コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。
- 日時: 2016/11/24 18:12
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
「ボク、おとなになれるのかな__?」
「なれるよ、ふたりでおとなになろ?___」
「うん____!」
甘酸っぱい、幼い頃の記憶。
確かこの日はホタルがたくさん飛んでいて、二人で眺めていたよね。
小指を交えて約束したよね。
ほっぺにぎこちなくキスしあったよね。
だけど今は___会うことさえもできない。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.1 )
- 日時: 2016/11/24 19:42
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
九月十二日。
僕はこの日が嫌いだ。
大切な人の命が奪われたこの日が。
何故、彼女の生命は奪われなければいけなかったのか。
今でも頭の片隅で疑問を投げかけ続けている。
彼女を失ってから、二年という月日が流れた。
今日、彼女と僕の思い出の地へと出かける。
あの日から口数がすっかりと減った僕の事を心配し、出掛けようと言ってくれたのだ。
両親とともに車に乗り込み、父親が車を発進させた。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.2 )
- 日時: 2016/11/24 20:02
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
右手に緑が豊かな田畑、左手に葉が生い茂る森。
幼い時は特には感じなかったが、典型的な田舎町だった。
車から出た僕は田舎道を吸い込まれるように一人歩いていき、長い階段を登りきり、寺の鳥居を躊躇することなく、くぐった。
人っ子一人いない寺は淋しさと不気味さに包まれていた。
葉を鳴らす風に耳を澄ませ、目を閉じると、ここで彼女といた時の様子を鮮明に思い出した。
あの時、彼女と僕は寺の階段に座り、笑いながら話をしていた。
『わたしね、おとなになったら、どうぶつえんの人になりたいんだ。「僕」は?』
彼女は動物園の飼育員になった自分を想像したのか、微笑みながら言った。
『ボクはね、おとなになりたいな』
五歳の僕がそう言うと、彼女は控えめに笑いながら、
『へんなの』
そう言った。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.3 )
- 日時: 2016/11/24 20:35
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
母親の自分を呼ぶ声で、僕は長い夢から覚めた。
両親が肩で息をしながら、やっと鳥居をくぐっていた。
「「僕」、登るの早いのね…ハァハァ。やっぱり若いっていいわね、お父さん!」
母親は僕の顔が曇っているのに気付いたのか、明るく言った。
「余計なお世話だし……」
両親に背を向け、僕はひとり呟いた。
そんなことは知らない両親は、僕の背に気まずそうに話し掛けた。
「「彼女」との思い出が詰まった場所なのよね、気持ちを楽にして帰りましょう?」
僕は母親の言い方が気に入らなくて、浅く頷いただけだった。
ちょっとした反抗心で、両親を置いて僕は寺の周りを一周することにした。
蜘蛛の巣が張った寺の壁を見ている後、寺の真後ろに何か錆びた箱が一部だけ見えた状態で埋まっていた。
僕はすぐに彼女の物だと分かった。
それは、彼女の大好物の飴の入った箱だったからだ。
僕は近付き、一心不乱に周りの土を素手で掘った。
出てきた箱はやはり彼女の物だった。
変形しており、開けるのには時間が掛かった。
中には、袋に入った手紙らしき物と、銀色の細い鍵が入っていた。
- Re: 愁い顔のキミは、空を仰ぐ。 ( No.4 )
- 日時: 2016/11/24 20:51
- 名前: REI (ID: 4NzAaWKB)
「どこに行ったのかと思っちゃったわよ、「僕」。」
息を切らした母親が、僕の持っている箱へと目を向けた。
僕は体の後ろに箱を隠し、
「別に母さんには関係ないから」
とあからさまに母親を睨んだ。
母親は「あら、そう…?」と気まずく作り笑いを浮かべながら、寺の表へと去っていった。
何で皆、分かってくれないんだろう。
彼女は言わなくても分かってくれたのに。
僕は彼女がいなくなってから、心の空虚感と喪失感に苛まれている。
同時に心を支配するドス黒い悪魔が僕の体を蝕んでいく。
体重も一時期、二十キロ近く落ち、今は安定してはいるものの、食事が喉に通らない日々が続いている。
そして「飴」を見ただけで、その日一日は学校を休まなければいけないほどの自殺願望が生まれる。
自殺をすると彼女に会えるという想いがより、強くなるからだ。
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