コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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彼女の命は、未だ散らない。
日時: 2016/07/09 19:05
名前: 深海 (ID: eLuLNElF)

初めまして、深海 (ふかみ)という者です。

まずは、このページを開いて下さり、ありがとうございます。

この小説は、一応、『青春恋愛小説』ですが、いくつか注意がございます。

・恋愛小説ですが、中々くっつきません。友達以上ぐらい。

・というかのんびりだらだらしてるかも。

・恋愛小説を書くのは初めて、いや、小説を書く事にまだまだ慣れていないので、不自然な所があるかもしれないです。

・物語の視点がころころ変わります。

・主人公が変わってる、いや変人、いや設定がファンタジーです。

・100%明るい物語ではありません。

・書きたい時に書く、がモットーなので、更新は亀です。

・荒らし、暴言は一切禁止させて頂きます。

これらの事が了承して頂ける方のみ、小説をお楽しみ下さい。


■目次■

◆Chapter1

□Prologue >>01

□Episode1 >>02 >>03

□Characters >>04


◆Chapter2

□Episode2 >>05

□Episode3 >>06

□Episode4 >>07

□Episode5 >>10

□Episode6 >>11

□Episode7 >>12

□Episode7.5 >>13


◆Chapter 3

coming soon……

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Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.9 )
日時: 2015/12/22 23:34
名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: f5yb.dIk)


>>夏目 織 様

ご感想、ありがとうございます。

初めてコメントを頂けたので、とても嬉しく思います。

まさか、読者様にご感想を頂けるとは思っていなかったので......やはり、励みになります。

マイペースな不定期更新ですが、これからも宜しくお願いします。

Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.10 )
日時: 2016/01/05 23:10
名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: hujSVxra)

□Episode 5 〜蜂須 瑞貴side〜


■持つべきものは



実行委員の今日の集まりは、只の顔合わせ程度だった。

実行委員は、1クラスあたり、原則4人。

俺と迫河。

後は、ジャンケンで負けたバスケ部の東堂トウドウと、推薦で票が多かった三代ミシロさん。

見知った顔ではあったけど、このメンバーで運営していくのだと思ったら、俄然やる気が出てきた。

......のだけど。

迫河だけは、俺に対して、いつにも増して態度が刺々しくなっていた。

顔合わせが終わった後も、俺がいないみたいに前を華麗にスルーしたし、次の日、話し掛けても俺には見向きもしなかった。

こんな事は初めてで、迫河は、話し掛ければ必要最低限とはいえ、きちんと対応してくれたものだ。

俺は、そんなに迫河に嫌われてしまったのだろうか。

「......で、どうすれば良いと思う、ナツ?」

昼休み、俺はわざわざ隣の教室で弁当を食べながら一部始終を話し、目の前の男に尋ねた。

そいつは、ちらりと俺を呆れた目で一瞥し、溜め息を吐いた。

俺が話している目の前の男は、幸村 夏彦(ユキムラ ナツヒコ)。通称ナツ。(ただしこの呼び名で呼んでいるのは俺だけだ)

185cmの身長を持ち、無口なもんだから、皆に恐れられているが、本質は気配りの出来る、親切な男だ。

因みに、幼稚園時代からの友人で、所謂幼馴染み、というヤツでもある。

「殴られなくて良かったな、瑞貴。オレが迫河の立場だったら、間違いなくお前を殴ってた」

「ちょっとっ!?酷くない!?」

すると、ナツは俺の瞳を見据えて、言い放つ。

「酷いのはお前だろ。

お前のクラスの迫河っての、聞いた限りだとあんまり目立ちたくないんだろ」

ナツには、今日以前にも、迫河の話をしていた。

勿論、迫河の不死身の事は秘密で、だけど。

そして尚も、ナツは言葉を続ける。

「そんな人間を、お前一人の思いだけで、本人が望んでない事をして良いと思うのか?

