能力だから、苦労してきたこともあるのだろうけれどね、私たちが守っていくんだって思わせられる子だよ。レオはどう思った?」
 話を降られた、まだ玲の隣で楽しそうにしていたレオはつまんなそうに口を尖らせながら答えた。
 「僕は、そうだね。髪の毛が特殊だなって思った。黒と茶がぐちゃぐちゃにまじりあってて。あれ地毛なんでしょ? どうやったらあんな髪になるの? あと、年上には必ず敬語を使っているあたりいい子だなって」
 「思ったよりもレオが真面目なこと言ってきた。びっくり」
 「んだよ! イア! 僕だって、あと少しで酒が飲める年齢の男なんだよ! 人のことぐらいちゃんと見るよ」
 「ごめん、俺も驚いた」
 「私も」
 「お前らみんなして俺を何だと思ってるんだよ!」
 レオが涙目になりながら、突っ込むと、レオが首を傾げた後、
 「え?」
 「「「女装してる痛い男」」」
 と言った。とても綺麗な音だった。レオは両腕を垂直に落とす。
 「・・・・・・・・・・・・っ! 見事にハモリやがった。この野郎」
 その時だった。ある人が、話に割り込んできたのは。この時間の終わりを告げてきたのは。
 「お? なになに? どうしたのレオくん、そんなに腕を震えさせちゃって! かわいい外見が台無しだよ!!」
 その人はとても楽しそうな表情をして、玲たちを見てさらに愉快そうに笑った。その人に向かって、甘那が反応する。
 「あ、垣根さん。お疲れ様です。どうしたんですか?」
 垣根はさっきの表情と打って変わり、なんとも言えない、けれども面倒ごとが起きたことを予兆できるような表情をしていた。
 「甘那くん、彼から電話が来たよ」
