コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お前なんか大嫌い!!-勘違い男たちの恋- ( No.66 )
- 日時: 2013/06/06 22:32
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
- そんなこんなで鮫を退治して、さっさと昴はすみれへと戻った。 
 戻ったところで宿泊施設までやってきて、さっさと部屋に入った。で、入った先は人数制限があり3人部屋だった。
 もう1度言おう、3人部屋だった。
 つまりはこんな感じ。
 「……結構広いなぁ」
 「今年は割と広い部屋になりましたね」
 (うぉぉぉおおおおお!! ここは天国かぁぁぁぁぁぁあ!!)
 すみれ——否、昴は悲鳴を上げそうになった。ジーザス!!! と神に言いたくなった。
 好きな女の子と同室になればそんな事を思ってもおかしくはない。雫はこの際どうでもいいが、翔子と一緒になれた事を嬉しく思う。
 しかし、昴は知らない。
 相手の瀬野翔子は、実は自分が嫌っている死神である事を。
 「すみれ、今回はかなり広い部屋に当たったね」
 「去年は酷かったもんねー」
 すみれはヘラリと笑って、何事もなかったかのように翔子と接する。今にも心臓が飛び出してしまいそうだ。
 ちなみに、今はみんなして着替えて私服である。すみれはピンクのパーカーにジーンズという格好だったが、翔子の格好はかなり可愛いものだった。
 まさしく大和撫子! という彼女の雰囲気に合っている格好だ。ふんわりとレースがあしらわれた白いワンピースにレギンスを穿いている。
 (翔子ちゃんマジで可愛いいいいいい!!!)
 今すぐ壁に頭を叩きつけたい。叩きつけて壁を壊したい。そんな衝動に駆られるが、すみれ——ていうか昴はその興奮を抑えた。
 その時だ。
 殺せ。
 愛する人なら、殺して自分のものにしろ。
 ザワリ、と何かがうずく。
 すみれ——というか昴は瞳を見開き、そしてゆっくり瞳を閉じる。体の底でうずいた何かを抑えるかのように息を吐き、指でこめかみを押す。
 それをおかしく思ったのか、翔子と雫が首を傾げた。
 「すみれ? どうしたの?」
 「……具合悪いなら、保健の先生に見せた方がいいかも」
 翔子はもちろん、敵である雫も心配してくれていた。
 すみれはにっこりといつも通りに笑うと、「何でもない」と言った。が、それでも声は聞こえてくる。
 耳の奥にへばりつく『殺せ』という声。口元を押さえて、すみれは部屋に備えつけられたトイレに直行した。便器に全てをぶちまける。
 「くそ、野郎……!!」
 かすれた声、口調は男のものに戻っていた。
 すみれ——いや、昴は頭を抱えて、自分に言い聞かせるようにつぶやく。
 「……うるさい……お前なんか、あの女顔死神よりも大嫌いだ……!!」
 ***** ***** *****
 (すみれは一体どうしたのだ……大丈夫か?)
 トイレへ消えたすみれを心配する翔子——いや、翔は思った。
 同室になったはいいが、さっそくシックハウス症候群にでもなったか。そこまですみれは繊細だとでも言うのか。そんな香料が使われている気配はないと思う。
 翔は死神だ。一応五感は普通の人間よりも発達している。あのヒーローも自分と同じぐらいの五感を持っていると思うが、まぁそれは置いとこう。
 「……すみれ、大丈夫かな?」
 翔子のそばでは、ベッドに腰かけた雫が首を傾げた。
 トイレに駆け込んだすみれは、何かを抱えているようにも見えた。しかし、あいにくながら翔は心の声を聞く事はできない。
 これは出てきたら何かあったのか訊くしかないだろう。自分は彼女の友達なのだから。
 (いや、いつかはあいつと結婚するから)
 嫁か? と心の中で問う。
 すると、ガチャリとトイレのドアが開いて、すみれが何やらすっきりしたような顔を覗かせた。
 「大丈夫? 吐いてきたの?」
 「うん。いやぁ、昼間の奴に何かが当たったらしい。ちょっとゲロっちゃった☆」
 テヘ、と言うかのように、舌を出すすみれ。大事がないようでよかった。
 翔子はほっと安堵の息をつく。彼女に何かあれば、全力で彼女を困らせる不穏分子を取り除く予定だったが。
 「じゃ、夕食の時間まで暇だから何かしようか? あ、あたしトランプ持ってきたんだけど何かやる?」
 「ババ抜きとかがいいかな?」
 「ババ……おばあさんの髪の毛でも抜くの?」
 「「いや、それ可哀想だから」」
 そんな事を平然と言ってのけた雫へ、すみれと翔子は同時にツッコミを入れた。それをやった暁には、おそらくおばあさんに嫌われる事だろう。
