コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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 風 景
日時: 2015/09/09 15:53
名前: メリベス (ID: 3NNM32wR)




雨だったり、晴れだったりするらしい。

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Re:  風 景 ( No.1 )
日時: 2015/10/09 18:45
名前: メリベス (ID: 3NNM32wR)



「中学生というのは———」

 先生は面倒な話をよくしている。保体だからしょうがないんだろう、面倒くさいけど、保体(というか保健)っていうのは下ネタと真面目が混じってる。

「『妊娠する』それは——」

 こういう話、美帆佳と由紀奈は大好きだ。なんかよくわからない単語が出てくる、今度の期末は要注意だな———みなみは教科書の文字にアンダーラインを引いた。

「ほいっ、みなみ」

 後ろの席の真矢から紙飛行機が渡される。飛行機なんなら飛ばせよ、と思うが勿論それは言わない、というか言えない。真矢は意外と怖い。
 それに多分、なんか嫌なことが書いてあるんだろうな、読みたくないけど読まなくちゃいけない、女子って面倒い、男子に生まれたかった。

『阪木が鼻くそほじってる、マジキモい(マキ)。確かにー、マキ的確!(サチ)キモすぎ、うわ寒気が!(ユイ)寒気っていうか悪寒?(マヤ)』

 はぁぁー、と小さくため息をつき、女の子らしい丸文字で書かれた罵詈雑言を見つめる。阪木さんが可哀想、本当はいい子なのに。
 阪木 路香はいじめられっ子の少女だ。性格はいいけど、顔が可愛くなくて(ブスって言われてる)、声が小さくて、滑舌が悪くてぽっちゃりしてる(デブって言われてる)。

『見つかったらヤバいからやめときなー(ミナミ)』

「え、真矢、これって回す?」
「ちょ、えー、んなこと書いたの?みなみ真面目だなー」

 なんて言いつつ結局前の子(汐里)に紙飛行機を渡す。ごめん汐里、読みたくないのはわかるけど、こうしなくっちゃ私がヤバい。

Re:  風 景 ( No.2 )
日時: 2015/10/09 19:03
名前: メリベス (ID: 3NNM32wR)



 キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン、と意外と長いチャイムが鳴った。三組が出ていく、阪木さんも出ていった。少し泣いてる。その原因の一部が自分だと思うと心が痛む。ああはなりたくないから、って。

「あーあ、麻紀出て行っちゃったー。保体だけじゃなくて全部合同授業ならいいのに……あーあ。でも阪木はいらないな、キモいしあいつ。思うでしょ?」
「ってか全部合同授業ならクラス分け意味ないから」

 あ、そっか———真矢は納得したように頷いてまたツラツラ阪木の悪口を並べ立てる。うんざりするし、最ッ低だけど、庇えない私も同類だ。
 それからすぐ、男子が入ってくると、黒板を見てニヤつく。キモ、という言葉がちらほら聞こえる。確かに。何が面白いんだろ、男子って意味不明。

「早く消しちゃえ唯!」
「いえっさー、消すからどけ、変態野郎」

 唯と男子(岡と西田と誰か)の格闘が始まる。勝つのは唯。プロレス技決めまくってる、もはや男子が可哀想なレベルだ。勿論言わないけど。

「っとに……うんざりだわー、男子って馬鹿」
「それは変態以外の男子に失礼だって」

 特に河合くんと野々川くんとか。可愛いうえに変態じゃないし、男子の割に真面目だし。絶対にそういう話はしない。男子だけでもしない。

「滝さん」

 横からものすごい可愛い声が聞こえた。あー、噂をすれば野々川くんだ。可愛いコと隣って得だ、美帆佳に自慢してやろう、あと芽久にも。

「ここ、宿題教えて、頼む!」
「んー、数学ですか?えーと……」

 本当ならこういうのは嫌だ。男子は嫌い。大ッ嫌い、っていうか怖い、苦手。自然に敬語になっちゃう、野々川君ならまだマシ、でもやっぱ敬語。
 ——後ろからの『ヒューヒュー』は無視しよう。ほんと、男子って馬鹿。
勿論一部だから野々川君とか河合くんは除くけど、馬鹿だ、本当に。

Re:  風 景 ( No.3 )
日時: 2015/10/10 20:42
名前: メリベス (ID: 3NNM32wR)



「有難う、滝さん」
「いや、別に……これくらいならいつでも」

 そう言って美帆佳たちのところに行く。美帆佳は『いいなー、野々川くん』、そう言って野々川くんを見つめている。『あたしは河合くん派』芽久はそう呟いてどこか宙を見ている。由紀奈は『ダブル!』っていっている。

