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- えっ、今日から私も魔法使い!?【参照2000突破感謝!!】 ( No.213 )
- 日時: 2015/09/21 21:32
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
- 第八十四話 <何でもアリな体育祭編> 
 どうする……?ここにいる全員の特性を生かし、この状況を乗り切る方法は?
 ん?ちょっと待って。
 「エレーナちゃん、使用魔法は?」「え、水魔法だけど…」
 ———うん、出来るかもしれない!ただ、「全員の力を合わせれば」だけど。
 「みんな、ちょっと集まって。……こそこそ、…うん、…そう。」
 「うわあ、難しそう…!」「ふん、余裕ですわ!」「うん、頑張ってみるわ」
 と、みんなも納得してくれた。行けるっ!!
 「相談は終わりか?———さあ、来い」
 その言葉を合図に、私はできる限りの全力で、隊長に向かってボールを投げた。
 「———?」
 何の能力も持たない私が、今になって投げてくるのは不思議以外の何物でもない。————そんなことを考えているのか、渋面を作り、隊長は危なげもなくボールをキャッチした。はは、さすがにこれじゃダメだよね。
 そして、その瞬間。リュネが再び手を前に突き出し、光が視界を覆った。
 ☆
 「……ふん、同じ手が通用するとでも?」
 隊長は鼻を鳴らすと、ボールを構えた。今更フリトさんに相殺してもらう必要もない。このまま投げれば当たるだろう——左前方にはほら、リュネットの姿が見える。
 隊長は、何のためらいもなくボールを投げた。その後に起こることなど、何も知らずに。
 光が、観客のざわめきが大きくなるのと反比例し、徐々に薄くなっていく。
 ——そして隊長は、目の前に広がる光景に驚くことになる。
 「———ギルバート、お前、何故」
 「っ…!?」
 目の前には、呆然と目を見開く先輩。そしてその足元に、コロコロと転がるボール。
 「俺が……当てたというのですか?」……フリトは、コクリとうなずく。
 —————やられた。
 「水鏡、か……」
 リュネットが光魔法を発動したのと同時に、ルーク&エレーナのコンビが俺の周りに水鏡を浮かべたのだ。落ちこぼれのルーク一人ではできなくとも、使い手が二人なら話は別だ。
 そして鏡は反射し合い、フリト先輩がいるはずの場所にリュネットが映り込んだ————
 「はん、なるほどな。やられたねえ、参った参った」同時に理解したらしいフリト先輩が、なぜか愉快そうに笑った。「俺は一足先に降りさせてもらうぜ」
 「も、申し訳な…、—————っ!」
 そして謝ろうとした途端、隊長は気づく。
 ———転がったボールは、どこに行った?
 はっ、と慌てて前に向き直る隊長。目の前にいたのは、
 「目の前を失礼いたしますわッ!」
 「くっ、まずい…!」
 コート上を蹂躙しつくす紫電に、隊長は思わず腕で顔を覆う。
 ☆
 「うおっ、たいちょーのピンチっスか!?」
 事態に気付いたハクが、援護するべく小さな岩を出現させるが、時すでに遅し。すぐに生じたかまいたちに粉砕される。
 「邪魔はさせないよ、ハク君」
 「ぐぬぬ、エ、エリオットさん、こんな時にカッコつけるんスかぁ……!」
 ☆
 「チェックメイトですわ、隊長」「っ!お前、」
 ———ボールを持っていない!?じゃあどこに……
 「『力には力を大作戦』、大成功です。隊長」
 あ、足元!?
 慌てて目を落とすと、そこには軍隊よろしく伏せたフィリアの姿が。
 そして宙に浮いたボールは、優しく強く、隊長の腕を叩いた————
 ☆
 『試合が終了しました。結果は————白チーム、緑チームの引き分け!』
 わああああっ、と会場が沸く。観客席からは健闘をたたえる温かい拍手が。
 「いやあ、まさかうち等が勝つとはね……」
 「ほんっとだぜ。俺の出番も久しぶりだしさあ———まあ良かったじゃん、オメデト」
 「うんうん、フィルっちも成長したなあ、ママ嬉しいぞぉ〜!」
 「もう、何言ってるんだよ。でも確かに、フィリアの作戦はすごかったけどさ!」
 「……同意。見直した」
 「ふふ。皆さん実に見事なお手際でした。もっと近くで見たかったですが」
 へへへ!みんな和やかなムードで良かった。やっぱ体育祭っていいもんだなあ!
 ———私だって。あの力がなくたって、一人で何とかできるんだから。
 フィリアは晴れやかな気持ちで、空を見上げた。
 ☆
 「フィリア・ヴァレンタイン………」
 クラスメイト達に囲まれているフィリアを、きつい眼差しで見つめている男がいた。
 その男はやがて視線をそらすと、校舎の影に消えた———
 体育祭編、了
 次回、第八十五話。お楽しみに☆