手助けやお節介でもない、それはお前のただのエゴだ」

ナツの言っている言葉は厳しくも正論で。

正論、なのだけれど。

「うん、ナツは正しいと思う......、というか絶対ナツが正しい。

けどさ......」

目の前の、長年一緒につるんで来たこの友人の良い所は、自分の意見を遮られても、反論されても、相手の話をしっかりと聞く事だ。

そして、今も。

「けどさ、俺、前聞いた事あるんだ。

実行委員決める前の、昼休みに『クラスの人達との交流は、簡単に出来ないから、こんなに苦労してるんじゃないか』って、迫河が言ってたのを」

実は、あの昼休み、迫河が出ていった後を追い、階段で偶然聞いてしまったのだ。

迫河が、美しい孤独の雰囲気を漂わせ、ポツリと呟く言葉が、反響して俺の耳に聞こえて。

「あまりにも寂しそうだったし、俺、何かキッカケを作ったつもりだったんだ。

けどさ、やっぱ、俺の勘違いだったのかな......」

後半になるにつれて、段々と声量が小さくなっていく俺の頭に、軽いチョップがカツンと当たる。

目を上げるとチョップをした犯人はナツで、いつもと変わらない調子で話す。

「じゃあ、今から確かめに行けば良いだろ。

ちょっとやそっとで折れちまう程、お前のメンタルは弱くねぇはずだ。

迫河にクラスの奴等と馴染んで欲しくねぇのかよ」

ナツはそれだけ言うと、漫画を取りだし、読み始める。

目線は漫画に落としたままだが、左手は『行ってこい』という様に、ヒラヒラと振っていた。

そうだ、俺には、迫河の不死身を治す方法も見つけなくてはならない。

約束したのだから(一方的だが)。

その一歩として、まずは迫河と仲良くなろうと決めたんじゃないか。

「ありがとう、ナツ。

俺、行って来る」

早く迫河に会って、謝らなくては。





Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.11 )
日時: 2016/02/06 23:11
名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: 3MzAN97i)

