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- Re: 世界の果てで、ダンスを踊る ( No.27 )
- 日時: 2015/02/01 13:54
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 6Z5x02.Q)
- —22 研ぎ澄ますは牙 狙い澄ますは刃 
 踊る影が二つ。
 交錯するように縦横に飛び交い、獲物を狙い定める。
 緋と蒼の狩人。
 白く広いドーム状の修練場とおぼしき部屋。
 高所の防護透過版の外壁窓から覗き見下ろす複数の影。
 殺伐とした飾り気のない照明の明りが高い天井から眩しく照らす。
 二色の残像を描き二対の獣が今も目の前の標的を仕留めようと虎視眈々と眼光を光らせ走る。
 「チィッ! さっきからこっちの攻撃が全然当たらないっ!!」
 赤い髪の少女ファエルが獣化させた右腕の巨大な鉤爪を振るい忌々しげに愚痴りながら叫ぶ。
 「どうなってるっ!? 『奴』は一歩も同じ場所から動いてないっ!!」
 青い髪の少女リエルが同じく獣化させた左腕の鉤爪の鋭い切っ先を定め憎々しげに叫ぶ。
 二人が視線を一瞬だけ交わし合った刹那、撫でる空気の余波が瞬時にして凍り付く。
 「「うぅっ!?」」
 その凍て付いた空間の先に禍々しい雰囲気を纏う少女が佇む。
 両手に二対の大型のナイフを携え、全生物の心臓の鼓動を停止させるかのような底冷えする眼差しを投げかける。
 白銀秀麗の此の世ならざる美貌を持つ少女。
 全てを見透かすかのごとく怜悧な視線を相対する少女たちに傾ける。
 獲物を狩る筈の己等がまるで逆に狩られるような錯覚に陥り背筋を冷たい汗が伝わるとともに言い様の無い怖気が駆け抜けるファエルとリエル。
 瞬間。
 二刃の銀閃が目前まで繰り出され迫る。
 飛び散る火花。
 重なる凶刃。
 「あぐっ!?」
 「うぁっ!?」
 獣化した腕爪の装甲鎧からも重く圧し掛かる連撃。
 紙一重で受け止める二人。
 後方に弾き飛ばされつつも何とか体勢を入れ替え次の襲撃を想定し身構える。
 銀の少女は次の攻撃には移らず、様子をみているのか動こうとはしない。
 しかし此方から仕掛けようとしても踏鞴を踏んでしまうファエルとリエル。
 銀の少女が発する濃厚な死の気配にたじろぎそうになりながらも赤と青の少女は互いに目で語らう。
 生唾を飲み込むファエル、リエル。
 そんな尻込みしそうな自分自身たちを無理矢理奮い起たせて意を決すると変化結成させた己の武器を構えて腰だめに低く姿勢を整える。
 「・・・全力で殺るよ、リエル。もう模擬戦とか実験とか関係ない」
 「・・・了解、ファエル。ママには叱られるけど“奴”は今此処で始末しとかないと」
 圧倒的な脅威を感じる強敵相手に薄く笑みを浮かべる二匹の雌獣。
 強い相手程に騒ぐ。
 自分たちの中の猛獣の血が。
 遺伝子が呼び掛けるのだ。
 喰らえ、と。
 喰らって己が血肉と成せ、と。
 超えなければならない壁が立ち塞がる。
 ならば打ち壊せばいいだけのこと。
 今までそうしてきたように、これからもそうすればいい。
 証明するのだ。
 もっとも優れた超越者は自分たちなのだ。
 模倣とはもう言わせない。
 幼い外観を合わせ持つ二組の少女から禍々しい殺気がゆらりと漂った。
