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- Re: 似たもの同士は恋をする。~秘密と恋の行方~ ( No.52 )
- 日時: 2016/01/25 01:06
- 名前: ひかり (ID: zc76bp3U)
- 第七章 3,「あなたにとってのワタシ。」 
 『もしもし、京香?』
 一週間ぶりの秋翔の声。
 聞こえる右側の耳にスマホを当てて声を聞き取る。
 私を気遣ってか、いつもより少しゆっくり話してくれる。
 「……うん、久しぶり。秋翔。どうかしたの?」
 『いや、あのさ……、いっこだけ確認したいことがあって……』
 決まり悪そうに語尾を濁す秋翔。
 「なぁに?」
 わざと明るい声で聞き返す。
 もしも。
 もし、"俺たちって別れてるよな?"って聞かれても。
 私は………うん、って言う。
 否定して、貴方の未来を壊したくはないから。
 私のせいで、貴方の歩む未来が、歩きにくくなってしまうから。
 それなら、私は、____貴方を傷つけない道を選びたい。
 『あのさ、………俺たちって、別れてる?』
 ぎゅっと、心臓を掴まれたような思いがした。
 いや、いやだ。
 ほんとは一緒にいたいよ。
 肯定してしまったら、もうメールも来なくなるんだろうな。
 「………うん、別れた」
 少しだけ、声が震えてしまった。
 『…そっか、ならよかった。』
 「………っ!」
 …………………よかったよ、よかったんだ、結果的には。
 …………でも、心が痛い。痛いよ。
 『最後にちょっとだけ、聞いてくれる?』
 "最後に"。
 なんてことない言葉なのに、なんでだろう。
 貴方の声を聞くのが最後かもしれないと思ってしまう。
 「………まだ何かあるの……?」
 さっきより震えた声で聞く。
 『これが最後だから、ちゃんと聞けよ?』
 悪戯っぽい秋翔の声。
 ねぇ、なんで笑っていられるの。
 私は、もうベッドで毛布にくるまって泣いてしまいたい。
 あぁ、私はそれだけの価値だったか。
 どんどん溢れてくる思いで私の頭はぐるぐるだ。
 『俺と、』
 あぁ、最後なんだな。
 貴方の声を聞くのは。
 『……俺と、もう一回、付き合ってください』
 「ぇ………?」
 『あ、嫌だったら嫌でいいからな!? 別に、その………』
 慌てた秋翔の声が響いてくる。
 「…………ほんとうのほんとうに、私でいいの?」
 『……京香がいいから言ってんだろ。前も言っただろ、俺はお前がいーの。』
 照れた秋翔の声。
 …………私は、
 「………ありがとう、秋翔。これからもよろしくお願いします」
 私は、世界一の幸せ者だ。
