コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お前なんか大嫌い!!-勘違い男たちの恋- ( No.51 )
- 日時: 2013/03/14 22:46
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
- 参照: テスト爆発しろ
- 次の日である。 
 椎名昴は椎葉すみれとして学校へ登校した。途中で出会った誓と鈴と雑談しながら、自分の教室へと目指す。
 朝のにぎわいを見せる神崎学園の1教室のドアを開くと、さっそくすみれは翔子のもとへと駆け寄った。
 「おっはよう! しょーこちゃん」
 「うふふ、おはようすみれ。誓さんと鈴さんもおはよう」
 「おっはよー、翔子さん!! 相変わらずきれいだね、惚れちゃいそう!」
 鈴がごくごくと水筒の中の水を飲みながら、翔子をさりげなく口説いた。
 何故だかイラッとしてしまったすみれだが、まぁそこはあえて無視をする。きっと悪気はないのだ。彼女には。
 誓もぺこりと頭を下げ、「おはようございます」と返した。
 「今日の英語、課題が出されていたはずだけどやってきた?」
 「え? そんなのあったっけ? ちょっと覚えてないかなぁ……」
 ていうか昨日までバイトだったし、という言葉は言わなかった。言えなかった。
 だってバイトをしているのは男としてのすみれだしっ! と思う。
 しかし、そのバイトしている最中でよく出会う翔が、目の前の翔子だという事は、昴は知らないのである。
 その時である。
 校庭から銃声が鳴り響いた。
 しかも立て続けで。
 ハッとした様子ですみれは顔を上げ、何事かと翔子は窓の外を見やる。
 そこにいたのは、1人の男だった。顔をマスクで覆い、ピストルの銃口を天空へと向けている。昴の視力で確認すると、その銃口からは白煙が揺らいでいた。おそらく、空へ向けて発砲したのだろう。
 何だろう、と思った。そしてすみれは——否、昴は記憶を探る。あの男、見た事がある。
 「……何、この騒ぎ」
 すると、窓の方へもそもそやってきた雫が、何やらけだるげな声ですみれ達4人へ問いかけた。
 「な、何かね! あの男の人が発砲したんだよ!」
 鈴が外を指さして、悲鳴じみた声を上げた。
 んー? と雫が窓の外へ目をやると、「あ、」という声を上げた。
 「……昨日の、銀行強盗……」
 雫の台詞で思い出した。
 昨日の銀行強盗。雫と昴によって撃退した、あの男だ。
 ……でも、確かに気絶したはずなのに。どうして復活しているのだろう。雫の弾丸を食らえば、簡単に復活できる訳がないのだ。実際に食らった事がある昴だから言える。
 非常にまずい。何がまずいかって、このまま警察が来るのを待っていたら、もしかしたら翔子が————
 「ちょ、ちょっとあたし……トイレ行ってくるね」
 「奇遇ね。私も行くわ」
 「……ん、うちも行く」
 何故か翔子までもトイレに行くと言い出して、雫も行くと言い出した。これは一体どういう風の吹き回しだ?
 すみれ(昴)はそんな事を考えながら、トイレへと向かった。だが、何故か翔子と雫はついてこようとしなかった。
 ***** ***** *****
 トイレですみれから着替えて昴へと変化する。
 ヘッドフォンを首から下げて校庭へ飛び出すと、何故か弾丸が頬をかすめた。え? 何?
 「み、み、見つけたぞ……昨日の!」
 「うへぇ……狙ってきやがったのか」
 ここで学校で銃乱射事件でも起こせば来るとでも思ったのか。でも案の定来たけどね!
 昴はため息をつくと、身構えた。いつも死神を相手しているのだ、銃如きで負ける訳がない。だが、撃たれると普通に傷つく人間でもある。
 と言う訳で、あまり下手な事はできないので遠距離からの攻撃に専念する事にした。が、
 「何を逃げ腰でいるのだ、ポンコツ馬鹿ヒーローめ」
 後ろから、少女容姿死神に蹴飛ばされた。
 昴は前のめりにつんのめると、蹴飛ばしてきた死神——東翔を睨みつける。
 「銃如きに怖がるのか?」
 「怖がってねーよ、撃たれたら死ぬから警戒しているだけだ」
 「テメェは撃たれても死なないだろ」
 「死ぬから! 死ぬよ、俺を何だと思ってんのサイボーグ?」
 「全身筋肉の人形か何か」
 「もう人間じゃねェ!!」
 こいつはもーッ!! と昴は頭を抱える。
 本当にこいつだけは好かない。一生かかっても好きになれない。ていうか友達にすらなりたくないかもしれない。
 こういうシリアスな雰囲気を平気でぶち壊してくる死神。嬉しいのやら悲しいのやら。いや、悲しい。ていうか怒りたい。シリアス雰囲気を壊すなと。
 「お前は……空気を読むという事ができないのか!!」
 「できないな。だって常識など皆無だし」
 「だからってこう、なんか、こう! シリアスな雰囲気になっているのに、蹴飛ばすって一体どういう了見をしているんだよ馬鹿なのか?!」
 「聞く耳持たん。テメェという存在は、蹴られていれば十分だ。この俺に蹴ってもらったのだぞ、ありがたく思え」
 「どこを?! どこを思えばいいの?! ただのいじめだろうがよ!」
 「何だと。高貴なこの俺に蹴ってもらってマゾのように『ありがとうございます!!』と満面の笑みで返してくるだろ!」
 「返す訳がねぇだろ!!」
 ピストルを持った男をそっちのけで喧嘩を始める2人。ギャーギャーというやかましい舌戦が、蒼穹へ響き渡った。
 一方、男はぽつんと立ち尽くしたまま、2人の舌戦を見守っていた。それからハッと我に返り、銃口を2人へと向けると、迷いなく引き金を引く。
 ガァン! という轟音が大気を揺らす。放たれた弾丸は、2人の間を通り抜けて校舎の壁を穿った。
 「……ストレス発散していたのに、何をする」
 翔は空中から、赤い鎌を出現させ。
 「今まさにこいつに鉄拳制裁をくわえようとしていたのに」
 昴は剛腕を構えた。
 それから、2人は声をそろえて、あの台詞を口にする。
 「「お前なんか————大嫌いだぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
