コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.13 )
- 日時: 2015/03/28 20:56
- 名前: 逢逶 (ID: mJV9X4jr)
episode12
title 嫉妬と悲鳴
CM撮影が始まった。
泣いていたことがバレないように、目を冷やした。
多分大丈夫。
やっぱりKISSTILLは凄い。
簡単に何でもこなして、器用って言葉が合ってる。
「はいOK!良かったよ!」
撮影は予定より大分早く終わった。
また、KISSTILLのチカラを感じた。
「…小枝さん。ちょっと」
糸村さんに手招きされ、近寄る。
「どうしました?」
「今日北海道でロケあるじゃん?」
「はい」
「番組のディレクターから電話きてさぁ…急遽二時間特番に変更になったから今日だけじゃロケ終わらないらしいんだよね」
ってことは今日の約束は無し?
私が頷くと、糸村さんは困ったような悲しいような顔をした。
「…だから北海道のホテルに泊まることになったから、今日は無しね?」
「はい…残念です。また今度一緒に行きましょ」
「うん」
テレビ局から、いつも私が乗っているのより少し大きめのワゴン車に乗って空港まで移動する。
車内にはマネージャーとKISSTILL。
運転は戸部川さん。
KISSTILLは乗り込んだ途端寝た。
そうだよね…
睡眠時間なんてあってないようなもの。
「…小枝さんって酒飲めるの?」
ぼーっとしていたからか柏原さんの言葉にビクッと体が跳ねた。
柏原さんは口に手をやりながら笑っていて、つられて私も笑う。
「そんなにびっくりしなくても笑」
「すいません。ぼーっとしてて笑」
「はは笑 …あ、それで小枝さんは酒飲める?」
「いえ、飲めますけど…飲みません。何されるかわからないので」
…心に決めてること。
酒は飲まない。
男数人と酒を飲んでいたらベロベロに酔っ払って、気付いたら男の家のベッドで裸で寝ていた。
記憶は無いものの、そんな格好じゃ何をされたかは想像出来た。
だから…男にそういうことをされたのは景都だけじゃないってこと。
「そうなんだ」
柏原さんは明らかに動揺している。
あれ…?言わない方が良かった?
「その言い方だと何かされた、って感じだね」
里崎さんに尋ねられ、首を大きく横に振った。
「されてません!」
気付かれたんだろうな…
その上で否定しても、もはや意味はないけど。
されました、なんて言えない。
「…ふーん、そっか」
「今のは…あれですよ…言葉のあやっていうか…あのー」
ブーブーブーッ
携帯がポケットの中で震えた。
確認すると…〝光〟の文字。
出ようか…どうしよう…
空港まであと少し…出なかったら次会った時怒って何をするかわからない。
「ちょっとすいません」
軽く謝り、携帯を耳に当てる。
「もしもし?」
《もしもし?蓮?だよね笑》
「うん、そうだね笑」
《…いつ会える?》
「うーん、明後日は空いてる」
《わかった。会お》
「うん」
《じゃ、家まで迎えに行くから。その後どっか飯でも食いに行こ?》
「うん、了解」
《またな》
「またね」
電話を切る。
はぁ…
約束しちゃったよ…
「彼氏?」
彼氏…ではないけど、彼氏がいるって設定は守らないと。
「はい」
興味津々の柏原さん。
キラキラの視線が痛い。
「仕事中に彼氏からの電話出るってどうなんすかー」
その声に振り向くと、不機嫌そうな顔の山田さん。
「すいません、でも出たかったんで」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「…すいませんでした」
「あー、ごめん。…ちょっと妬いただけ」
え?!そういうこと言っちゃう?!
この発言には、マネージャーさん達も目がまん丸。
「…蓮ちゃんをドキドキさせる作戦成功したー?」
「ある意味ドキドキしましたけど…」
「…ある意味?」
「ある意味」
「じゃあ、失敗じゃん…。蓮ちゃん、早く俺のこと好きになってよー」
「無理です」
「本当、冷たいんだからさー」
もう…、気持ちがバレても良いの?
少し経って、車は空港に到着した。
荷物を抱え、飛行機に乗り込む。
もちろんKISSTILLはファーストクラス。
飛行機内では主に手帳と睨み合いながらスケジュール調整をした。
一時間四十分ほどで到着した。
用意されたロケバスに乗り、札幌へと移動する。
眠たくなって、寝てしまった。
あれ…これは…?
白い部屋。
遠くから歩いてくる人。
誰かに手を強く握られ…
押し倒され…
目の前にあった顔…
景都?
「きゃーっ!」
気付けば悲鳴をあげていた。