ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

　【#001　目を奪われる光。】麻日Side


今日も私——神宮寺　麻日（じんぐうじ　あさひ）は教室に残っている。
別に定期テストの居残りとか、部活とか、そういう訳ではなく。
この1年Ｂ組の教室から丁度見える、サッカー部の様子を見るためである。

グラウンドには、ジャージを羽織った人、部活事のユニホームを着た人、ボールを拾っている人などが其処ら中に散らばっている。
この教室は最上階の4階なのだが、私は10秒も経たない内に、サッカー部の群れから彼を見付けた。

まだ1年なのに、もうユニホームを着てボールを必死に追いかける彼の名は、有栖川　時雨（ありすがわ　しぐれ）という。
その整いすぎた容姿の為か、クラスメートだけでなく他クラスの女子からも、騒がれているのだ。


そんな彼に——私は、恋をしている。


でもこの気持ちは、誰にも言っていない。
まるで目を奪われるような光を放つ彼に、この平凡な私が告白したところで、何も進展なんかしない。
それよか、「抜け駆け！」なんて女子どもに敵視されるのがオチだ。そう分かっているんだ。


だから————



「ただ、彼を見ているだけで充分」



まるで自分に言い聞かせるかのように、呟く。
誰にも気付かれないまま、私は彼を好きでいると、夕暮れ時の教室で、そう心に誓った。