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- Re: KEEP THE FAITH ( No.226 )
- 日時: 2016/05/23 00:18
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
 ——もう、いい、かい?
 「まあーだっ! だよーッ!」
 枯茶色の髪の毛を揺らしながら、少女は頭に直接響く声に答えた。きょろきょろと辺りを見渡し、巨大な樹の陰に隠れる。
 「もーういーいよーっ!」
 すると、地を這うような音をたてて少女の元へ向かってくる——上半身のみ人型の化け物。
 ——みぃ、つけた
 「いやいや空気読もうよ!? 見つけるの早いよ!」
 ——だって、早く会いたいから
 怪訝そうな表情を浮かべる化け物に、少女は一瞬ぽかんと口を開けて、次ににっこりと笑みを浮かべた。
 「あーあ、ネクちゃんは天然たらしなんだぁー」
 少女曰く、下半身が蛇っぽいからスネイクのネクだそうで。
 ネクは真っ赤な瞳で少女を見上げ、無言で話を聞く。
 「あと少し時間あるけど……。ネクちゃん、何かやりたいことある?」
 友達と約束したという時間を確認して、少女はネクに微笑んだ。
 ——レンが、やりたいこと
 脳に直接語りかけ、表情を緩ませる。首を傾けることで彼の長い髪が揺れた。
 「うー! いっつもそれだよ! 別に良いんだけどね!?」
 かわいいから! と続けて訴えてからレンは、ネクの目線と同じ高さになるようその場にしゃがみ込んだ。
 「ねえ、まだみんなと会いたくない……?」
 ネクは一瞬ぎょっとしたような表情を浮かべ、ぶんぶんと首を横に振った。レンはそのしぐさに苦笑し、そっかぁと呟く。
 「みんないい子だよ。きっと仲良くなれるよ」
 ——レンだけで、大丈夫。仲良くならなくて、良い
 心なしか不機嫌そうな表情でネクが返すと、レンは声に出して笑った。
 「あっははっ! そっかぁ! わたし、ネクちゃん大好き!」
 次の日、少女は村から姿を消した。
 *
 ——“ネク”という名前は、あたしとあの子の絆の証明。誰にだって教えはしない。呼ばせはしない。
 「さあ、終末の——」
 ——?
