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54.


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「——あれ、宮瀬？」

不意に後ろから声をかけられた。帰り道、陽で顔が見えない。
目をこらすと、室川の姿だと分かった。

「室川……」
「今帰り？」
私はこくん、と頷く。
何で——と聞こうとすると、室川が先に口を開いた。


「帰ろうよ」

それだけ言って室川は私に背を向け、さっと歩いていった。
私は返事もしていないけれど、何となくその後をついて行った——…




「サッカー、レギュラーになってるの？」
私は頑張って話題を切り出そうとする。でも室川は「うん」とだけ言って、そのまま会話が途切れてしまった。
……何か話してくれたって良いのに。


心の中で愚痴っていると、急に引っ張られる感触がした。

私は小さく悲鳴を上げ、隣の室川を見る。


「——あぁ、ごめん。宮瀬、柵にぶつかりそうになってたから」


私は室川の指先を見る。その指先は強く、私の右袖をつかんでいた。






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続き土曜日書きます。