□Episode 6


■だけど、君は。



昼休みも終わりに近付いた屋上。

今の季節は6月で、春の名残をなびかせながらも、初夏を感じさせる中途半端な空気が纏わりつく。

この中途半端な空気さえも、人間であって人間でない私に親近感を与えるには充分すぎる。

そんな自分に軽く嫌悪感を抱き、手に持った、中身の入っていない栄養ゼリーのパックをぐしゃりと握りしめた。


第一、何故私が人との関わりで悩まなくてはならないのだ。

そう考えた時、脳裏に浮かんだのは蜂須君の顔。

アイツにあの時出会わなければ、こんなにも私が苦しむ事はなかったのに。

アイツの、せい、だ。

お人好しで、面倒見が良くて、お節介な、人気者の、アイツのせい。

そうだ、実行委員なんて、たかが1ヶ月だ。

1ヶ月間、多少注目される事はあっても、数日たてばどうせその注目も廃れる。

このままずっと距離を置けば、きっとアイツも離れていく。

そう思っていたのに。


「迫河!!」


君は、私の目の前に現れる。

肩で息をして、額に薄く汗までかいて。

「...どうして、」

この人は、他人の為に、ここまで必死になれるのだろう。

すると、呼吸を整えた蜂須君は、ガバッと私にお辞儀をする。

「迫河!!ごめん!!」

「...は」

いきなり現れて、いきなり謝って、本当に忙しい人だ。

「俺、ただ、迫河がクラスと関わりを持つキッカケを作りたかっただけなんだ。

上から目線とか、お節介とか思うかもしれないけど...。

でも、悪気はないんだ!」

それを言い切ると、頭を上げて、今度は私を見る。

「...別に私は怒りなんか持っていない。

たかが1ヶ月だろう、責任は果たすって言ったと思うけど」

ふい、と蜂須君の視線から逃れる様に私は目を逸らす。

屋上の床の灰色を見つめる。

「何で迫河は、そこまでクラスメイトと線引きしちゃうんだ。

そりゃあ、他人と関わる事は怖い。

でも、迫河の場合、露骨すぎると思うんだ」

...お前には。

「お前には、どうせ分からない」

心の中で呟いた言葉が、声に出てしまったようだ。

私の口から出た音は、コンクリートに反射して、蜂須君の耳に届く。

「生きていながら生きていないようなものだ、私は。

死にたくても死ねない、まるでこれでは化け物じゃないか。

こんな私が、普通の人間と普通に関わる事なんて、出来やしないだろう?」

私は、コンクリートを睨む。

私の視線でコンクリートを穿つ様に、ただただ床を睨みつける。

私達の間には、沈黙が流れる。

それはとても短いものなのに、酷く長く感じた。

それなのに、その沈黙さえ破って、蜂須君は言葉を発する。

「だけど、君は人間だ。

どんなに自分を化け物と思っていても、君は俺にとって、完璧な人間だよ」

その言葉に思わず、目の前の人を見る。

コンクリートの灰色とは正反対の、深紅色の瞳が視界に入る。

「迫河が今まで、何を背負ってきたかなんて俺には分からない。

だけど、俺は迫河を普通の人間だと思うし、不死身を治す方法を必ず見つける」

だからさ、と蜂須君は右手を私に差し出す。

「まずは俺から、迫河の友達にしてくれないかな」

私の前には、私を人間だと言ったクラスメイトの姿がある。

穏やかな笑顔で、こちらを見る。

私は、今まで他人を拒絶して来ていた。

だけど、君は、その壁さえも壊して私に友人になってくれと言う。

だったら、目の前の君を信じてみようじゃないか。

今思うとそれは、私の単なるきまぐれだったのかもしれない。

蜂須君の目を見据えて、覚悟を決める。

私はゆっくりと右手を差し出し、

「...宜しく、蜂須君」

蜂須君の右手に自分を重ねた。

丁度その時、5限目開始のチャイムが鳴り響く。

「あ、授業...」

「自習だったよ、確か。

遅れていっても大丈夫でしょ」

ついさっき、クラスメイトから友人に格上げされた蜂須君は、再び緩く笑って、屋上の扉に向かう。

私もその後を追い、5限目の始まった教室にするりと入っていった。



Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.12 )
日時: 2016/07/01 17:20
名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: eLuLNElF)

□Episode 7 〜蜂須 瑞貴side〜


■ 日常の進歩


あの日、俺は迫河にめでたく『友達認定』されたのだけれども、あまりそれ以前の日常と変わらない事の方が多かった。

屋上から飛び降りたり、カッターを常に持っていたりと、迫河の不死故の自殺癖(実際、この様な言葉は存在しないのだけれど)も相変わらずだし、昼食も栄養補給ゼリーでワンパターンな食事だし、俺への態度も劇的に変わったかと問われれば否だ。

まぁ、それでも挨拶は返してくれるし、食事に誘っても嫌な顔をされなくなったんだから、少しずつでも進歩しているのかな……、などと部活中にナツに話したら、『知るか』と一蹴されたけど。

