コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 今、好きな想い ( No.11 )
- 日時: 2017/01/08 00:04
- 名前: アリン (ID: OypUyKao)
- *.* キミトフタタビ *.* 
 「隆くん。私もいつかあのカモメたちのように自由に空が飛べる日が来るかな……?」
 彼女はそう言って、いつも病院の窓から見える海と青空を見ていた。
 彼女はもう何年も病院にいる。
 彼女の体はもうボロボロでいつ壊れてしまうか分からなかった。
 『来るよ、きっと。一緒に、病気治そうね』
 僕は病人に「頑張って」を言いたくなかった。頑張っているのに、頑張っていないんじゃないのに。そう言われては、じゃあ何を頑張ればいいのか分からなくなってしまうから僕は言いたくなかった。
 『ねえ。愛奈さん』
 「なあに? 隆くん」
 『……結婚しませんか? 僕たち』
 「……はい……」
 彼女はそう言って泣いた。
 彼女の手を取り、細い指先に指輪をはめた。
 それから結婚式は挙げずに、婚姻届だけ出しに行った。
 彼女はウェディングドレスも着て見たかったなと言った。
 『じゃあ、着て見る? ウェディングドレス』
 「うん……!」
 彼女はウェディングドレスを着て、僕もウェディングスーツに着替えて一緒に写真を撮った。
 純白のドレスに身を包んだ彼女は薄っすらと涙を浮かべていた。
 『愛奈さん?』
 「ご、ごめんね。嬉しくて、つい。私は絶対にウェディングドレス着れないって思ってたから」
 そう言って涙を拭いている時、少し彼女のそばを離れて、カメラマンに耳打ちしてあるシーンを撮ってもらうようにした。
 彼女に近づき、細い肩を持つ。
 『愛奈さん。せっかくだから誓いのキスしよう』
 「え、でも……」
 『ダメ?』
 「ん……お、お願いします」
 そう言いながら、頬を染める彼女が可愛かった。目を瞑る彼女を見ながら、彼女の唇にキスをした。
 キスをした時、パシャリというカメラのシャッター音が聞こえた。
 あれから半年後。
 彼女はこの世を去っていった。
 鳥のように僕の元を離れていった。
 僕は今でも彼女が好きだ。
 ずっとずっと好きなはずだった。
 だけど、彼女に出会って君と再び逢えた気がしたんだ。
 「綺麗な人ですね……」
 『……平岡さんとよく似た人だったよ』