「次数学だからあたし行かなきゃ」

 数学の時間は出席番号で前半と後半に分かれている。美帆佳の苗字は梶、芽久は笹原、由紀奈は瀬野なのでちょうど境目だ。私は滝で、境目だから惜しいな、と思う。

「くそう、野々川くんと分かれちゃう……でも河合くんがいる!ああでもあたしは野々川くん派なんだよな……胸がぎゅんぎゅんする!超かわいい!」

 芽久の少しおかしいテンションにはついていけないが何だかんだで芽久はいい子だ、多分。美帆佳も由紀奈も男子の前では変態らしいが一応いい子だ、多分。
 多分、がついちゃうのは残念だけど百%なんてないから仕方ない。

「みーなみ、野々川くんとはどーぉ?」
「相変わらずだけど?特に何も無いし」

 真矢は七瀬なので残念ながら(といっては失礼だけど)後半である。席も後ろ。汐里は波路なので後半、真矢とは違いラッキーだなと思う。

「ヤバいー、宿題やってないわ面倒い神崎風邪ひいて授業休めー」

 前から汐里の手が伸びてくる。『ワークを寄越せ』のサイン、待て待て、四月からこれ何回目だ。まだ五月なのに十回は越してるな……数学だけで。

「だーめ、一回くらい痛い目にあえ!」

 アッカンベーして逃げた。ちょうど神崎があと教室まで五十メートルの地点にいる。汐里(等宿題をやっていない人たち)の落ち込み顔が面白かった。

Re:  風 景 ( No.4 )
日時: 2015/10/30 18:23
名前: メリベス (ID: 3NNM32wR)


「ん、滝は今日もまじめにやってるな……七瀬もOK、この列波路だけだぞ、やってないの!これからはちゃんとしろよ!——滝のを写すっていうのはなしだからな、神崎先生は何でも見通しだかんな」

 神崎が怒っているが童顔でさらにチビなため迫力はない。むしろ可愛い。女子に人気があるのがすごくわかる気がする。恵理ちゃんとか(卓球部の華)、環奈(通称卓球の神)がいっつも神崎に見惚れてる。神崎は卓球部の顧問だ。
 ——そのせいなのだろうか。

「滝!」

 卓球部である私はよく当てられる。あと日崎くんとか。『卓球部員に見えない卓球部員』って評判だ。イケメンって意味らしい。なんか酷い。
 っていうか女子のほうは美人とか可愛い子が多い。恵理ちゃんとか、未唯ちゃんとか、はるとか。先輩とかヤバい、いい意味で。

「っていうか日崎、寝るな!———部活停止すんぞテメェ」

 神崎、文字面で見ると怖いが睨んでても可愛い。ってかその身長じゃ二十四歳に見えないぞ、自称百八十五センチらしいが絶対嘘だ。

「はーい、はーい。善処しまーす、ぐがっ!」
「言った直後に寝るて、お前……」

 がくっと落ち込む神崎の肩をポンポンして慰めたい気分だ。飼い主に叱られて落ち込んでる子犬みたい、これはわりと適切な表現だと思う。

「っつーか次英語だ嫌だー」

 後ろでは真矢が机に伏せる。神崎はナメられている、絶対。

Re:  風 景 ( No.5 )
日時: 2015/10/30 18:42
名前: メリベス (ID: 3NNM32wR)



 「Are you Yumi?」

 本来の私ならばここで、『のーあいむのっと!』と自信満々ドヤ顔で言う。
が、今の私はユミだ、ショートカット美少女・山本由美である。
 『いえすあいあむ!』と答えるべきであろう———正しくは『Yes, I am』なのだが———なんか面倒い、発音する気になれない、という理由で前者のひらがな発音で音読する(どうせバレないのでほとんどの生徒がそうである)。

 「No〜No〜No〜チッチッチッ、『Yes, I am』!OK?」
 
 英語担当であり、一年三組の担任でもある小林 梨帆子は英語を使ってこのように言うのが大好きだ。それは、今が英語の時間だからという理由ではない。もっと単純でしょうもない理由———かっこつけたいから(多分)だ。

 「いえすあいあむー」

 まあ勿論担任教師に注意されたからと言って反抗期思春期真っ只中の中一生徒が直すわけがない。むしろもっと悪化している。思春期だ、特に真矢。
 野々川君なんかは頑張っててなんか微笑ましい。片や日崎はこっくりこっくり……寝そう、というか寝ている。野々川君を少しは見習えよ!

 「ねえみなみぃー」

 後ろから不自然なキャンディボイス(又の名をぶりっ子声)、言うまでもなく真矢である。もうちとマシな声でんか、おい……という心の声は勿論言わず、『ん、なにー?』と返事をする。結果は予想通り手紙だったが。

 『小林ウザい、マジ無理ぃ(アイ)バカヤローby岡!←ちょ、キモ!(ユリ)
まあ確かに、あれは無理かもぉ(カナコ*)でしょー!あたしも(笑)マヤ』

 ここは無難な返事を……、と考えた結果、『確かに英語ばっか使うのわね、無理かも(ミナミ)』……そう書いて汐里に回す。ごめん、汐里。


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