はぁ、とそんな今日の出来事を思い出しつつ、帰路につく。

申し訳程度に配置されている街灯は、暗闇に灯された蝋燭の様に、決して暗くはないが明るくもない。

生者以外のモノが這い出て来そうなこの仄暗い夜道は、いくら男の俺でも不安になる。

恐らく、怪談めいた小話に恐怖するのは、性別とか関係無く、人間のサガだと思う……、多分。少なくとも俺は苦手だ。

迫河なら、俺とは違って、夜道だろうが霊園だろうが涼しい顔で堂々としているんだろうなぁ、と思うと、笑みが溢れて、恐怖が薄らいだ。

そんな事を考えてながら歩いていたら、いつの間にか家の前まで来ていて、霊的なモノへの恐怖は、頭からすっかり飛んでいた。

これは迫河さまさまだなぁ、などと思い、家のドアに手をかける。

『ただいまー』

『あ、瑞貴兄ちゃんお帰り!』

ひょこっと顔を出したのは、弟の柚樹ユズキだ。

今年で12歳となるこの弟は、未だ無垢な瞳を輝かせていて、こいつに反抗期なんて来るのかと思い始めてきている。

『今、静葵兄ちゃんが夕飯作ってるから、着替えてなよ!』

そうだね、と柚樹に相槌を打ちながら、俺は自分の部屋に向かう。

静葵シズキ、というのは俺の兄さんだ。

もう成人して働き始めており、この蜂須家の長男兼、大黒柱である。

自分の部屋に向かう途中、今はもう写真や記憶の中でしか会えない両親に、ただいま、と声をかける。

俺には、いや、俺達には、両親がいない。

6年前、俺が11歳の時、この町で起きたバス事故で2人とも帰らない人となっている。

今はもう割り切れている、と言えば嘘になるけど、前よりは大分マシになったなぁ、と思い返しながら、自分の部屋に入り、着替えを済ませる。

部屋を出ると、静葵兄さんが作ってくれた夕飯の香りが、俺の胃袋を刺激して、腹が情けない音を出す。この香辛料の強い匂いは、中華かな。

期待に胸を膨らませてダイニングを覗くと、そこには白い湯気が立ち込めた料理と、兄さんが立っていた。

『お、瑞貴やっと来たか』

柚樹はもう座っていて、俺のせいで待たせてしまったとなると、少し申し訳ない。

『久しぶりに兄さんの料理だね』

『おいおい、そんなに期待するな、瑞貴の料理スキルには敵わねーよ』

そう静葵兄さんは笑いながら、いただきます、と箸を取り、俺と柚樹もそれに続く。

いつもは、料理や洗濯は俺がやっているのだけど、今日みたいに部活が長引く日とかは、兄さんか柚樹に任せるしかなくなる。

両親が亡くなった直後、18歳だった兄さんは、大学進学を諦め、就職して仕事を始めた。元々、そんな兄さんの力に少しでもなれたらと思って始めた料理は、自分でも驚く程上達して、好きになっていった。

今では特技となっており、毎朝凝った弁当を作れる程となったなぁ、としみじみ浸っていると、目の前の兄さんが口を開く。

『そういえば、瑞貴、前言ってた迫河って子とはどうなったんだ?』

兄さんのいきなり過ぎる言葉に、口に含んでいた麻婆豆腐を吹き出しそうになったが、何とか喉に押し込む。

『兄ちゃんのクラスメイトだっけ?兄ちゃん、最近話題に出さないよね』

純粋な興味で光る瞳で俺を見上げてくる柚樹に、俺は少したじろく。穢れのない探究心こそ、怖いものはない。

そんな俺の様子を見かねてか、兄さんは助け船とも言える言葉を投げた。いや、元はと言えば兄さんの言葉から始まったのだけれど。

『まぁ、話したくないならいいさ。

ただ、唯一の『友達』のお前なら、何か、お前だけがその子にしてあげられる事があるんじゃないか?

それは、他人すら出来る同情とか、共感とか感情的なモノじゃない、認められた奴こそが出来る、小さくてもいい、確かなモノ』

その言葉を聞いて、俺は思わず食事の手を止め、兄さんを見る。

俺は迫河の不死の事は一言も話していないのに、兄さんは時々、こちらを見透かしたような事を言うから、その度に驚かされる。

案の定、兄さんはこちらを見ていない。

まるで、それは俺自身が自力で発見しない事には、意味が無い、という様に。


俺だけが、迫河に出来る事、か。

必ず、あるはずだ。

Re: 彼女の命は、未だ散らない。 ( No.13 )
日時: 2016/07/09 19:23
名前: 深海 ◆XAZUAOywuY (ID: eLuLNElF)

□Episode 7.5



■変色



まともな人間は、一晩眠る度に命を削り、朝を迎えた時には、毎日少しずつ死んでいく。

それは、平等に訪れるものだ、と人間はそれぞれ認識しているから、一度は不老不死などという下らない幻想に憧れるのだ。

だから私は、私自身の不死を毎朝、確認する。

ベッドの脇に転がっているカッターに手を伸ばし、左手に突き刺す。

普通の人間には存在する、死の象徴とも言える『傷み』、死の色彩である『鮮血の赤』。

それらを感じる事の出来ない私は、毎朝思うのだ。


今日も、死ねなかった、と。


カッターを突き刺した左手は、鮮やかな血を滴る事も許されずに、瞬時に治ってしまう。

いつもなら、何も思わず、何も感じず、何も考える事なんてなかったのに、今は言葉では言い表せない程の不安が、私の心を侵食する。

不死をやっと、受け入れられて来たと思ったのに、アイツに会って、生き続ける事が怖くなった。

そう、アイツのせいで、私の世界は変わってしまった。

今まで平気だったものが、恐ろしくみえるように。

だって、アイツが死んだ後、私だけが生き続ける事を考えただけで、自分を何回殺しても殺し足りない位に、心が痛い。



蜂須 瑞貴。

私が持つべきでないものが、一つ増えてしまった。

『友人』という、非常に厄介で、大切なものが。



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