コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 臆病な人たちの幸福論【『兄妹の喧嘩』更新!】 ( No.411 )
- 日時: 2013/07/04 15:41
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
 ◆
 「…………なんで」
 帰ってきてから早々、彼とその妹はコメカミを痙攣させながら、(図書室のベランダから出てきた)謎のおじさんを指して叫んだ。
 「何で父上(父さん)がここにいるんだ(いるのよ)————!!」
 「……ええええええええええええええええええええええ!?」
 隣で玲と森永が驚きの叫びを上げました。
 ……まあ、僕はこんなところだと思ってましたけれど。
 「や、久しぶりッ」
 「久しぶり、じゃねぇよ!! 何あたしが勾玉盗んだことにしたのよ!!」
 「アンタ死んだんじゃないんか!! お葬式だって、火葬だってやったのに……」
 「お前たちもまだまだだなあ」
 ニコヤカに笑う烏間兄妹の父親は、とんでもない爆弾発言をした。
 「あの遺体、実は蝋人形」
 「何だってェェェ!?」
 「しかも元々、白の勾玉をここへ持ち出したのは私だし」
 「はあああああ!?」
 「というか、烏間家がヤクザに取り込まれたのも演技じゃし」
 「はあああああああああああああああああああああああああああ!?」
 「その通りじゃ」
 「わしらは烏間っちに頼まれてたんじゃよー」
 テヘ☆とごつい顔でウインクをするヤクザ……のフリをしていた、実は烏間家の人たち。
 ポカーン、と、事情を知っているものは皆口を開ける。
 ……要約すると、今回の騒ぎは全て、このおじさんが仕組んだことだったのだ。
 なんでそんなことを。
 誰かが絶対に呟くはずの言葉が出る前に、おじさんは語り始めた。
 「……お前たちは、自分の大切な夢を持っている」
 お茶目な空気とは一転、真面目な空気に変わった。
 「私は、父親としてソレを見守って生きたい。だが、同じく私は烏間の頭首だ。
 この世には、自分の力をもてあまし、暴れてしまう奴もいる。それを纏めるのも、烏間家の大切な仕事。烏間家に仕える人間は、私にとって実の子供と同じように大切なもの。
 わたしが、そして次の頭首がそれを手放せば、大変なことになるだろう。
 夢を見ながらでもいい。頭首は一人じゃなくてもいい。私はそう考えた。
 例え意思があっても自信のない佐介と、技術はあっても意思のない向日葵が協力し合えば、きっと烏間家も安泰するだろうと。
 だから、私は試したのだ。お前たち兄妹が協力できるのなら、後はお前たちに任せよう、とな……」
 「父上……」
 「父さん……」
 「——まあぶっちゃけ、お父さんさっさと隠居したかったんだけどね!」
 バキ!!
 「……じゃああれか、謎の女の人が僕たちに切りかかってきたっていうのも演技だったのか」
 ハアハア、と肩で息をする彼の問いに、いやあれは、と頭から血を流したおじさんが弁明した。
 「あれは、向日葵だぞ?」
 「——はあ!? あたし!?」
 すっとんきょんな声をあげる向日葵さん。
 「ちょっと! 謎の女が切りかかった云々の話って、あたし身に覚えないわよ!? そもそもその話も後から聞い……た……し?」
 だんだんと言葉がしぼみ、疑問系へと変わる。
 そうして、人差し指を顎の下に置いて、ちょっと待て、といった。
 「……確かあの晩、父さんにキノコ判定を頼まれて家に帰って……」
 「キノコ判定? そういえば父上、キノコ狩りにはまったことがありましたね」
 「それで……味噌汁を飲まされて……そこから、とんでもない腹痛と、とんでもない景色が見えて、そこから記憶が……」
 そこまでいって、バッ! と、血相変えた兄妹の顔が父親の方へ向いた。
 父親は、気持ち悪いお茶目なポーズ(失敗した時のテヘ顔)をして、こういった。
 「まさか、あそこまでラリる効果があったとは……」
 「やっぱりテメェのせいじゃねえかああああああああああああああ!!」
 バキィイィ!! という音と、鶏の首を絞めたような悲鳴が、青い空に吸い込まれていった。
 こうして、全ては父親の遊びだったこと、それに腹が立った実の息子たちの成敗によって、烏間は平穏を取り戻した。
 巻き込まれた僕たちは、ワケの判らないまま振り回され、ワケの判らないまま突き放されましたとさ。
 おしまい。
 良い話にしようと思ったけど、無理でした
 (後日、謝罪と弁償代が学校に贈られた)
 (図書室はダメナコ先生が再び仕事をする前に修理が終わりました)
 (また、あの兄妹に会うかもしれません。会いたくないけれど)
 「……ねえ、オチは何処にあるの?」
 「さあ……」
