コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 短・中編集(参照2100突破感謝!) ( No.113 )
- 日時: 2016/08/13 15:42
- 名前: 夕陽 (ID: 2AbPFXim)
- Time heals all wounds.(時は全ての傷をいやす) 
 小学4年生の時、私の両親は別居した。
 原因はお父さんが会社をリストラされたこと。
 始めはお父さんも仕事を探していたがなかなか新しい職が手に入らず、そのストレスでお酒を昼間から飲むようになった。
 そしてその生活が半年ほど続いた時、お母さんは私を連れてお母さんの実家に逃げた。
 仲が良かった友達と別れて、新しい生活が始まった。
 しかし、その生活は楽なものではなかった。
 まず始めに金銭面。
 おじいちゃんとおばあちゃんの二人なら年金でなんとかなったが、私たちも含めるととても足りない。なのでお母さんはアルバイトを始めた。
 おばあちゃんが家事をやってくれたが、一人では大変なので私も手伝った。
 そして、10月というなんとも微妙な時期で転校したせいで変な注目を学校で浴びてしまった。
 私は一言も言ってないのにいつの間にかお父さんがいないということがクラスの人に知られていた。
 だからか、私がちょっとでも間違えると「やっぱお父さんがいないからこれくらいもできないんだね」とこれみよがしに言ってくるのがとても辛かった。
 ただ、つらいことばかりでもない。
 おばあちゃんと一緒に家事をすることでおばあちゃんと仲良くなれた。
 クラスの人でも、おとなしい子たちのグループでは歓迎された。
 どうやら私のことを悪く言っているのは、都会から来た私をよく思っていない一部の人たちらしいということもこの時聞いた。
 しかも似たような境遇の子が少し後に転校してきたのでその子と大親友になれた。
 そのおかげで、私の傷はだんだん癒えてきた。
 だから。
 「お父さんが、仕事やっと見つかったから帰ってきてほしいって言われたの」
 お母さんが急に言い出した言葉に戸惑ってしまった。
 もうあの時から2年たつ。
 今更父親とか言われても実感がわかない。
 しかも一番新しい記憶は酔っぱらっている情けない姿。
 「私は、帰らないよ」
 私は思わずそう言っていた。
 せっかくここで友達が出来たのに。
 もう父親がいないという傷もなくなったのに。
 お母さんは困った顔をした。
 「でも、お父さんの仕事場あっちにあるの。ここに来てもらうわけにはいかないでしょ」
 「だったら単身赴任だと思えばいいじゃん。とにかく私は戻らないよ」
 私はそれだけ言うと、自分の部屋に戻った。
 元々はお母さんの妹、私のおばさんにあたる人の部屋だったらしい。
 「さすがに言い過ぎたかなあ」
 別に両親を嫌っているわけではない。
 ただ、せっかくできた友達と別れるのは嫌だ。
 そんなのは一度きりで十分だ。
 「やっぱりまだ、傷は癒えてないのかな」
 思い込んでいただけで、私は本当はかさぶたのまま残っているかもしれない。
 いつになったら癒えるのかな、と思いつつそのまま眠りについた。
 * * *
 あとがき
 今回は「heal」意味は「治す、治る」などです。
 題名では治っていますが物語的には逆ですね……。
 体の傷はすぐ治りますが(程度にもよりますけど)、心の傷はなかなか治らないと思います。
 ちょっと暗めの雰囲気だったので次回はコメディ書きたいです!(書けるかはわかりませんが)
