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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.126 )
日時: 2014/12/19 22:00
名前: 雪兎 (ID: gDKdLmL6)

第三十四話 <対抗戦編>

「これは、ちょっとさすがにヤバい、かも?」

ジークは、引きつった笑みを浮かべながら呟く。

「ちょっとどころじゃねえ。全員死ぬぞ!?」

ライムが両手を広げながら叫ぶが、そう言われてもどうしようもできない。

なんせこのバケモノを倒すことは、それどころか触れることすらできないのだ。

そういえば、とジークはふと思い出した。

屋上で戦っていたリリアンたちのことである。何気なく見やると、転校生二人が座り込んでいることからもう勝負はついたのだと分かった。

それから、遠目からでもハクと茶髪の男がめちゃくちゃ取り乱しているのも見えた。おい男共、しっかりしやがれ。

……あれ?あの茶髪、確かあん時フィルと一緒に居た…。

いきなりジークの目が鋭くなり、暗い笑みが浮かんだ。

それを見てギョッとしたライムが、何を勘違いしたのか勢い込んで聞いてくる。

「おいお前、その悪人面。なにかこの場を切り抜ける方法でも思いついたのか?」

ジークは据わった目をして答えた。

「…ちげーよ。ただ、ちょっといろいろ聞きたいことがあるから、ここで死ぬわけにはいかないってことさ」

ライムは呆れ顔になり、「なんだよそれ」と呟いた。それから喋ることはもなく固まってしまったが……まあ、元気を出せよ。

なんだか俺には、フィルがそこまで近づいているような気がするんだ。



瀞竜が手を挙げた。大剣が唸りをあげ、影がいっそう濃くなる。

終わりが来るのだと分かったはずなのに、どうしてか誰も動かなかった。変化があったとすれば、ハクの瞳が恐怖に見開かれたことくらいだろうか。

屋上に居る者だけでなく、校舎内に居る者たちも大剣の存在に気づいていた。だがやはり、行動を起こすものはいなかった。

瀞龍が手を振りかざし、大剣が落下したその瞬間。

「ッッ!!」

瀞竜の瞳が大きく見開かれ、なぜか落下が止まった。

            ☆


『待って!』

少女の声が暗闇に響いた。瀞竜はため息を一つつき、問いかけた。

「止めるのか、娘」

『どうしてこんなことするの?もう止めてよ』

少女の懇願をきいて、瀞竜は目を細める。どうしてだ?

「なぜ?私とお前なら助かるぞ。あの程度の重みでは死なん」

『違うよっ!私が助けたいのは学校のみんな。自分のことなんか、考えてない』

瀞竜はいよいよ驚いて目を丸くした。今この娘はなんと言った?「自分のことは考えてない」だと?あの状況で。

『私はあなたが誰だか、知らないけど。みんなを傷つけようとするなら、私はあなたと戦う。絶対に許さない』

………。

「ぷっ!」

『ちょ、どうして笑うの!?』

少女は慌てている。もうこらえきれない。瀞竜はひとしきり笑った後、涙を浮かべながら言った。「分かった、分かったぞ」

『…何がよ』

少女は自分が笑われたことに納得いかないのか、むくれている。

「…やっぱり、お前は面白い。ここは一旦お前に預けよう。ただし___、約束を忘れるでないぞ、娘」

              ☆

「約束を忘れるでないぞ、娘」

その言葉とともに、意識が遠のいていく。

え、ちょっと待って。約束って何?そもそもあなたは誰なの?

聞きたいことはたくさんあるのに、その思いに反してまぶたがどんどん下がってくる。

『待っ…、て…』

………。

そこで、意識が途切れた。