コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 短・中編集(参照1000突破感謝!) ( No.93 )
- 日時: 2015/03/07 19:57
- 名前: 夕陽 (ID: IcK/upD1)
- 空色日記 
 私は日記をつけている。
 空を思わせる青い色で、鍵がついている。
 シンプルだけどそのシンプルさに惹かれて当時は高かった2000円をはたいて買ったのだ。
 そして私はその日記を書くことを買った中一の入学式から絶やしたことがない。
 半年過ぎたので、たくさん書いた分がたまったがあと2年半くらいなら使えそうだ。
 その日記はとても大切にしていたので学校でもいつも持っていた。
 しかしある日、その日記帳を落としてしまったのである。
 * * *
 「お母さん、日記知らない!? 空色の!!」
 私はすぐさまお母さんに聞いた。
 お母さんが掃除した時に適当に置く癖があるのだ。
 「知らないわよ。自分のものくらいしっかり管理しなさい!」
 どうやら知らないようだ。
 もしかしたら学校で落としたのか……?
 鍵がついているから見られることはないとはいえ、他の人にあの日記を見せたくない。
 あれは、思ったままに書いてあるので10年後とかに読み返したら黒歴史決定の文が豊富に書いてあるのだ。
 ——よし、明日早く学校に行って探そう。
 私は強く決意した。
- Re: 短・中編集(参照1000突破感謝!) ( No.94 )
- 日時: 2015/03/23 10:34
- 名前: 夕陽 (ID: IcK/upD1)
- 空色日記 
 「ないなあ。もう誰かに拾われちゃったのかな……?」
 だとした死にたい。
 アレを見られるとか一生の恥だ。
 「木村さんが探してるのってこれじゃない?」
 そう差し出されたのは、私の探している空色の……!
 どうやら同じクラスの近藤君が見つけてくれたようだ。
 「ありがとう!」
 そう言って受け取ろうとした時、ひょいとその日記は上にあげられた。
 「木村さんに一つお願いがあるんだけど」
 「なんですか?」
 早く返してほしいと思いつつ、問いかける。
 「僕と一緒に、図書室に来てほしいんだ」
 「図書室?」
 一体どういうことだろう?
 きょとん、と首をかしげると、
 「うん。詳しいことは図書室についてから説明するから」
 その言葉に私は黙って図書室に行くことにした。
 * * *
 「こっちに来て」
 近藤君は、分類が9の本棚に近づく。
 「確かこの辺だったかな」
 近藤君は一冊の本を抜き出す。
 ハードカバーの本で表紙は晴天の空を思わせる青。少し私の持っている日記に似ている。
 「長老、連れてきたよ」
 「へ?」
 今、完璧に近藤君は本に向かって話しかけていた。
 何してるの?
 そう疑問に思ったとき、
 「ありがとうじゃよ」
 「え? 何で人間が……!?」
 本から人間がでてきた。
 白髪とひげの生えたおじいさんで山吹色の着物を着ている。
 「長老はこの本の宿り主。本にはたまに宿り主っていう神様がいることがあるんだ。図書室の本ではこの本と、図鑑の一部にいるかな」
 「宿り主とか神様とかどういうこと!?」
 全く分からない。
 「まあ理解できないのは無理ないけど。簡単に言うと長老は本に宿る神様ってことだけ分かれば問題ないよ」
 「なるほど……。で、何で私は連れてこられたの?」
 そこが一番の問題だ。
 図書室に来たら分かるってことはこの“長老”って人が関係しているのだろうけど。
 「長老が木村さんに会いたいっていっていたからね」
 「そうなのじゃ! 我はこの日記を見て感動したのじゃ! 書いたものの心が伝わってくる文章なのじゃ!」
 「え? かぎかかっていたのに読めたの……?」
 「当たり前じゃ! 我は神様じゃからな」
 穴があったら入りたい!!
 こんな文を見られるなんて……。
 「あまりに感動しすぎて、他の人に話そうと思ったんじゃ! それで我の声が聞こえるコンドウに話したんじゃ」
 「え? じゃあ近藤君、中身知ってるの……?」
 「いや、知らない。長老、感動しすぎて泣きながらしゃべったから何言ってるかわからなかった」
 よかった、本当によかった……!
 「それだけを伝えたかったのじゃ! また書いたら見せてほしいのじゃ!」
 それだけ言って長老は消えた。
 「ありがとね、僕のわがままに付き合ってくれて」
 「別に大丈夫」
 「はい、これも返すよ」
 「ありがとう」
 なんだか、今までのことが夢のようだ。
 「じゃあ、僕は職員室に用事があるから」
 そう言われて途中で分かれる。
 「じゃあ、あとで」
 軽く礼をして私は教室に向かった。
 * * *
 教室に帰った後、近藤君は朝の会が始まっても帰ってこなかった。
 不審に思い、クラスの友達に
 「近藤君、遅いね」
 というと、
 「近藤君って誰?」
 と返されてしまった。
 慌てて名簿を確認すると近藤という苗字はいなかった。
 近藤君は一体誰だったのだろう?
