コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 甘い誘惑 ( No.6 )
- 日時: 2015/08/23 23:44
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: Ql2tRr6x)
- 結衣side 
 東くんと別れて教室へと向かう。その最中、ふとこんな事を思った。
 そう言えば……誰かと一緒に登校したの凄く久しぶりかも。
 自慢じゃないけど、私は地味だし人見知りだし、友達と呼べる人が高校では居なかった。
 中学の時は部活仲間とか、少しはいたんだけど。
 今はもう3年の春だし、部活にも入っていない私は決まって一人だった。
 虐められたりはないけど、時々陰口は言われてる、かなぁ。
 だけど言われても仕方ないような態度をしている自覚はあるから、嫌だとも言えないし。
 とにかく自分のいい所なんて思いつかなくて。
 「だから、不思議なんだよね」
 どうして東くんが私を知ってたのか。
 好きになってくれたのか。
 私にはこんなに駄目なところがあるというのに。
 「私って……東くんの事、何も知らないんだな」
 ポツリと口から出た呟きはチャイムの音に消されるようにして聞こえなくなった。
 *
 あれから先生が来てHRが始まって。
 今はもう4時間目の体育の時間だった。
 体育祭が近いせいか一部の生徒は張り切ってるけど。
 運動が苦手な私にとってはこの上ない苦痛の時間の始まりで。
 早く終わんないかな……。
 なんて始まる前から憂鬱だった。
 そんな私の気も知らず先生は授業内容の説明を始めて。
 今日の授業は——持久走だった。
 「……無理でしょう」
 この炎天下の中、持久走って殺す気ですか先生。
 冗談だって笑うなら今しかないですよ?
 と、そんな視線を向けるも意味はなく、代わりに先生は更なる試練を与えてきた。
 「そうだ、今回ビリになった男女一人ずつは放課後の掃除当番に任命するからな」
 先生の言葉に皆がブーイングを起こす中、私は完全に硬直した。
 これは凄くマズイ状況ですよ……何がって女子のビリは私確定として。
 掃除当番も別にいいとして、問題なのは罰が放課後にあるという事だ。
 今日は東くんとの約束があるのに……。
 こんな事を考えてないでビリにならないよう走ればいいんだって思えたら良かったんだけど。
 生憎、気持ちだけでどうにかなるほど私に運動力……体力はないのだ。
 「ど、どうしよう……」
 口から出た困惑の言葉と共に、持久走はスタートして……。
 私は東くんへの謝罪の言葉を考えながら一歩を踏み出したのだった。
